
スズキの軽二輪スタンダードスポーツ「ジクサー150」が2025年モデルも価格据え置きで登場。さっそく試乗してみた。中途半端にも思える排気量や良心的な価格から想像するよりも優しく芯のあるキャラクターは、スズキらしさにあふれていた。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:楠堂亜希 ●外部リンク:スズキ
コスパモンスター、それだけだと思っていたら
これまでなかなか試乗する機会のなかった(筆者がたまたま試乗機会に恵まれなかった)スズキの軽二輪スタンダードモデル「ジクサー150」に乗ることができたのでインプレッションをお届けしたい。
高速道路やバイパスを走れる126cc以上、かつマニュアルトランスミッション車というくくりで見れば、38万5000円という車両価格は最安だ。そんな予備知識から、乗り手としてはコストパフォーマンスの部分にフォーカスを当てて試乗記を構成するつもりで乗りはじめた……のだが、走りはじめて最初の数秒でアテが外れてしまった。
なんというか、優しい乗り味の中にしっかりとした芯があって、よく出来たスタンダードスポーツなのである。これは安さ云々で評価するだけじゃ足りないぞ、と早々に考えを改めることになった。
あれ? こんなに気持ちよく走れるんだ……と早々に気付く。
何がいいって、まずはロングストローク設定の空冷単気筒エンジンだ。聞くところによると、排ガス規制への対応でだいぶマイルドな性格になったというが、前モデルに試乗経験がない身からすればとにかく優しい特性だ。低回転から粘りがあり、どの回転域からでも必要十分なトルクを発生する。
5速ギヤだが、エンジン特性から各ギヤのカバー範囲は広く、さっさとシフトアップ、またはギヤチェンジを適当にサボって走ってもOK。高回転域まで回しても正直言って速いわけではないが、角のない振動と交通の流れに乗るには十分なパワーで、あらゆる状況下で扱いやすい。
また、小さめの排気量ながらロングストローク設定によるストライドの長い加速感(鼓動の一発一発の間隔と進む距離の関係で歩幅が長いように感じる)が心地よく、自然に長い距離を走りたくなるキャラクターだ。
高速道路も少し走ったが、上半身を全く伏せない状態では最高速度100km/hが出るか出ないかといったところ。ベタ伏せかつ下り坂なら120km/hも出なくはないが、快適なのは80km/h~90km/hあたりだった。
エンジンと好バランスの車体まわり
次に感心したのはサスペンションだ。廉価な車両価格を実現するため普通もしくは低コストの足まわりのはずなのだが、思ったよりもしっかりとした減衰力があって、動きが良く乗り心地もいいのに程よく吸収性も備えている。特にフロントフォークはバイブレ製キャリパーが発生する制動力と好バランスで、街中でもワインディングロードでも安心してブレーキレバーを引いていくことができる。
リヤサスペンションは、2人乗りを想定しているためかやや硬めでリヤ車高もやや高い。1人で乗るのがほとんど、また大荷物も普段は積まないというのであれば、リヤショックのプリロードを1段抜いてもいいんじゃないだろうか。とはいえ、標準仕様のままでも違和感があるというほどではない。
少し気になったのはシートだ。クッション性はしっかりしていて乗り心地も悪くないが、大柄な筆者(身長183cm)だと少し後ろのほうに座りたくなるところ、座面が前傾気味なためシッティングポイントが前方に限定されがちなのだ。たまたま取材で一緒になった岡崎静夏さん(身長158cm)は気にならなかったようなので、体格によって感じ方は違いそうだが、筆者と同じような体格の方は購入の前に少し長めの時間を試乗してみたほうがいいかもしれない。
ただし、気になるのは直線をクルージングしているときだけで、ワインディングロードを積極的に走ろうとすると、このシートがちょうどいいと感じるようになったことを追記しておきたい。
ライディングポジションは、上半身がわずかに前傾するスポーツネイキッドのそれで、全体にコンパクト。足着きもよく、また小柄な方でも車重が軽いため支えやすそう。膝まわりやハンドルグリップも気になるところはない。体格と車格が合っていないとカメラマンからも指摘があったがご愛敬ということで……。【身長183cm/体重81kg】
デジタルLCDメーターの視認性はかなりよく、必要な情報が整理されているので指針式をこのむ筆者でも把握しやすい。
ちなみに、燃費が優れているとあちこちで言われるジクサー150だが、申し訳ないことに今回はアップダウンの激しいワインディングロードなど走行条件がまあまあ厳しめだったため、実測値(満タン法)では35.3km/Lほどだった。とはいうものの、この状況でも35km/Lを切らんのか……というのが正直なところだ。
WMTCモード燃費は50.0km/Lで、ネット界隈で見られる実測燃費もそれに近いか、ツーリング燃費ではさらなる低燃費を報告している例も多い。今回の試乗でも、街乗りメインならば普通に40km/Lくらいは走るだろうなと思えた。
デザインはマフラーカバーやタンク形状などけっこう凝っていて、ヘッドライト&テールライトにLEDを採用しているのも立派だ。
特別な装備はないが、限られたコストの中で可能な限りの好バランスを追求しているのがよくわかる。優しく乗りやすく、尖りすぎていないデザイン性も○。街乗りやツーリングがメインで、たまにバイパスや高速道路も走る必要があるといった方には、いい相棒になりそう。初心者だけでなくベテランのセカンドバイクにもすすめられる、またサーキットで低いリスクで練習したいといった方(バンク角対策は必須だが)にも悪くにかもしれない。そんな、意外なほどの秀作バイクがジクサー150だった。
SUZUKI GIXXER 150[2025 model]
試乗車の車体色は「トリトンブルーメタリック/パールグレッシャーホワイト(AGQ)」
主要諸元■全長2020 全幅800 全高1035 軸距1335 シート高795(各mm) 車重139kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 154cc 13ps/8000rpm 1.3kg-m/5750rpm 変速機6段 燃料タンク容量12L■タイヤサイズF=100/80-17 R=140/60R17 ●価格:38万5000円 ●色:青×白、灰、黒 ●発売日:2025年3月21日
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(新型バイク(日本車/国産車) | 試乗インプレッション/テスト)
フロントまわりの軽さも操縦しやすさに大きく貢献 猛暑が続いていても、やっぱりバイクに乗りたい…というわけで、今月はCB750 HORNETでプチツーリングしてきました! このバイクは、アドベンチャー系[…]
これぞCBだ! そう直感的に思えるライダーの視界 跨った瞬間に「CBだ!」と思えた。視界に入る燃料タンクの大きな面積や両腿の内側に感じる存在感、そして昔で言う“殿様乗り”が似合う大きくアップライトなラ[…]
乗ってみた! APトライク250 やっと乗るチャンスがやってきました。APトライク250を作った、株式会社カーターさんのご協力によるものです。ありがとうございます! 以前は同様にAPトライク125も体[…]
本当に初速でZX-10Rを上回ると感じる加速っぷり エンジンにプラスしてモーターの力で走るハイブリッド(HV)モード、モーターのみで走るEVモード、それに加えて自動クラッチにATミッションと、現在にお[…]
地面を感じる直進安定性で日常の移動を安心快適に 決勝レース1で自己最高となる2位を獲得した第3戦を終え、全日本ロードレース選手権は8月下旬まで約2ヵ月間の夏休み。その間もいろいろと忙しいのですが、やっ[…]
最新の関連記事(スズキ [SUZUKI] | 新型軽二輪 [126〜250cc])
10/1発売:カワサキ「Ninja ZX-25R SE/RR」 250ccクラスで孤高の存在感を放つ4気筒モデル、「Ninja ZX-25R」の2026年モデルが早くも登場する。今回のモデルチェンジで[…]
9/10発売:スズキ アドレス125 まずはスズキから、原付二種スクーターの定番「アドレス125」がフルモデルチェンジして登場だ。フレームを新設計して剛性を高めつつ軽量化を実現し、エンジンもカムシャフ[…]
想像していたよりスポーティで楽しさの基本が詰まってる!! エントリーライダーや若年層、セカンドバイクユーザーなどをターゲットに日本でもラインアップされているジクサー150のʼ25年モデルは、ニューカラ[…]
通勤からツーリングまでマルチに使えるのが軽二輪、だからこそ低価格にもこだわりたい! 日本の道に最適なサイズで、通勤/通学だけでなくツーリングにも使えるのが軽二輪(126~250cc)のいいところ。AT[…]
通勤からツーリング、サーキット走行まで使えるカウル付き軽二輪スポーツ 日本の道に最適といえるサイズ感や、通勤/通学からツーリングまで使える万能さが軽二輪(126~250cc)の長所。スクーターやレジャ[…]
人気記事ランキング(全体)
空想をも現実化するリアルなライドフィーリング しげの秀一氏により1983年から1991年にかけて週刊少年マガジンで連載され、当時のオートバイブームの火付け役となった伝説の漫画「バリバリ伝説」。そこで描[…]
点火トラブルって多いよね 昔から「良い混合気」「良い圧縮」「良い火花」の三大要素が調子の良いエンジンの条件として言われておりますが、それはそのまま調子が悪くなったバイクのチェック項目でもあります。その[…]
長距離や寒冷地ツーリングで感じる“防寒装備の限界” 真冬のツーリングでは、重ね着をしても上半身の冷えは避けにくい。特に風を受ける胸や腹部は冷えやすく、体幹が冷えることで集中力や操作精度が低下する。グリ[…]
背中が出にくい設計とストレッチ素材で快適性を確保 このインナーのポイントは、ハーフジップ/長めの着丈/背面ストレッチ素材」という3点だ。防風性能に特化した前面と、可動性を損なわない背面ストレッチにより[…]
薄くても温かい、保温性に優れる設計 GK-847は、ポリエステル素材をベースとしたサーマル構造を採用しており、薄手ながらも高い保温性を実現している。厚手のウインターグローブの下に装着しても動きが妨げら[…]
最新の投稿記事(全体)
QJ LOVER Kayo が感じた ”リアルなQJ MOTORの魅力” を 毎月ここから発信していきます。 —— Let’s MOTOR Talk ! —— モデル・通訳として活動している時任カヨが[…]
空冷エンジンのノウハウを結集【カワサキ GPz1100[ZX1100A]】 航空機技術から生まれたハーフカウルとレース譲りのユニトラックサスを装備。デジタルフューエルインジェクション効果を高めるために[…]
月内発売:SHOEI 「GT-Air 3 AGILITY」 優れた空力特性とインナーバイザーを兼ね備えたSHOEIのフルフェイスヘルメット「GT-Air3(ジーティーエア スリー)」に、新たなグラフィ[…]
白バイ隊員の主な装備 オートバイが好きな方であれば一度は、白バイの装備や白バイ隊員の制服ってどうなっているんだろうって思ったことがあるのではないかと思います。私も警察官になる前は興味津々で、走っている[…]
11/1発売:カワサキ カワサキ ニンジャH2 SX SE カワサキの最高峰スポーツツアラー「ニンジャH2 SX SE」の2026年モデルが、11月1日に発売された。スーパーチャージャー搭載のバランス[…]
- 1
- 2
















































