2つの“モード”がクロムウェル1200の乗る楽しさを倍増させる!〈BRIXTON〉
2016年に誕生した「BRIXTON(ブリクストン)」は、バイクや工作機器の商社として100年以上の歴史を持つオーストリアのKSR社が、イギリスのクラシカルなデザインをモチーフとして設立したバイクブランドです。そのブリクストンが2023年、日本での販売をスタート。独自開発の水冷2気筒エンジンを搭載したフラッグシップモデル「クロムウェル1200」に試乗してみました。
●写真:長谷川 徹 ●BRAND POST提供:MOTORISTS
レトロなデザインに最新の機能を盛り込んでいる
ブリクストンは新興ブランドですが、125〜1200ccまで多くのモデルをラインナップしています。その中でも“クラシックブリティッシュスタイル”を具現化した「クロムウェル」が、ブリクストンの中核モデルです。そのクロムウェルには、空冷単気筒を搭載した125/250と、ブリクストンが独自に開発した水冷並列2気筒を搭載した1200があります。
クロムウェル1200に搭載された新開発エンジンは、シリンダーが直立したバーチカルツインで、最高出力は61kW(83HP)/6550rpm。最大トルクは108Nmと豊潤で、しかもわずか3100rpmから発揮します。この強大なトルクを受け止め、急激なエンジンブレーキによるリヤロックを防ぎ、ブレーキング時のマシン挙動を安定させるFCCアンチホッピングクラッチも装備。クラッチレバー操作の軽さにも貢献しています。
このエンジンには、“エコ”と“スポーツ”の2つのライディングモードが設定されています。左側スイッチボックスにある“MODE”ボタンを長押しすることで切り替えられ、モードによってメーターの表示も切り替わります。
どちらのモードに設定しても最高出力と最大トルクは変わりませんが、スポーツではスロットルバルブがより速く開く、ハイスロットル状態になります。
メーター/ヘッドライト/テールランプ/小型ウインカーは丸型デザインで、レトロなイメージにまとめられています。しかし、メーターはTFT液晶、灯火類はすべてLEDと最新の装備となっています。
時速30km以上で設定できるクルーズコントロールや、トラクションコントロールとABSを協調制御したASR(アンチスキッドレギュレーション)といった機能も装備。車体デザインはレトロ調にまとめられていますが、クロムウェル1200の走りに関する機能は最先端となっています。
走り出せば“軽量コンパクト”に感じる車体バランス
リッタークラスのアドベンチャーバイクに乗る機会が多い者にとっては、それらのバイクと比べるとクロムウェル1200の車体はかなりコンパクトに感じます。車重は235kgと、軽量というわけではないですが、コンパクトな車体と重心位置のバランスが絶妙で、車体の押し引きが重すぎず、取り回しに不安を感じませんでした。
全幅は800mmで、車体も総じてスリムなのですが、スロットルボディカバーとエアクリーナーボックスカバーが足と干渉するため、両足がやや広がった状態でシートに座ることになります。
そのため、シート高自体は800mmに収められているのですが、足着き性が少し損なわれて、両カカトが浮く状態になってしまいます。とはいえ、跨った状態でも重心位置のバランスがよく、車体がグラつくような重さも感じないので、片足つま先立ちでも安定して車体を支えることができます。
さらに、少しお尻をズラせば、足裏全体を着けるようになりますので、足着き性に関してはとくに不安は感じませんでした。
シート/ステップ/ハンドルグリップの3点の位置関係がよく考えられていて、平均的な日本人体形のライダーにもアップライトな姿勢がとりやすくなっています。個人的にはハンドルグリップ位置があと1〜2cmほど手前にあれば、もう少しヒジを曲げて座れるようになり、さらにリラックスした姿勢でライディングできると感じました。
それでも、樽型のハンドルグリップは握りやすく、スロットル/クラッチレバー/ブレーキレバー/ウインカーの操作性が軽くてスムーズで、さらにエコモードでもアイドリング(約1000rpm)から少しエンジン回転を上げただけでトルクが立ち上がってきます。
スロットルとクラッチレバーを少し操作するだけで安定したトルクが立ち上がり、エンストしそうな不安を感じることなく、車体はスッと前進していきます。排気音は低音かつ歯切れの良さがあり、ツインエンジンらしいパルス音とともにスムーズに加速していきます。車体が動き出せば、タイヤは直進安定性を発揮し、前後サスペンションは余分なマシン挙動を抑えてフラットな乗り心地を提供してくれます。
それでいて、交差点を左折するような低速時では、フロントタイヤがスッと切れ込んでいきます。この時のフロントタイヤの接地感が分かりやすく、車体がイン側に急に倒れ込んでくることもないので、小回りも安定して行えます。
直進安定性と旋回性のバランスがよく、ハンドリングが軽快で、コーナー進入時の倒し込みや連続コーナーでの切り返しで車体の重さを感じることがありません。クロムウェル1200は、クセのないニュートラルな操作性となっていて、街中からワインディングまで扱いやすい乗り味にまとめられています。
走りを一変するスポーツモード
エコモードでのクロムウェル1200は、極低回転からトルクがスムーズに立ち上がり、ハンドリングはニュートラルで、リッターオーバーのロードバイクとして扱いやすい乗り味にまとまっています。
ミドルクラスからのステップアップとしても、初めてのリッタークラスとしてもオススメできる扱いやすさです。ただし、高速道路の合流や追い越し車線といったハイスピードへの加速では、1200という排気量にしてはやや物足りなさを感じました。
ということもあり、市街地走行中でしたがスポーツモードに切り替えてみました。すると、スロットルを開けてクラッチをつないだ瞬間に、「うわっ!?」と声が出ました。
スロットルはエコモードと同じくらい少ない開度だったにも関わらず、トルクは倍以上に感じられるほど圧倒的で、リアルに身体が置いていかれるほどの加速力を発揮したからです。前走車との間隔が一気に詰まったので、スロットルをすぐに閉じたのですが、この時にFCCアンチホッピングクラッチが余分なバックトルクを吸収してくれるので、マシン挙動が乱れることなく安定してブレーキングすることができました。
エコモードよりもさらにスロットル開度を少なくして(アイドリングから少し開けた程度)発進しても、重厚なトルクが立ち上がり、エンストするようなエンジン回転の落ち込みもなく、シャープに加速していきます。
スポーツモードは少ないスロットル操作でキビキビした走りを楽しめますが、加速が鋭い分だけ車体の荷重移動も大きくなり、ブレーキング時のノーズダイブ量も増えます。前後サスペンションとタイヤのグリップ力がそうした荷重移動をしっかり受け止めてくれるので、バランスを崩すような車体の乱れは起きないのですが、マシン挙動はエコモードよりもギクシャクしがちです。
交通車両のない見通しのいい直線で、少し多めにスロットルを開けてみましたが(私のスキルではハーフスロットル程度が限界ですが)、スーパースポーツや450ccモトクロッサーとはまた異なる怒とうの加速力を発揮し、ウインドシールドが欲しくなるほどの風圧を感じました。
スポーツモードの加速力を体感したことで、トータルで乗りやすいエコモードの完成度の高さが改めて分かりました。それでもスポーツモードを設定しているところが、ブリクストンらしさなのでしょう。
クラシカルなスタイルで誰もが扱いやすい乗り味だけでなく、乗りこなすにはそれなりのスキルが求められる圧倒的なポテンシャルも兼ね備えていますが、それをモード切り替えスイッチという自己判断で選択できるようにしているからです。
実用性と圧倒的なスポーツ性をクラシカルなデザインに搭載したクロムウェル1200には、“ネオクラシック”の枠にとらわれない、大人の趣味の乗り物としての“ネオスタンダード”となりうる懐の深さが感じられました。
ブリクストン フルラインナップ
ブリクストンは、クラシックブリティッシュスタイルをイメージした「クラシックレンジ」と、“X”をアイコンとしたストリートモデル「クロスファイアレンジ」の2つが大きなファミリーとなっています。
そしてクラシックレンジは「クロムウェル」、カフェレーサーの「サンレイ」、クラシックボバースタイルの「レイバーン」、ストリートスクランブラーの「フェルスベルク」の4つのシリーズから構成されています。
CLASSIC RANGE
CROSSFIRE RANGE
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