[高校生のバイク問題]「脱炭素化も実現!?」高校生の通学バイク電動化を実証【鹿児島県日置市】

吹高EVライドシェアリング

2024年9月27日、「バイクラブフォーラムin南国みやざき」が宮崎県宮崎市で開催された。ここではそのうち、パネルディスカッション「電動二輪車利活用による社会課題(脆弱な二次交通)解決」の要点について説明していこう。


●文:田中淳麿(ヤングマシン編集部)

EVは脱炭素社会実現と移動課題の改善に寄与するか

「バイクラブフォーラムin南国みやざき」で実施されたパネルディスカッション、「電動二輪車利活用による社会課題(脆弱な二次交通)解決」において、次のトークテーマが議論された。

「モビリティー革命の背景と地方部交通網の課題」、「電動二輪車“ならでは”の特性を活かした利活用推進」、それから「地方部における社会課題の解決に向け、電動二輪車ができること」の3つだ。

少子高齢化とモビリティ革命のなか、バイクも電動化が進みつつあることでの社会課題(とくに移動課題)改善への貢献について、そのメリットとデメリット(バッテリー性能による課題など)、都市部と地方、所有とシェアリングなどについて発表と議論が進められた。

その中で注目したいのは、脱炭素社会実現に向けて取り組む鹿児島県日置市の発表だ。

日置市は太陽光/水力発電など、再生可能エネルギーの地産地消を推進しており、人口減少が著しい吹上(ふきあげ)地域においてさまざまな施策を行っている。

中でも運転手不足による通学バスの廃止/減便など、公共交通の減少がもたらす移動の課題は、高校生活を送る上で負担を背負う学生、その学生をクルマで送迎する保護者、通学環境の悪化が生徒数減少につながる学校と、3者にとっての切実な問題となっている。

こうした課題を受け、日置市は高校生向けの電動自転車/バイクのレンタル施策に加え、運輸部門の電化という点からも、県立吹上高校において電動バイクのシェアリング実証実験を行った。

保護者からは「購入費用が負担」「バイクは危ない」といった声も上がったが、車両は購入ではなくシェアリングとし(電気代は自己負担)、実施前には安全運転講習会も行ったことで不安を取り除いた。

コミューターの電動化が脱炭素社会への貢献に加え、地方の高校生の移動課題を改善する可能性があることがよくわかる内容だった。引き続き、実施結果にも注目したい。

大学から学識者、自治体から脱炭素施策推進者、民間企業から交換式バッテリーシェアリング事業者、メーカー団体から電動化推進者の4名が登壇して発表と議論が行われた。

鹿児島県日置市の発表詳細

環境省による脱炭素先行地域に選定されている日置市では、エネルギー構造高度化・転換理解促進事業の中で、運輸部門の電化に向けた電動バイクのシェアリング実証事業や再エネの理解促進事業、再エネ人材育成拠点の構築などに取り組んでいる。

高校生の通学バイクの電動化は走行中の二酸化炭素排出を抑え、市によると年間35トンの削減を見込んでいるという。

高校生の移動課題。

生徒数約180人のうち7割が原付バイク通学の鹿児島県立吹上高等学校で実施された「吹高EVライドシェアリング」の取り組み。

2025年にガソリン50ccの原付は生産終了となるが、スクーターなどコミューター領域では交換式バッテリーによる電動化が推進されている。

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