現行ラインナップとして今はなくても、あの頃の憧れや、もう一度乗ってみたいという思いを叶えてくれる絶版車。数ある絶版車オフロードマシンの中から、ヤマハの4スト本格トレール「TT250Rレイド」を紹介する。
●文:ゴー・ライド編集部(青木タカオ) ●写真:栗田晃 ●外部リンク:レッドバロン
ビッグタンクを標準装備し、タフなロングライドを実現
用途によってさまざまなモデルが登場したオフロードマシンだが、大型ヘッドライトやビッグタンクを標準装備したラリーレイドイメージの機種も誕生し、強烈なインパクトを今も残している。パリダカールラリーで総合優勝したXL500R改をモデルに開発した’82年のホンダXL250Rパリダカールをはじめ、’86 XLR250バハ/’95 XRバハ/’96 スズキ ジェベル250XCもそうだろう。長距離走行を実現する大容量燃料タンクや光量に優れた大径ライト、泥はね防止に効果的なオーバーフェンダーや荷物を満載にできる大型キャリアを備え、ダートも走破するタフなツーリングライダーたちに支持されてきた。
今回紹介するヤマハTT250Rレイドもまた、その代表格のひとつと言える。’93年の東京モーターショーにて「TT250Rラリーレイドスペシャル」として出展され、容量16Lのフューエルタンクに加え、サイドカバー内にもさらに左右それぞれ10Lずつの予備タンクを持つというラリーマシンさながらの仕様であったため、ファンは歓喜した。ただし、法規上の問題などがあったと見られ、翌’94年3月発売の市販モデルではサイドカバー内の予備タンク採用は見送りに。それでも16Lのビッグタンクが400kmにも達する航続距離を実現し、旅するライダーに高く評価された。
オフロード走破性も眼を見張るものがあるのは、前年デビューのTT250R(4GY)をベースにしているからだ。ヤマハは’93年、’80年代から輸出仕様にあったTT350(1RG)/250(1LN)のネーミングを冠したTT250Rを発売。ヤマハの国内4スト本格トレールとしては’85年発売のXT250T(48Y)以来で、空冷ながら新開発のDOHC4バルブエンジンを搭載。セルスターターを標準装備している点も高く評価された。
2スト有利と言われるなか、「闘う4スト」というキャッチフレーズで、カワサキはKLX250SRを同年に発売。エンデューロブームまっ盛りの中、4ストの高性能マシンが再び市場から求められていた時代でもあったが、2スト勢に勝つために生まれたKLX250RSは、KX譲りのぺリメターフレームに水冷DOHC4バルブを積み、その軽さは当時の4ストとしては驚異的な109kg。同年新型のTT250R(121kg)と比較しても圧倒的な軽さで、’89年発売のKDX200SRの107kgに匹敵。ただしキックオンリーで、レース中は始動に手こずるライダーも少なくなかった。一方のTT250Rは、径43mm正立フロントフォークなど装備面はトラディショナルながら、セル始動の利便性の高さが普段乗りやエンデューロで際立った。
翌’94年、派生モデルとしてTT250Rレイドが発売。280mmある前後サスペンションのストローク量を260mmにし、シート高は895→875mmに落とされた。大径170mmのヘッドライトには60/55Wのハロゲン球が組み込まれ、夜道を明るく照らした。アルミパイプ製ガードも装着され、旅好きがタフな相棒として愛し続けている。
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