
●文:ヤングマシン編集部(ピーコックブルー)
アイドリングストップって何?
“アイドリングストップ”とは、停車時のアイドリングを自動停止する機能です。
ガソリンなどを燃焼させて稼働するエンジンは、一度停止させてしまうと再始動に時間がかかるため、停車中はエンジン回転数を低く保つアイドリング状態で待機させるのが一般的です。
しかし、アイドリング中もわずかに燃料は消費され、排気ガスも大気に放出されます。このムダとも言えるアイドリング時間を極力少なくするための機能が、アイドリングストップです。
クルマでは2010年ころから本格実装が始まりましたが、エンジン性能が高まったことなどにより、近年は搭載される車種が減りつつあります。
では、バイクのアイドリングストップ機能についてはどうなのでしょうか?
国産バイク初のアイドリングストップ搭載車は?
国内で初めてアイドリングストップ機能が搭載されたバイクは、1999年にホンダから発売された50cc原付バイク「ジョルノクレア デラックス」です。
ホンダは、アイドリングストップ機能を搭載するために、発電機と一体化させた高効率なスターターモーターを開発。エンジン始動から発進までの時間を0.9秒に抑えることで、通常のエンジンと変わらない操作感覚を実現しました。
肝心の燃費性能については、非アイドリングストップ搭載モデルに比べ、5.1%も向上させることに成功しました。
ホンダはその後も、アイドリングストップ機能が備わる同型のエンジンを搭載した「ダンク/タクト」などを発売。さらに「PCX/リード125/ディオ110」などにもアイドリングストップ機能を搭載しました。
しかし他のバイクメーカーからは、その後しばらくアイドリングストップ機能搭載車は発売されませんでした。
ホンダ以外でアイドリングストップ機能付きバイクが登場したのは、2018年にモデルチェンジしたヤマハの50cc原付「 ビーノ/ジョグ」でした。
しかし、ビーノ/ジョグのエンジンや車体の基本部分はホンダ製であるため、実質的に当時アイドリングストップを採用していたのはホンダのみということになります。
その後ヤマハは、2021年にモデルチェンジした125ccスクーター「NMAX」に自社製のアイドリングストップを搭載。スズキも2022年10月に発売した「バーグマンストリート125EX」にアイドリングストップを初搭載しました。
50cc原付バイクの延命には必要不可欠だった
このように、バイクにおけるアイドリングストップの第一人者はホンダだと言えます。
ところで、国産バイク初のアイドリングストップ機能搭載車となる「ジョルノクレア デラックス」が登場した1999年当時は、まだ排ガス規制が緩く、アイドリングストップ機能は必須ではありませんでした。
しかし、後にヤマハが50cc原付バイクの生産から撤退したように、コストや機能の制約から触媒の追加が難しい50ccエンジンで排ガス量を抑えるには、アイドリングストップ機能が不可欠でした。
ホンダが開発したアイドリングストップ機能は、50ccバイクを現在まで延命させた立役者とも言えるでしょう。
その50cc原付バイクは、2025年から原付二種のエンジン出力を抑える形で継続販売される見込みで、アイドリングストップ機能自体はほとんどの原付二種クラスのスクーターに搭載されています(2024年現在)。
なお、バイクでの採用例が増えているとはいえ、バイク全体で見ればアイドリングストップ機能は主流ではありません。
アイドリングストップ機能が原付クラスのスクーターに積極的に採用されているのは、この機能を搭載したエンジンを複数車種に流用しやすい利点があることに加え、市街地走行に多く利用されるスクーターがもっともアイドリングストップの効果が出やすいためと言えるでしょう。
もしこれから(スクーター以外の)バイクにアイドリングストップ機能を追加するとなると、 限りあるスペースを圧迫するうえ、バイクによっては大幅な設計変更が必要になります。
そもそも、スクーターに比べて市街地走行の頻度が少ない(スクーター以外の)バイクでは、アイドリングストップの恩恵が受けにくいため、車両価格を引き上げるだけの結果になりかねません。
カワサキは、今後発売予定の「ニンジャ7ハイブリッド/Z7ハイブリッド」にアイドリングストップを採用していますが、これはモーターで発進加速できることからアイドリングの必要がないためです。
クルマでも同様に、ハイブリッド車にはアイドリングストップ機能が備わっているものの、純ガソリンエンジン車では採用例が減っています。
今後バイク全体にアイドリングストップ機能が広まるかどうかについては不明ですが、現状では市街地走行が多いスクーター用の装備となっています。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(メカニズム/テクノロジー)
いまや攻めにも安全にも効く! かつてはABS(アンチロックブレーキシステム)といえば「安全装備」、トラクションコントロールといえば「スポーツ装備」というイメージを持っただろう。もちろん概念的にはその通[…]
油圧ディスクブレーキだけど、“油(オイル)”じゃない いまや原付のスクーターからビッグバイクまで、ブレーキ(少なくともフロントブレーキ)はすべて油圧式ディスクブレーキを装備している。 厳密な構造はとも[…]
[A] 前後左右のピッチングの動きを最小限に抑えられるからです たしかに最新のスーパースポーツは、エンジン下から斜め横へサイレンサーが顔を出すスタイルが主流になっていますよネ。 20年ほど前はシートカ[…]
ミリ波レーダーと各種電制の賜物! 本当に”使えるクルコン” ロングツーリングや高速道路の巡航に便利なクルーズコントロール機能。…と思いきや、従来型のクルコンだと前方のクルマに追いついたり他車に割り込ま[…]
3気筒と変わらない幅を実現した5気筒エンジンは単体重量60kg未満! MVアグスタはEICMAでいくつかの2026年モデルを発表したが、何の予告もなく新型5気筒エンジンを電撃発表した。その名も「クアド[…]
人気記事ランキング(全体)
超高回転型4ストローク・マルチのパイオニアはケニー・ロバーツもお気に入り 今回ご紹介するバイクは1985年春に登場した超高回転型エンジンを持つヤマハFZ250 PHAZER(フェーザー)です。 フェー[…]
KTMの進化ポイントを推測する 第17戦日本GPでマルク・マルケスがチャンピオンを獲得した。ウイニングランとセレブレーションは感動的で、場内放送で解説をしていたワタシも言葉が出なかった。何度もタイトル[…]
フルレプリカのフォルムが遂にリッタークラスへ及びヤマハもラインナップ! 1980年代後半になると、スポーツバイクがレプリカとカテゴリーで区別されるほど、レーシングマシン直系にまでエスカレートしてきた中[…]
フレディ・スペンサーが絶賛! 軽さと「フォーギビング」な安定性を評価 伝説のライダー、フレディ・スペンサーがHSR九州でCB1000Fをガチ走行し、そのインプレッションを語っている。スペンサーは、CB[…]
輝かしい歴史を持つXT500は、なんと2002年まで生産 そもそもXT500は、1976年にヤマハが初めて作った4ストロークのビッグシングル搭載のトレールバイク。2スト全盛ともいえる時期に、空冷4サイ[…]
最新の投稿記事(全体)
ボルドールカラーのCB1000Fがアクティブから登場 アクティブが手掛けるCB1000Fカスタムが発表された。CB-Fといえば、純正カラーでも用意されるシルバーにブルーのグラフィックの、いわゆる“スペ[…]
“鈴菌”と呼ばれて 二輪と四輪を両方とも継続的に量産しているメーカーは、世界を見渡してもホンダ、BMW、そしてスズキの3社のみだ。1920年(大正9年)に個人経営だった織機向上が鈴木式織機株式会社へと[…]
ナナハン並みの極太リヤタイヤに見惚れた〈カワサキ GPZ400R〉 レーサーレプリカブーム真っ只中の1985年。技術の進化に伴い、各社はレースで培ったテクノロジーをフィードバックさせたモデルを多く打ち[…]
オフロードでASAはプラスに感じられる場面が多い! 驚いたのは写真の緑の機体・オートマチックのASAを積んだR1300GS ツーリングASAのオフロード性能。微妙なクラッチ操作を多用するオフロードでA[…]
前バンクはクランクリードバルブ、後バンクにピストンリードバルブの異なるエンジンを連結! ヤマハは1984年、2ストロークのレプリカの頂点、RZシリーズのフラッグシップとしてRZV500Rをリリースした[…]

![ホンダ「リード125」の写真|[50cc原付バイク生産終了へ] 現在まで延命できたのは“アイドリングストップ”機能のおかげ?](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/06/photo-1-6-768x575.jpg?v=1719480621)
![停車するバイクの写真|[50cc原付バイク生産終了へ] 現在まで延命できたのは“アイドリングストップ”機能のおかげ?](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/06/photo-2-6-768x576.jpg?v=1719480518)































