ブレーキフルード劣化の原因は? 劣化の確認方法と簡単な交換方法も解説!!【DIY整備のギモン】
ブレーキフルード・・・密閉されているのになぜ劣化する?
ブレーキフルードはマスターシリンダーと、キャリパーと、そしてブレーキホースの中に入っています。基本的にブレーキシステム内で密閉されているのですが、なぜか劣化するのです。
「密閉されているのに劣化?」「ただ圧力を伝えているだけなのに?」とギモンに思いますよね。実のところ、ブレーキフルードが劣化するメカニズムは、使用環境とブレーキフルード自体の特性に、原因があったりします。
ブレーキフルードを劣化させる要因
まず、ブレーキはとても高温になります。運動エネルギーをブレーキパッドの摩擦によって、熱に変換するので、ピストンを押しているブレーキフルードも必然的に高熱にさらされるのです。
レースシーンだが一番わかりやすいですが、長い下り坂などを走り終わった後に、ブレーキ周辺を確認してみてください。触らなくともわかるほど、熱くなっていることが分かったりします。ブレーキフルードは、ブレーキ作動時の熱によって劣化します。でもそれだけじゃないのです。
ブレーキシステム内部に水分は無関係かと思いきや、さにあらず。リザーバータンクの内部にわずかながら空気が入っているのですが、気温差で発生した結露などによって、ほんの微量ながら水分が混入してしまうのです。
ブレーキフルードに入った水分がそのままの状態だったら、ブレーキが高温になると、沸騰してしまいますよね。そうなったら泡立ってしまい、ブレーキの圧力が抜けて、ブレーキが「スカスカ」になってしまうのですが、そんな事態を防ぐのがブレーキフルードの「吸湿性」です。水分を取り込むことによって、ブレーキの高温下でも、沸騰せずに安定した制動力を発揮することができるというわけです。
ブレーキフルードが劣化するとどうなるか?
とはいえ、無限に水分を吸収できるわけではありません。当然、水分量が増えるほどに沸点は下がっていってしまいます。ブレーキフルードに吸収された水分が、許容範囲内であれば走行に支障ないのですが、吸収した水分量が増えてくると、さすがのブレーキフルードも、その性能を維持することができなくなります。
水分が増えることでブレーキフルードの沸点が下がり、高温時に気泡が発生しやすくなる「ベーパーロック現象」を引き起こすリスクが高まるのです。これにより、ブレーキの効きが急激に悪化する可能性すらあります。そうして、ブレーキが効きにくくなり、最悪の場合、まったく効かなくなることも。
また、ブレーキフルード内の水分が増えることで、キャリパーやマスターシリンダー内の金属部分が錆びやすくなり、腐食を発生させてしまったり、部品の寿命が縮まってしまうのです。
フルード交換のタイミングは?
では、どのタイミングでブレーキフルードを交換すれば、良いのでしょうか? 一般的には、2年に一度の交換が推奨されています。しかし、頻繁に乗るライダーや過酷な環境での使用が多い場合は、1年に一度の交換を検討しましょう。詳しい交換サイクルについては、自身の愛車の取扱説明書を参考にしてください。また、ブレーキフルードの色も交換の目安になります。
新品のブレーキフルードは透明で透き通っています。この状態なら最高のパフォーマンス発揮してくれますが・・・これが黄色っぽく濁ってきたら、ブレーキフルード劣化のサインです。早めに交換しましょう。
もし赤っぽい色になっていたり、ドロドロし始めていたら、もうそれは使用限界をオーバーしています。すぐに交換しましょう。そのまま走るなんて、もっての外です!
簡単な交換方法! タンクの中身を入れ替えるだけでも効果あり
「ブレーキフルードの交換って難しそう…」と思っているあなた! ブレーキフルードが黄色っぽく濁り始めている段階だったら、簡単にできる方法として、タンク内のフルードを入れ替えるだけでも、一定の効果があります。
シリンジなどで古いフルードを吸い取り、その上から新しいフルードを注ぐだけで、少なくとも一部の劣化したフルードを排除することができます。
完全ではありませんが、一回だけでなく、しばらく動作させてからまた交換することで、効率は悪くてもブレーキフルードを入れ替えることは可能です。フルードを吸い取るときは、エアの混入防止のために、完全には抜き取らないようにしましょう。また、交換中のレバー操作は厳禁です。
理想は全とっかえ! プロに任せるのが安心
もちろん、理想は全量交換です。ブレーキライン全体のフルードを交換することで、劣化したフルードを完全にリフレッシュできます。これには専用の工具や技術が必要なため、ディーラーや信頼できるバイクショップに依頼するのがベストです。同時にブレーキパッドの残量チェックや、必要に応じて交換、もしくはオーバーホールを任せてしまいましょう。安心はお金に換えられませんからね。
ブレーキの「おかしいな」は、そのままにしない!
ブレーキは言わずもがな、重要保安部品です。少しでも「おかしいな」と感じたら、すぐに点検・交換を行いましょう。安全に楽しいライディングを続けるために、日頃からのメンテナンスを怠らないようにしたいですね。
この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました~!
私のYouTubeチャンネルのほうでは、「バイクを元気にしたい!」というコンセプトのもと、3日に1本ペースでバイクいじりの動画を投稿しております。よかったら遊びにきてくださいね~!★メインチャンネルはコチラ→「DIY道楽」 ☆サブチャンネルもよろしく→「のまてつ父ちゃんの日常」
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。
最新の関連記事(DIY道楽テツ)
アクセルワイヤーが長すぎた!というトラブル ハンドルを交換して長さが合わなくなってしまったり、はたまたケーブルそのものが痛んでしまったり。こうしたアクセルワイヤー(スロットルケーブル)を交換する際、「[…]
セルが弱くなったらバッテリー交換のサイン スクーターのバッテリーが弱ってきたのか、始動性がイマイチになってきました。 そういえば、このバッテリーもずいぶんずいぶん古くなってきたので、バッテリーを買い替[…]
新品タイヤが滑るその理由 新しいタイヤは滑ります。 滑りたくないから新しいタイヤに交換したというのに、なぜか新しいタイヤはマジで滑るんです(経験者は語る)。 なぜ滑るかというと、それはタイヤの製造過程[…]
場所によっては恒例行事なバイクの冬眠(長期保管) 「バイクの冬眠」…雪が多い地域の皆様にとっては、冬から春にかけて毎年恒例の行事かもしれませんね。また、雪国じゃなかったとしても、諸事情により長期間バイ[…]
燃料コックにも涙? それはある日の出来事。バイクで走り出そうとガソリンタンクの燃料コックをオンにした時、指先に冷たいものを感じました。 何があるのかと覗き込んでみると・・・燃料コックが泣いているぅ~![…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
友情から始まった無謀なレストア この無謀なレストアは、Seanの親友Sergeyがタブーを知らずにこのバイクを格安で購入したことから始まります。Seanは友情とメカニック魂から、この「鉄くず」同然のバ[…]
フレーム/スタンドの別体構造と自在キャスター装備で自由に移動できる 向山鉄工のオリジナル製品である「ガレージREVO」は、バイクスタンドに自在キャスターを取り付けることで、スタンドアップしたバイクを前[…]
やっぱり「素手」が好き! いきなりですが、筆者はかなりの作業を素手で行っています。ていうか、素手が大好きです。ボルトを回すにしても、工具を持って締め付けるにしても、とにかく手先にダイレクトに伝わる感覚[…]
オークションで購入したシート、2~3cmの裂けたようなキズが… 筆者が某大手オークションサイトで購入した、純正コブラシート。「これでイメージチェンジするぞ! 」と思っていたのだが、購入前に気になってい[…]
ポータブル電源で作動する充電器が登場! いつでも必要な時に走行できるよう、常に意識しておかなくてはならないのがバッテリーのコンディション。「そんなの面倒」と思うかもしれないが、バッテリーは時間の経過と[…]
最新の関連記事(工具)
フレーム/スタンドの別体構造と自在キャスター装備で自由に移動できる 向山鉄工のオリジナル製品である「ガレージREVO」は、バイクスタンドに自在キャスターを取り付けることで、スタンドアップしたバイクを前[…]
やっぱり「素手」が好き! いきなりですが、筆者はかなりの作業を素手で行っています。ていうか、素手が大好きです。ボルトを回すにしても、工具を持って締め付けるにしても、とにかく手先にダイレクトに伝わる感覚[…]
ポータブル電源で作動する充電器が登場! いつでも必要な時に走行できるよう、常に意識しておかなくてはならないのがバッテリーのコンディション。「そんなの面倒」と思うかもしれないが、バッテリーは時間の経過と[…]
システムキャビネットSC198:アストロプロダクツ収納アイテム史上最大サイズ。ガレージの演出にも効果的なシステムタイプ 工具や道具類の収納に便利なツールキャビネットと勝手が良いワークベンチ、さらにロッ[…]
地味に迷ってない? スパナのサイズ選び スパナやレンチのサイズ選びって、地味に迷いますよね。もちろん、バイクメンテのエキスパートともなれば、見ただけでボルトやナットのサイズがわかるものですが、ビギナー[…]
人気記事ランキング(全体)
使わないのは「どうせ利かない」もしくは「踏んでもよくわからない」…… リヤブレーキをかけているライダーは、驚くほど少ない。 ブレーキペダルを踏んでも利いているかわからない、すぐABS(アンチロック)が[…]
振動の低減って言われるけど、何の振動? ハンドルバーの端っこに付いていいて、黒く塗られていたりメッキ処理がされていたりする部品がある。主に鉄でできている錘(おもり)で、その名もハンドルバーウエイト。4[…]
足着きがいい! クルーザーは上半身が直立したライディングポジションのものが主流で、シート高は700mmを切るケースも。アドベンチャーモデルでは片足ツンツンでも、クルーザーなら両足がカカトまでベタ付きと[…]
ホンダ新型「CB400」 偉い人も“公認”済み ホンダ2輪の総責任者である二輪・パワープロダクツ事業本部長が、ホンダ新ヨンヒャクの存在をすでに認めている。発言があったのは、2024年7月2日にホンダが[…]
一回の違反で免許取消になる違反 交通違反が点数制度となっているのは、よく知られている。交通違反や交通事故に対して一定の基礎点数が設定されており、3年間の累積に応じて免許停止や取消などの処分が課せられる[…]
最新の投稿記事(全体)
1位:スズキ『MotoGP復帰』&『850ccで復活』の可能性あり?! スズキを一躍、世界的メーカーに押し上げたカリスマ経営者、鈴木修氏が94歳で死去し騒然となったのは、2024年12月27日のこと。[…]
1105点の応募から8点の入賞作品を選出 株式会社モリタホールディングスは、このたび「第20回 未来の消防車アイデアコンテスト」を実施、受賞作品が決定となりました。 全国の小学生から集まった、1105[…]
「ETC専用化等のロードマップ」の現状 2020年に国土交通省が発表した「ETC専用化等のロードマップ」。その名の通り、高速道路の料金所をETC専用化にするための計画書だ。これによると、ETC専用化は[…]
一大ブームが巻き起こった1986年 滑走路で戦闘機と加速競争する姿、美人教官とのタンデム、苦悩を抱えて丘の上に佇む夕暮れ──。数々の印象的なシーンに初代ニンジャ=GPZ900Rがいた。 1986年に公[…]
房総半島の意外な魅力「素掘りトンネル」 東京から小一時間で行けるのに意外と秘境感あふれる千葉・房総半島。ここには味わい深い素掘りのトンネルが多数存在する。そんな異次元空間を求めて、半日だけショートツー[…]