スポーツツアラー ヤマハ「トレーサー9GT+」がACCを装備し、さらに旅が楽しく安全に!!【試乗インプレッション】
ヤマハのラインナップの中では“スポーツツーリング”というジャンルに属しているトレーサー9GT。2023年に登場した“+”は近年各社が採用進めているACC(アダプティブクルーズコントロール)を搭載したモデル。…なのだが、6軸IMUを自社開発するヤマハのACCは他車とひと味違い、電子制御サスペンションとブレーキを含めた協調制御を行うという。一体どんな乗り味なんだろうか?
●文:谷田貝洋暁 ●写真:真弓悟史 ●BRAND POST提供:YAMAHA [Y’S GEAR]
MT-09ベースのスポーツツアラーとして長年熟成を重ねたトレーサー
近年、クロスオーバーというジャンルのモデルがヨーロッパで人気だ。“前後17インチホイールでロードスポーツ寄りの車体”に、“スポーツバイク由来の多気筒エンジン”&“ストローク長めサスペンション”を組み合わせ、“ポジションはアップライトに設定する”というキャラクター。言ってみれば4輪で言うところのSUVみたいなキャラクターである。
今回紹介するトレーサーが登場したのは2015年、現在同様MT-09をベースとし、車名当時は“MT-09トレーサー”とMTシリーズのバリエーションモデル的な位置付けだった。その後、最高出力を変更したり、アシストスリッパークラッチ追加などのモデルチェンジを受けながら進化。
2018年には“トレーサー900”に改名。エンジン&車体はMT-09ベースという関係性は変わらないものの、トレーサー900はスイングアームが60㎜伸ばされ、軸間距離を1440㎜から1500㎜へと変更。MT-09由来のクイックなハンドリングのキャラクターから、ツアラーらしいゆったりとしたキャラクターへと大幅な路線変更を行なった。
現在のトレーサーは、2021年のフルモデルチェンジでフレーム刷新に加え6軸IMUやKYB製電子制御サスペンションを新装備。車名も“トレーサー9GT”へと変更されている。
さて、ここでようやく今回試乗するトレーサー9GT+へとたどり着くわけだが、車名に“+”が付いただけで、随分と大きな違いが生まれている。なにせ“+”はヤマハ初のACC機能が搭載されたモデルであり、しかもこのレーダー機能は、KYB製電子制御サスペンションと連動することで、UBS(ユニファイドブレーキシステム)なんていう、他のACC付きモデルにはない機能も搭載しているという。
MT-09譲りの並列3気筒エンジンをツーリングで楽しむ
トレーサー9GT+の最大の魅力はなんと言っても、MT-09にも搭載されるハイパワーな並列3気筒エンジンにある。「CP3」と呼ばれるこのエンジンは、スーパースポーツモデルのYZF-R1のクロスプレーン(CP)エンジン同様のクロスプレーンコンセプトに基づいている。つまり並列3気筒エンジンは各気筒のクランクピンが120度ずつの均等にレイアウトされることで、慣性トルクを打ち消せるというレイアウトなのだ。
実際に走ってみても、この並列3気筒エンジンの過渡特性は独特なものがある。フラットというか直情的というか…。いわゆる慣性トルクを溜め込みながら2時曲線的な盛り上がり方をする直列4気筒エンジンとは真逆。慣性トルクを溜め込まないことで、スロットルを開けたら開けただけ吹け上がり、スロットルを戻した場合にもトルクのキレがものすごくいい。
一方の車体というとは、アドベンチャーライクな腰高なスタイリングに背筋がしっかり伸びる快適ポジションのおかげでゆったりのんびりが似合いそうな高速ツアラーに見えなくもないが、走ってみるとまったく印象が違うのである。
ヤマハでは“スポーツツアラー”に属するトレーサー9GTである、ベースのMT-09から70mm伸ばされたホイールベースのおかげで、車体は随分と大柄に感じ、挙動はおっとり目のキャラクターになっている。
とはいえコーナーに差し掛かれば、このトレーサー9GTのアップライトなポジションは、“姿勢が楽”というよりは、高いアイポイントで前方の視界を確保するためのものであり、しっかりマシンを抑え込んでコントロールするためのものだということがよくわかる。
車体まわりのすべてのパーツが、持ち前の並列3気筒エンジンのダイレクト感あふれるフィーリングを楽しむことに向けて調律されているのだ。“スポーツツアラー”とはよく言ったもので、トレーサー9GT+にはその名に恥じないスポーティさがある。
ヤマハ初のACCはその機能、確実性において頭一つ抜けている!
アダプティブクルーズコントロールシステム(以下:ACC)とは、一定の速度で走り続けるだけの一般的なクルーズコントロールとは違い、ミリ波レーダーで前方の交通状況をセンシングして追従走行を行う機能を持ったクルーズコントロールシステムのことだ。
なのでACC設定中に前走車に追いつくと自動で減速。その後は一定の間隔(実際には時間距離)を保ち、前走車が車線変更でいなくなったり、追い越しをかけると再び設定速度まで加速する。
……と、ここまでの説明はすでにACCを採用しているドゥカティやKTM、BMW、カワサキと変わらないのだが、ヤマハはトレーサー9GTにACCを搭載するにあたり、なんとレーダー装備とブレーキ&電子制御サスペンションが連動して動くようにしてしまったのだ。
とは言ってもこれまでのACCもブレーキの制御を行なっており、ACC設定中に前走車に近づいたり、急な割り込みがあったりするとブレーキの制御を勝手に入れてくる。では、ヤマハのACCの何がすごいのか?
それはACCによるブレーキのかけ具合だ。一番強いブレーキ介入を行うKTMでさえ、ACC設定中にかけるブレーキは最大効力の50%ほど。やや強めにブレーキを引きづりながら減速するくらいの“弱めの制御”しか行わない。余裕を持って前走者に追いつたような場合にはACC任せで減速できるが、前走車が急ブレーキをかけたり、急な割り込みがあった場合にはライダーによるブレーキ介入が必要になる。
一方、ヤマハのACCはというと、前走車が急ブレーキをかけたような場合には、ガツンと自動でブレーキ入力される。それこそ急ブレーキに近い減速をACCが勝手に入れてくるのだ。ちょっとバイク経験の長いライダーなら、「バイクが勝手に急ブレーキをかけたら、フロントフォークが一気に沈み込んで危ないよ!」と思うことだろう。僕も最初はそう思った。
このトレーサー9GT+独自のACCに関しては、クローズド環境での体験試乗会がヤマハ主催で行われた。その内容がかなりぶっ飛んでいて、「ACCで追従走行中に前走車がいきなり急ブレーキをかける」なんて体験項目もあった。
関係者から、「最初は怖いと思いますが、トレーサー9GT+がブレーキ制御を体感できるよう、前走車が近づいてもなるべくご自身でブレーキをかけないよう、耐えてください。」なんて言われながらテストに臨んだのだが……。
果たしてそのとおり。確かに最初は、前走車がブレーキをかけた瞬間、恐怖に耐えられず自分でブレーキをかけてしまったのだが、徐々にACCのブレーキ制御が信用できるようになると、レバーから指を離していてもしっかり減速して衝突を回避することを実感。慣れてくると、右ハンドルから手を離した状態でも前走車の急ブレーキに対応し、しっかり減速して追突を回避するところまで体感することができたのだ。
と、ここまで読んだ方の中には、「そんな強烈なブレーキ制御を勝手に入れられたら、フロントフォークがガッツリ沈み込んでライダーは前方に放り出されてしまうだろ?」なんて思うことだろう。
しかし、そうはならないところがヤマハのすごいところなのだ。トレーサー9GT+に搭載されているユニファイドブレーキシステム(UBS)は、ACCとブレーキシステム、そして電子制御サスペンションの協調制御を行なっており、ACCによる急ブレーキがかかっても、ほぼフロントフォークが沈み込むような挙動が起きないよう、電子制御サスペンションで姿勢制御を実施。ヤマハのACCは電子制御サスペンションとの協調制御により、急制動に近い強いブレーキがかけられるようになったのだ。
しかもである。このレーダー連動のUBSの効用は、ACCでの巡航中だけではない。例えば、急激な割り込みを受けた時や、前走車が急ブレーキを踏んだ時。……つまり通常走行時に前走車に追突しそうになった場合にも発揮される。ACCを起動していなくてもミリ波レーダーは常に前方の状況をセンシングしており、追突の危険があると判断した場合には、メーターに“ライダー介入リクエスト”の表示を行なって、乗り手にブレーキングを促す。ここまでは、他のACC搭載車にも装備されている機能である。
ヤマハのUBSの真価はここからである。“ライダー介入リクエスト”の表示されている状態でフロントブレーキもしくはリヤブレーキを操作すると、入力の強弱に関わらずUBSが自動でブレーキを増圧して最大限の制動を実施するのだ。
つまり追突寸前になんらかのブレーキ入力ができればそれをトリガーとして急ブレーキを行い追突を防いでくれるというわけだ。もちろん、この場合も電子制御サスペンションが連動して、制動時にピッチングが極力起こさないよう姿勢を制御してくれる。
実際、テストではギリギリのところで、チョンとリヤブレーキを踏んでみたり、軽くブレーキレバーを握ったりしてみたのだが、トレーサー9GT+はしっかり追突を防ぐような力強いブレーキングを行なってくれた。
その後、1週間ほどトレーサー9GT+を公道で試乗する機会を得たが、実際の交通環境の中でも何度か“ライダー介入リクエスト”を見る機会があり、UBSの効果が実際に交通環境で使える機能になっていることも確認できた。
職業柄、ACC搭載モデルは全メーカー体験済みだが、ヤマハのACCはとにかくレーダーのセンシングやその作動において誤作動が少なく、前方の車両をレーダーで捉えるタイミングも過不足ない印象。2024年現在、もっとも快適なACCに仕上がっていると言ってしまっていいだろう。
ヤマハトレーサー9GT+のディティール
トレーサー9GT>+は2つのキャンペーンも実施中!
①「TRACER9 GT>+ ツーリングに行こう!! キャンペーン」期間:4月1日〜10月31日
キャンペーン協賛店にて期間中にトレーサー9 GT/GT+を新車購入・登録すると、ワイズギア用品のサイドケースをプレゼント。約20万円のケースとショートパーツ類が、なんと無料になる大チャンスだ!!
また、トレーサー9 GT/GT+を「ヤマハ バイクレンタル」で利用後に新車購入すると、2万円(税込)を上限にレンタル利用料金をキャッシュバックするキャンペーンも実施中。こちらも注目!
②「YSP TRACER9 GT+ETCプレゼントキャンペーン」期間:4月1日〜10月31日
YSP(ヤマハモーターサイクルスポーツプラザ)にて、期間中にトレーサー9 GT+を新車購入・登録するとETC車載器を1台プレゼント。もはやETCは必需品と言えるだけに、これも嬉しい!!
※本記事はYAMAHA [Y’S GEAR]が提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。