8月24・25日に開催された2024年MFJ全日本ロードレース選手権シリーズ第5戦、もてぎ2&4レース。最高峰クラスJSB1000でポールポジション&勝利を手にしたのは、今シーズンからDUCATI Team KAGAYAMAに移籍した水野涼だった。
●文/写真:ヤングマシン編集部(佐藤寿宏)
全日本ロードレース最高峰クラスで外国車が優勝したのも初
全日本ロードレース選手権シリーズ後半戦のスタートとなる第5戦もてぎ2&4レースで、ついにDUCATI Team KAGAYAMAの水野涼が優勝しました。それも、ぶっちぎり独走での勝利ですからね。水野はもちろん、DUCATIを全日本で走らせた加賀山就臣監督も感無量でしょう。予選では、今季2度目のポールポジションを獲得しましたが、前回はセカンドベストでのものでしたので、トップタイムでのポールポジションは今回が初めてでした。
レースでは、ホールショットこそ野左根航汰に奪われるものの、オープニングラップのダウンヒルストレートでトップに立つと、そのままペースを上げ後続を引き離していき独走でチェッカーフラッグを受けました。1967年に始まった全日本ロードレースの歴史の中で、最高峰クラスで外国車が優勝したのは初めてという歴史的な勝利にもなりました。
ドゥカティのファクトリーPanigale V4Rを持ち込み、当初は走らせるだけで精一杯というところからスタート。そんな状態ながら表彰台に立ち続けた水野は、前半戦を終え、鈴鹿8耐に参戦したことで、事前テストを含めて走らせる時間が長かったことが、チームとしても水野としてもドゥカティをより理解することにつながりました。鈴鹿8耐を終えた時点で、後半戦に向けて良い経験になったと語っていましたし、その最初のレースで見事に有言実行を果たしました。この勝利で一気にDUCATI+水野に流れが傾くことになる可能性は高いでしょう。
残念ながら台風10号の影響を受け、第6戦オートポリス(9月7日・8日)に向けた事前公開テストは中止になりましたが、初めて走るオートポリスでもドゥカティは速さを見せそうです。今回もヤマハファクトリーの中須賀克行と岡本裕生との戦いになるのは間違いありません。今シーズンは、ETSのCN燃料を使って2シーズン目となり、ヤマハファクトリーもうまく対応し、昨年より速く走っています。実際にコースレコードの更新や、レースタイムも上がっています。オートポリスでも2019年以来となるコースレコードの更新が期待されるところです。
第5戦を終え、JSB1000クラスは、中須賀、水野、岡本の3人しか表彰台に上がっていません。これをHonda CBR1000RR-Rのキット車を走らせる野左根航汰、高橋巧、名越哲平、岩田悟や、スズキで孤軍奮闘する津田拓也も表彰台の一角を崩そうとチャレンジしています。また、今年からダンロップタイヤを実戦開発している長島哲太の走りも注目です。とにかくすごい走りをしていますので。
今週末(9月7日・8日)に大分県・オートポリスで行われる全日本ロードレース第6戦は、JSB1000クラスのみならず、ST1000クラスも2レース制で行われます。土曜日は公式予選とJSB1000とST1000のレース1、JP250と3クラスの決勝を見ることができます。日曜日は、とJSB1000とST1000のレース2、J-GP3とST600の決勝があります。年に一度の九州大会、ぜひ足を運んでみてください。
2025年シーズン、2&4レースはどうなる?
もてぎ2&4レースのときにスーパーフォーミュラが2025年シーズンの暫定カレンダーを発表しました。その前に、来年も4月にF1を開催することは変わらないため、また3月初旬に鈴鹿2&4レースを開催するといううわさが回ってきていました。今年の鈴鹿2&4レースでは、事前テストを含め、レースウイークまで、どれだけのライダーが転倒、負傷し、マシンが壊れたか。それも経験豊富なライダーばかりが参戦しているにも関わらずですからね。結局足並みがそろわないのであれば、安全性を考慮してやるべきではないという意見が大方だったにも関わらず…。
結局、スーパーフォーミュラの暫定カレンダーを見ると、3月の鈴鹿、そして4月のもてぎも、2レース制で行うとなっています(本稿執筆時点)。また、ここ数年、もてぎで8月に2&4レースが開催されていましたが、これもなくなっていました。すなわち2025年シーズンは2&4レースが開催されないことに!? コロナ禍で2020年は開催されませんでしたが、それまでは、2輪と4輪の国内最高峰レースが同日に見られるレースとして毎年、鈴鹿で開催されてきました。
確かにお互いやりにくい部分もあったのは事実ですが、モータースポーツという一つのくくりとして、もてぎやオートポリスでも開催され、選手や関係者、レースファンも2輪と4輪の交流の場として重要な役割を果たしていたのですが……。近いうちに全日本ロードレース選手権の暫定カレンダーも発表されると思いますが、レース数がどうなるか気になるところです。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(レース)
今シーズンに続き富樫虎太郎選手を起用、新加入は木村隆之介 元MotoGPライダーの中野真矢さんが率いるレーシングチーム「56RACING(56レーシング)」が、2025年のレース活動概要を発表した。 […]
全日本ST1000とASB1000の両カテゴリーを制す! 開幕2連勝を飾り、常にポイントリードし最終戦を待たずにチャンピオンを決めた全日本ST1000クラスに比べ、ARRC ASB1000クラスは、ポ[…]
機密事項が満載のレーシングマシンたち バイクムック”RACERS(レーサーズ)”は、「いま振り返る往年のレーシングマシン」がコンセプト。それぞれの時代を彩った、レーシングマシンを取り上げている。 現在[…]
ポイントを取りこぼしたバニャイアと、シーズンを通して安定していたマルティン MotoGPの2024シーズンが終わりました。1番のサプライズは、ドゥカティ・ファクトリーのフランチェスコ・バニャイアが決勝[…]
プロジェクトの苦しさに相反する“優しい雰囲気” 全日本ロードレース最終戦・鈴鹿、金曜日の午前のセッション、私はサーキットに到着するとまず長島哲太のピットの姿を撮りに行った。プレスルームで初日のスポーツ[…]
最新の関連記事(ドゥカティ)
ミドルSSの究極を目指しフルチェンジ パニガーレはドゥカティが誇るスーパーバイクで、2018年からはV型4気筒エンジンを搭載し、その戦闘力を高めるとともに車名がパニガーレV4となった。そして2020年[…]
スクランブラー誕生10周年。スタンダードモデルと特別仕様車を発表 ドゥカティ スクランブラーは、2014年に登場したネオクラシックシリーズで、1960~1970年代に人気を博したモデルをモチーフとした[…]
熟成度が深まったアドベンチャーツアラー ムルティストラーダはドゥカティのアドベンチャーツアラーで、2021年のフルモデルチェンジで1158cc水冷V型4気筒エンジン『V4グランツーリスモ』を搭載した。[…]
ライダーを様々な驚きで包み込む、パニガーレV4S 5速、270km/hからフルブレーキングしながら2速までシフトダウン。驚くほどの減速率でNEWパニガーレV4Sは、クリッピングポイントへと向かっていく[…]
駒井俊之(こまい・としゆき)/1963年生まれ。バイクレース専門サイト「Racing Heroes」の運営者。撮影から原稿製作まで1人で行う。“バイクレースはヒューマンスポーツ”を信条に、レースの人間[…]
人気記事ランキング(全体)
4気筒CBRシリーズの末弟として登場か EICMA 2024が盛況のうちに終了し、各メーカーの2025年モデルが出そろったのち、ホンダが「CBR500R FOUR」なる商標を出願していたことが判明した[…]
2025年こそ直4のヘリテイジネイキッドに期待! カワサキの躍進が著しい。2023年にはEVやハイブリッド、そして2024年には待望のW230&メグロS1が市販化。ひと通り大きな峠を超えた。となれば、[…]
一定以上のスピードの車両を自動的に撮影する「オービス」 結論から言うと、基本的にバイクはオービスに撮影されても捕まらない。そもそもオービスはバイクを取り締まるつもりがない。ただし警察にもメンツがあるか[…]
CB750/900Fと並んで進んでいた、ホンダが大攻勢に賭けた初の新エンジン! どのクルマメーカーもお手上げだったマスキー法という排気ガス規制をクリアして、ホンダが世界に認められたCVCCエンジン開発[…]
一度掴んだ税金は離さない! というお役所論理は、もういいでしょう 12月20日に与党(自民党と公明党)が取りまとめた「令和7年度税制改正大綱」の「令和7年度税制改正大綱の基本的な考え」の3ページ目に「[…]
最新の投稿記事(全体)
どんなUber Eats配達員でも必ず持っている装備といえば、スマートフォン。これがなければ、仕事を始めることすらできません。 そんなスマートフォンですが、太陽が強く照っている日に使うと画面が真っ黒に[…]
今シーズンに続き富樫虎太郎選手を起用、新加入は木村隆之介 元MotoGPライダーの中野真矢さんが率いるレーシングチーム「56RACING(56レーシング)」が、2025年のレース活動概要を発表した。 […]
全日本ST1000とASB1000の両カテゴリーを制す! 開幕2連勝を飾り、常にポイントリードし最終戦を待たずにチャンピオンを決めた全日本ST1000クラスに比べ、ARRC ASB1000クラスは、ポ[…]
一度掴んだ税金は離さない! というお役所論理は、もういいでしょう 12月20日に与党(自民党と公明党)が取りまとめた「令和7年度税制改正大綱」の「令和7年度税制改正大綱の基本的な考え」の3ページ目に「[…]
ヤマハの最先端技術の結晶、それがYZF-R1だ 今からちょうど10年前の2014年11月。イタリアはミラノで開催されたEICMAにおいて、7代目となるヤマハのフラッグシップ“YZF-R1”が華々しくデ[…]
- 1
- 2