
公道の安全を守る白バイはよく知られた存在だが、それ以外にもさまざまな役割を持つ特殊車両が存在していることをご存知だろうか。この記事では、そんな影に日向に日本の安全を守っている色とりどりのバイクたちを、元白バイ警官の宅島奈津子さんが紹介する。
●文:宅島奈津子(ヤングマシン編集部)
日本に存在する色とりどりの特殊車両たち
警察車両である白バイ以外にも取締りや犯罪抑止のためのオートバイが存在しています。それは、黒バイ、青バイ、赤バイ、黄バイと言われる4種のオートバイたち。意外と知られていない、それぞれが持つ役割や、装備品等の解説をしていきたいと思います。
覆面パトカーの二輪版:黒バイ
※画像はベース車両の市販モデル、ホンダCB1300SF
黒バイは、白バイと同様、日本の警察車両のひとつであり、交通取締りの一端を担っています。わかりやすく言えば、覆面パトカーの二輪車版といったところ。この黒バイは、夜間の暴走行為や危険運転を取締まるために、2002年4月に和歌山県警によって導入されたのが始まりです。
当時の和歌山では、夜間の暴走族問題が深刻だったこともあり、導入の翌月にはたくさんの暴走族を検挙する成果を挙げました。
白バイはもちろん、この黒バイも、パトロールをしている通常のパトカーよりも機動力が優れています。しかも検挙率が高いとうこともあり、現在では、和歌山県警だけでなく、青森県警や警視庁、宮城県警等でも採用されています。黒バイは、夜間の取締りが目的なため、おもに夜に活動しています。そのため、なかなか目にすることはないかと思います。
日中と比較すると、夜間ははるかに視界が悪くなります。そのため黒バイには、白バイ隊員以上に、過酷な訓練を受けた、運転技術の優れた隊員しか乗車することができません。装備品も白バイにはない、黒バイ特有のものがあります。
そのうちのひとつは、夜間や悪天候のときでも、鮮明に撮影が可能な高性能のビデオカメラやスチールカメラ。黒バイの前方に設置されています。それから、追跡対象者にマーキングすることを目的とした液体を発射できる「採証液発射装置」も特筆すべき装備。その飛距離は15~20mほどにもなります。
ひったくり抑制:青バイ
※画像はベース車両の市販モデル、ホンダCB400SF
青バイも、白バイ同様、赤色灯とサイレンを搭載した警察車両のひとつです。隊名に「大阪を青空のように澄みきった街に」という思いがこめられた、スカイブルー隊が使用しています。
この青バイは大阪府警特有のもの。当然、大阪府内でしか見ることができません。2000年前後あたりの大阪では、ひったくり事件が多発していました。そういった犯罪を抑止することを目的に、導入されたのが青バイだったというわけです。青バイの登場により、大阪ではひったくり事件の発生件数が激減しました。
2025年現在では、青バイの活動は、街頭犯罪の抑止だけに留まりません。特殊詐欺等の抑止や交通指導・取締りなども実施しています。
災害時の助け:赤バイ
警察車両ではなく、消防車両のひとつが赤バイです。消防車両には、赤色を使用することが義務付けられているため、こうしたカラーとなっています。
おもに、火災や災害等の現場で活動しています。赤バイは言うまでもなく、消防車よりも小回りがきき、機動力が高いことがポイント。現場へ駆けつける速さに長けており、一刻を争う対応が必要な際に、大きな役割をはたしています。
赤バイは通常、2台1組で稼働しており、それぞれで搭載されている装備が異なります。1台には消火器などの消火用の装備、もう1台には簡易救助器具や後部資器材収納ボックスなどが搭載されています。
民間の緊急車両:黄バイ
道路管理者によるパトロール部隊が使用しており、首都高速でのみ稼働しているのが黄バイ。首都高で起きた事故現場へ急行し、事故現場での通行止めや車両誘導などを行うために導入されました。警察でも消防でもなく、民間に所属する唯一の緊急車両であり、サイレンを鳴らして緊急走行することを許可されています。
そのため、白バイ同様、サイレンや赤色回転灯が装備されており、収納ボックスには、交通整理等で使用される発煙筒や救急セットが常備されています。以前はベース車両として、ホンダ CB400スーパーフォアが使用されていましたが、生産終了もあり、2024年からBMWのクロスオーバーモデル「F900XR」に切り替わりました。
生活を守っているバイクたち
白バイだけでなく、さまざまな色のバイクがわたしたち国民を守ってくれているのです。めったに見かけることのないバイクも多いですが、何色のオートバイがどんな役割をはたしてくれているのか、頭の片隅に置いておいてもいいかもしれないですね。
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