
●文:ヤングマシン編集部(山崎陸) ●写真:ホンダ
スーパーカブは、そのデザインや優れた燃費性能、信頼性で世界中で愛されるホンダの名車です。とくにとくにアジアでの人気が高いイメージがありますが、じつはアメリカでも高い評価を受けていることをご存じでしょうか。
この記事ではアメリカでスーパーカブが人気になった経緯を紹介し、さらに現行のスーパーカブシリーズのフラッグシップモデルといえる、日米C125の比較から、それぞれの国でのスーパーカブへのニーズや受け入れられ方の違いを紐解いてみたいと思います。
アメリカでスーパーカブが人気になった経緯
1962年にアメリカで販売されたCA100
1960年代、アメリカのバイク市場は大型バイクが主流でしたが、若者にとって高価で手が出しにくいものでした。さらに、バイクは不良の乗るものという印象もあって、社会に十分に受け入れられているとはいえない状況。
そんな中、スーパーカブが低価格で手軽な乗り物として登場。”ナイセスト・ピープル(NICEST PEOPLE)”と題したホンダのキャンペーンは、バイクは不良の乗り物というイメージを崩し、アメリカにまったく新しい小型バイク文化を生み出しました。
そうして受け入れられた、スーパーカブの使われ方はさまざま。ロサンゼルスの流行に敏感な人々にとっては、流行りのファッションアイテムとして、大学生にとってはクルマより安価な生活の足として愛用されました。1960年代、アメリカの人気バンドのBeach Boysがリトルホンダという曲を発表したことからも、当時のスーパーカブの人気がうかがえます。
スーパーカブをアウトドア仕様に改造した”トレール50″も注目され、狩猟用のハンターカブ、釣り用のフィッシングカブという専用モデルが開発されることになりました。
このようにしてスーパーカブは人々の心をつかみ、アメリカのバイク文化に風穴を開けたのです。
日本と北米のスーパーカブC125のスペック比較
歴史を振り返ったところで、本題のC125日米スペックを比較してみます。公式ホームページ記載のスペックから、一部を抜粋して一覧表にしてみました。
日本 | 北米 | |
名称 | スーパーカブ C125 | Super Cub C125 ABS(2024) |
車名・型番 | ホンダ・8BJ-JA71 | C125A |
全長 / 全幅 / 全高 | 1.915 / 720 / 1,000 (mm) | 記載なし |
軸距((ホイールベース)) | 1,245 (mm) | 48.9 (inches) →1,242.1 (mm) |
シート高 | 780 (mm) | 30.7 (inches)→ 779.8 (mm) |
燃費消費量((WMTCモード値)) | 67.8 (km/L) | 記載なし |
車両重量 | 110 (kg) | 238 (pounds)→108 (kg) *標準装備、ガソリン満タン含む |
ブレーキ形式((前)) | 油圧式ディスク (ABS) | Single 220mm hydraulic disc; ABS →220mm油圧式シングルディスク; ABS |
ブレーキ形式((後ろ)) | 機械式リーディング・トレーリング | 110mm mechanical drum →110mm 機械式ドラム |
ファイナルドライブ | 記載なし | 420 Chain; 14T/35T |
メーカー保証情報 | 2年間 オプションで延長可能 | 1年間(走行距離無制限保証) オプションで延長可能 |
カラーバリエーション | ブルー、グレー、レッド | ブルー、グレー |
ショップアクセサリー | 41種 *荷台は標準装備 | 1種、荷台のみ *荷台はオプション |
価格 | ¥410,000 (税抜) | 希望小売価格$3,899 + 輸送料$300→¥655,527 (税抜) (1ドル 156.12円で計算) |
ブレーキ形式やシート高など、基本的なスペックはほぼ変わりがありません。一部、日本のスペック表にしか記載がないもの、また逆のものも存在しています。たとえば、燃費性能は日本版だけの記載で、ファイナルドライブで記載されている、チェーンやスプロケットの表記は北米版だけです。
また、日本版は詳細な環境性能が別表として掲載されていること、北米版はスペック表にメーカー保証情報が記載されていることからも、両者のバイクに求められていることの違いが表れていそうです。
価格は北米版のほうが1.5倍ほど高価です。そもそもの本体価格が高いのと、Destination Chargeという工場から販売店の送料も必要といった事情もありそうです。
北米版はアクセサリーやカスタムパーツがほとんどないこと、荷台が標準装備でないことも意外な違いです。
日米版でスーパーカブC125の商品ページを比較
日本版スーパーカブC125のホームページより
日本版のキャッチコピーは”目的地は、新しい自分。“です。ホームページのカラートーンは、初代のスーパーカブC100を彷彿とさせるものの、トーンが抑えられた透明感のある雰囲気。爽やかで都市的なイメージも醸し出しています。
北米版のキャッチコピーは”Explore the city in style“。和訳すると”スタイリッシュに街を散策”といった意味です。”シンプルで信頼性が高く、楽しい、そして経済的なカブは都会の完璧なパートナーです。さあ、足を振ってスタイリッシュに目的地へ。”という文章も。他のページには”Classic meets contemporary(古典と現在の融合)”との文言も載っています。
北米版スーパーカブC125のホームページより
日本版も北米版も、ホンダが訴求したい方向性自体はそこまで変わりがなさそうです。あえて違いを上げるなら、日本のほうがライダーの個性に訴えかけたい雰囲気を感じます。
アクセサリの少なさはカスタム文化の影響?
スペックや訴求するイメージにあまり違いのない、日米のスーパーカブC125。価格とオプションの豊富さの違いくらいですが、この差にこそ、市場のニーズやお国柄が表れていそうです。
アメリカの場合、盛んなカスタム文化を鑑みての仕様だと予想できます。「ベース車両をなるべく安く用意してあげたい。あえて高価な純正アクセサリを用意しなくてもユーザーが好きに弄り倒してくれるだろう」といった思いがあるのかもしれませんね。
対して日本の仕様は、自分の個性を手軽に反映させたり、多様化したバイクライフに対応できるようにといった意図がありそうです。そもそも国産のバイクで、輸入車よりは手ごろな価格ですしね。北米のスーパーカブフリークには、垂涎モノの環境だということを再認識した比較でした。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
ドリームはホンダ初の本格バイク 1947年のA型からプロトタイプのB型(1948年)、エンジンに加え自転車フレームも初めて自社製としたC型(1949年)を経て1949年8月に登場したのがドリームD型と[…]
以前、Honda E-Clutchを開発した方々にインタービューしたとき「最初はHonda E-Clutchなんていらないと思っていたけれど、一度乗ったら考えが変わった」という話をお聞きしました。 じ[…]
2024年モデル概要:排ガス規制に適合し、実質的な値下げを敢行 2020年モデルでは平成28年排出ガス規制(≒ユーロ4)対応だったため、2022年11月以降は車両の生産自体が不可となっていたが、その後[…]
ホンダ「モンキー125」(2021)比較試乗レビュー この記事ではかわいらしいフォルムと実用性が同居したファンバイク、モンキー125の2021年モデルについて紹介するぞ。ミッションが5速化されたうえに[…]
幻のヤマハロータリー〈RZ201〉 1972年東京モーターショウの最大の話題は彗星のように登場したこのローターリー車だ。水冷・横置きツインローターを搭載、また前輪とともに後輪にもディスクブレーキを採用[…]
最新の関連記事(ニュース&トピックス)
K-2439 フルメッシュロングジャケット:スタイルと機能を両立するツーリングジャケット 腰までしっかりと覆う安心感のあるロング丈でありながら、後襟から袖口へ流れるように入ったラインデザインと、ウエス[…]
ライダーが抱く「ヘルメットの悩み」を解消するために誕生 デルタから発売される高機能ヘルメットスタンドは、多くのライダーから寄せられた「こんな製品があったらいいな」を形にした、実用性とデザイン性を兼ね備[…]
フレンドリーさも持ち合わせていた名機’89 NSR250R 1986年に初登場した2ストロークレーサーレプリカの名車、NSR250R。登場から30年以上が経過した現在でも、型式を問わず根強い人気を誇っ[…]
機能性を損なうことなく利便性を高めた、期待の新製品 おたふく手袋は、長年、多くのプロフェッショナルから信頼され続けている老舗軍手メーカー。同社が展開する「BODY TOUGHNESS(ボディタフネス)[…]
「究極のエネルギー」太陽光のみで活動が可能 HelioX「AGAO(アガオ)」は、電源コンセントや充電コードに頼らず、太陽光のみで充電&走行が可能なマイクロモビリティ。 2023年7月1日施行の改正道[…]
人気記事ランキング(全体)
日本を代表するツーリングロードのティア表だっ! 「次のツーリングは、どこへ行こう?」 そんな嬉しい悩みを抱える全てのライダーに捧げる、究極のツーリングスポット・ティア表が完成した。 ……いや、そもそも[…]
Z1、GPz900R、Ninja ZX-9Rから連なる“マジックナイン”の最新進化系 カワサキは、948cc並列4気筒エンジンを搭載したスーパーネイキッド「Z900」および上級モデル「Z900 SE」[…]
幻のヤマハロータリー〈RZ201〉 1972年東京モーターショウの最大の話題は彗星のように登場したこのローターリー車だ。水冷・横置きツインローターを搭載、また前輪とともに後輪にもディスクブレーキを採用[…]
涼しさの心臓部。それは「素材」と「構造」の魔法的組み合わせ うだるような暑さと、じっとりと肌にまとわりつく湿気。毎年繰り返されるこの季節に、多くの人が少しでも快適に過ごせる服を探し求めている。そんな中[…]
機能性を損なうことなく利便性を高めた、期待の新製品 おたふく手袋は、長年、多くのプロフェッショナルから信頼され続けている老舗軍手メーカー。同社が展開する「BODY TOUGHNESS(ボディタフネス)[…]
最新の投稿記事(全体)
ドリームはホンダ初の本格バイク 1947年のA型からプロトタイプのB型(1948年)、エンジンに加え自転車フレームも初めて自社製としたC型(1949年)を経て1949年8月に登場したのがドリームD型と[…]
K-2439 フルメッシュロングジャケット:スタイルと機能を両立するツーリングジャケット 腰までしっかりと覆う安心感のあるロング丈でありながら、後襟から袖口へ流れるように入ったラインデザインと、ウエス[…]
機能豊富なマルチパーパスフルフェイスのシールドを外した、さらに身軽なフォルム 『TOUR-CROSS V』は、アライヘルメットが’23年6月に発売したマルチパーパスヘルメットだ。高速走行時の空気抵抗を[…]
Z1とともに、CB750Fourを挟み撃ちするねらいで生まれた、Z1ジュニア=Z650 公害やマスキー法、オイルショックなどが社会問題として声高に叫ばれ始めた1970年代、カワサキは2サイクルのマッハ[…]
大和ハウスグループが手がけたD-Wash 愛車を長持ちさせるためにも、大切にしたい「洗車」という作業。 汚れの放置はサビや各部品の劣化が進むことにもつながるし、洗車をしながら、緩んでいるボルトやパーツ[…]
- 1
- 2