トライアンフモーターサイクルズジャパンは、並列3気筒エンジンを搭載するクルーザーの限定モデル『ROCKET 3 EVEL KNIEVEL(ロケットスリー イーベル・クニーヴェル)』を限定500台で発売することを発表した。
●文:ヤングマシン編集部(山下剛) ●外部リンク:トライアンフモーターサイクルズ
トライアンフの歴史を華々しく飾った一流スタントライダーの記念碑的モデル
トライアンフ・ロケット3は、2458cc水冷並列3気筒エンジンをクランク縦置きで搭載するメガクルーザーだ。このたび発表された特別仕様車は、1960年代から70年代にかけて活躍したスタントライダー、イーベル・クニーヴェル氏にちなんだものだ。
ロケット3イーベル・クニーヴェルには、ロケット3 Rとロケット3 GTの2車種ともに設定され、それぞれ世界限定250台、計500台が販売される。この特別仕様車の特徴は下記のとおり。
- 専用グラフィックを含むボディカラー
- 専用デザインの燃料タンク
- 専用のスタートアップアニメーション
- 専用デザインのレザーシート
- シリアルナンバープレート
- シリアルナンバー入り限定ブックレット
ボディカラーはマットブラックをベースとし、ピュアホワイトをアクセントカラーにしている。また、シートやラジエターサイドカバーには「Evel Knievel」の筆記体サインがレーザー刻印+ゴールドであしらわれる。
とくに燃料タンクは、アメリカ出身のクニーヴェル氏に敬意を表した星条旗をモチーフとするグラフィックが描かれる。これは彼がスタントライドの際に使ったバイク(T120など)着用したジャンプスーツ、この特別仕様車の存在感を不動のものとしている。また、フロントフェンダーの前部には星条旗で彩られた彼のイニシャル『EK』と筆記体サインがあしらわれる。このロゴマークはイグニッションをオンにしたときに液晶ディスプレイに表示されるウェルカムアニメーションにも採用されており、クニーベル氏へのリスペクトを示す専用のものとなっている。
限定モデルの証であるシリアルナンバーは、エンジンのカムカバーに刻印される。
ホワイトステッチが美しいレザーシートには、ゴールドで刺繍された「Evel Knievel」の筆記体サインと、トライアンフのメタルバッジがあしわられ、特別仕様車であることを強くアピールする。
また、イーベル・クニーヴェル氏の足跡や彼とトライアンフとの関係に詳しいスチュワート・パーカー氏が執筆したハードカバー本が付属する。これにはトライアンフのニック・ブロアCEOの署名とシリアルナンバーが入っている。
量産車最大の排気量を持つ縦置き3気筒モンスター
ロケット3は、並列3気筒エンジンを縦置きし、ドライブシャフトでリアタイヤを駆動する、量産車としてはめずらしいレイアウトを持つバイクだ。また、2458ccという排気量は量産車最大で、ロケット3の存在感と価値を強めている。
ロケット3には、RとGTの2グレードがあり、2024年型からそれぞれ『ストームR』、『ストームGT』に名称が変更された。ストームRはロードスターで、ロケット3のスタンダードグレードだ。ストームGTはツーリング性能を特化させた上級グレードで、ミッドコントロールのストームRに対してフォワードコントロールを採用する。また、ハンドルグリップ位置を125mm高くすることで、アップライトな乗車姿勢を作り出す。バックレスト付きパッセンジャーシート、グリップヒーターとシートヒーターを標準す装備することもストームGTの特徴だ。
サスペンションは、ショーワ製の47mm倒立フォークと油圧式リモートプリロードアジャスター付きフルアジャスタブルモノショック。ブレーキはブレンボ製で、フロントにM4.30スタイルマ モノブロックブレーキキャリパー、リアにM4.32 4ピストンモノブロックキャリパー。アルミ製フレームと片持ち式スイングアーム。フロント17インチ、リア16インチのアルミ鋳造ホイール。これらはRとGTも同一の仕様だ。
電子制御デバイスも充実しており、コーナリングABSとトラクションコントロール、ロード/レイン/スポーツ/カスタムの4種を持つライディングモード、クルーズコントロール、ヒルホールドコントロール、キーレスイグニッションなどを標準装備する。
初代ロケット3はBSAの手によるものだった
イーベル・クニーヴェル氏(1938年10月17日~2007年11月30日)は、アメリカを代表するスタントライダーで、トライアンフ・ボンネビルT120を使った大ジャンプで世界的な名声を獲得した。そのひとつが、1967年にアメリカ・カリフォルニア州で披露した大ジャンプで、ボンネビルT120を走らせて15台の自動車を飛び越えるビッグチャレンジを成功させている。
クニーヴェル氏は175回以上のスタントジャンプを披露し、ギネスブックによれば彼の骨折回数は400回以上に及ぶという(ただし正確な数字かは疑問が残るそうだ)。しかし失敗を恐れず挑戦を続けるクニーヴェル氏の姿は、後世のスタントライダーたちに力強い勇気を与えた(誤解を恐れずいえば、クニーヴェル氏とT120によるチャレンジがなければ、現在のフリースタイルモトクロス(FMX)は生まれなかったかもしれない)。
そして2024年、彼の息子であるケリー・クニーベル氏と、スタント界のレジェンド、ロビー・マディソン氏は、アメリカ・アイダホ州でボンネビルT120とロケット3でパレードランを披露している。
トライアンフ・ロケット3は、世界最大排気量の並列3気筒エンジンを搭載するメガクルーザーというだけでなく、トライアンフにとって歴史的伝統を受け継ぐモデルでもある。1960年代、大排気量かつパワフルな2気筒以上のシリンダーを持つエンジンのスーパーバイクとして、当時台頭してきた日本メーカーに対抗するために開発した並列3気筒エンジンを搭載する堂々たるフラッグシップだ。
しかしながら、元祖となるロケット3は、当時トライアンフがその傘下にあったBSAが1968年に発売したバイクにつけられた名だった。ただし3気筒エンジンを開発したのは、ノートンからトライアンフへ移籍した二人のエンジニアだ。そうした経緯を経て、トライアンフブランドからはロケット3と同時開発されたトライデントT150が発売された。この2台の基本的な車体構造は同じだが、トライデントのシリンダーがトライアンフ2気筒の伝統であるバーチカル(垂直)だったのに対して、ロケット3はやや前傾したシリンダーを採用するなど、細部が異なっている。
その後、トライアンフを吸収したBSAも経済危機により倒産。さらに紆余曲折を経て1980年代にトライアンフはバイク史から姿を消す。しかし1990年代に早くも復活し、新生トライアンフとして3気筒と4気筒を主軸にしたモデルラインナップで成功を収め、現在に至っている。
トライデントの名は1990年代の復活時に使用されていたが、ロケット3の名が復活したのは2003年。往年のロケット3とはシリンダー数こそ同じだが、2000cc以上の大排気量、シリンダーを進行方向に配列してクランクシャフトを縦置きにするレイアウトを持つクルーザーなど、まったく特性が異なるバイクとして生まれ変わった。現代のロケット3はトライアンフラインナップの幅の広さを如実に示すモデルであり、往年のような堂々たるフラッグシップとして確固たる地位と価値を確立している。
Triumph ROCKET 3 R / GT EVEL KNIEVEL
主要諸元■全長2365 全幅920[]940] 全高1125[1183] 軸距1677 シート高773[750](各mm) 車重318[321]kg■水冷4ストローク並列3気筒SOHC4バルブ 2458cc 182ps/7000rpm 22.9kg-m/4000rpm 変速機6段 燃料タンク容量18L■タイヤサイズF=150/80R17 R=240/50R16 ●価格:342万9000円[349万9000円] ●色:黒×白 ※[ ]内はGT
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