
プロジェクトビッグワンの名で開発された往年のCB1000スーパーフォア。その末裔であるCB1300シリーズには標準仕様とSP仕様が存在する。足まわり装備の違いだけでなくディメンションも異なるSPの乗り味とは?
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:ホンダ
1990~2000年代に栄えた『ビッグネイキッド』の末裔
巨大な4気筒エンジンを積み、威風堂々の体躯から想像するよりもスポーティな走りを披露するのがCB1300シリーズの持ち味。その源流は、1992年に発売されたCB1000SFまでさかのぼる。
CB1000SFは当時の旗艦ツアラーCBR1000Fのエンジンを搭載し、「乗れるもんなら乗ってみろ」と言わんばかりの巨躯とそれに似合わぬスポーツ性を発揮。1998年にはクルーザーのX4をベースとした1284ccのマシンに進化したが、一方で軽快感は失われた。
現行CB1300シリーズの始まりは2003年登場のCB1300SFだ。排気量は前作から引き継いだものの全身から贅肉を削ぎ落とし、初代1000のコンセプトに立ち返ったようなシルエットに。2005年にはハーフカウルを装着したSB=スーパーボルドールが追加され、ビッグネイキッド界の不動の王者になった。
2009年のマイナーチェンジでは足着き性に考慮したという変更が行われ、親しみやすさを増す一方で車高が下がったことにより、威風堂々のシルエットも少し優しげなものになっている。
【CB1300 SUPER FOUR/SP】伝統あるネイキッド版のCB1300 スーパーフォアにもSTDとSPが存在する。価格は156万2000円(SPは193万6000円)だ。
そんなCB1300シリーズに、2018年に追加されたのがSPだ。前後にオーリンズ製サスペンションを奢り、フロントブレーキはブレンボ製キャリパーで強化。これに加え、SPのみ車高が2008年以前と同じ数値に戻っていた。諸元表は5mm刻み表記なので厳密な数字はわからないが、スペック上は最低地上高とシート高がSTDに対し10mm上がっている。これがマシンの佇まいや走りに影響を与えているのだ。
走らせると、エンジンは相変わらず分厚くまろやかなトルクの塊。街中を走っているときのフィーリングはネイキッドスタイルのクルーザーと言っても差し支えないほどで、昼間の都内であれば2000rpmまでで事足りてしまう。高速道路でも100km/hを3000rpmでこなし、8500rpmのレッドゾーンまで使っても吹け上がり感はフラットだ。
街中の走りは巨体に似合わぬ従順さ。体力任せの乗り方だと重さを感じるかもしれないが、太いトルクをスロットルで操るようにすると細かい切り返しも想像以上に軽快だ。
【操る愉しさもヘビー級!】大きく長い車体により実際の旋回力はそれほどでもないが、大きなバイクを自在に操っている実感はCBならでは。熟成のエンジンは絶品だ。
生き生きしてくるのはワインディングに持ち込んだとき。車高が上がっているぶん、ある程度荷重を与えたほうがスポーツ性を引き出しやすく、程よいバンク角でシートに体重を預けていると『ギューッ』と曲がっていく。そのときの足まわりのフィーリングはさすがオーリンズといったところで、ステップが接地するレベルでも吸収性を失わず乗り心地はいい。ブレーキのコントロール性も筆者レベルでは文句なしだ。
SPはSTD車に比べると足着きなど優しくない部分もあるが、そのぶん往年のビッグワンのDNAをより色濃く感じられると言っていい。CB1300は今も唯一無二だった。
上半身の前傾が少ないゆったりしたライポジが特徴。膝の曲がりも小さめで、殿様乗りが似合う。足着きも排気量の割には悪くない。車重があるので取り回しにはある程度の体力またはコツが必要だ。【身長183cm/体重81kg】
【TESTER ヨ】ビッグNK時代とともにバイク歴が始まり、かつて編集長を務めた姉妹誌ビッグマシン(現在は休刊)ではCB1300シリーズと長い付き合いだったという編集者。
【TESTER ヨ】ビッグNK時代とともにバイク歴が始まり、かつて編集長を務めた姉妹誌ビッグマシン(現在は休刊)ではCB1300シリーズと長い付き合いだったという編集者。
Honda CB1300 SUPER BOL D’OR SP
主要諸元■全長2200 全幅825 全高1215 軸距1520 シート高790(各㎜) 車重272㎏(装備)■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 1284cc 113ps/7750rpm 11.4kg-m/6250rpm 変速機6段 燃料タンク容量21L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●価格:204万6000円 ●色:白×赤、青×白
赤いフレームと金色の足まわりがSPの証。スーパーボルドールのハーフカウルの形状は、1980年代の名車CB1100Rをオマージュしている。
センタースタンドを標準装備。エンジン幅による迫力は現代のバイクにないものだ。サイレンサーは2017年以降に小型化し、野太いサウンドになった。
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