三ない運動に関して、「4+1ない運動*」「かながわ新運動」を経て「スタートかながわ」へと移行し、現在は高校生が自由に免許を取ってバイクに乗れる神奈川県。全日制の県立高校でバイク通学を許可している県立津久井(つくい)高等学校に、その背景と理由、安全運転への取り組みや許可条件、そこにある課題について尋ねた本連載。最終回では、バイク通学を始める際の地域や保護者の声、今後の展開などを尋ねた。
*4+1ない運動:1980年、神奈川県高等学校交通安全運動推進会議が提唱した「免許を取らない/車をもたない/車を運転しない/車に乗せてもらわない」プラス「子供の要求に負けない」という運動。
●文:ヤングマシン編集部(田中淳麿)
バイクだけでなく、すべての通学手段がフラット ――バイク通学以外の安全教育、とくに交通安全に関する考え方と具体的な取り組みについて教えてください。 熊坂:バイク通学以外で言うと、自転車通学の生徒も50[…]
駅から学校へのバス交通費も切実な問題
――バイク通学に関して、地域や保護者/PTAとのやり取りについて教えてください。
熊坂:4年前にバイク通学を始めるにあたって、地域については近隣の自治会などを訪ねてお話をさせていただきました。やはり地域の方の理解が必要ですし、感触を知っておきたかったのです。
結果、反対の声はありませんでした。逆に言われたのが、「学校の近くまで乗ってくる生徒がいるぐらいなら、許可して校内へ入れるべき」「これだけバスの便が悪い地域だから許可すべき」といった意見でした。
――保護者やPTAなど、直接生徒に関わる方の声はどうでしたか?
舟久保:クレームなどはまったくなかったです。バイク通学を認める最後の段階で許可式というのがあって、保護者の皆さんにも参加いただいて、バイク通学のルールなどを理解していただくのですが、「これはこうじゃない?」といった意見はほとんどありませんでした。親御さんたちとしても、危険性や利便性を考えたうえでお子さんのバイク通学を望んでいる方が多いと感じました。
――橋本駅から津久井高校まで、バス代が片道520円/往復1040円とのことですが?
熊坂:交通費は切実な問題です。バイク通学に踏み切る前は、スクールバスの運行についてバス会社に話に行ったこともあります。昔はいくつかの県立高校でスクールバスを回してくれていたことがあったのですが、今はありません。バス会社としてはもう対応できないということのようです。
市内には他にも高校がたくさんありますし、本校だけ通学費用の助成金を、というのも簡単ではありません。
今後は通学条件の緩和も?
――話を変えます。神奈川県には三ない運動はありませんが、生徒のプライベートでのバイク利用の実態について把握はされていますか?
舟久保:通学手段としては原付しか認めていませんが、プライベートで乗っている生徒はかなり多いと思います。アルバイトに行ったり遊びで使ったり、それこそツーリングが趣味で排気量の大きなバイクに乗っている生徒もけっこういると思います。調査やアンケートのようなものはとくにしていません。
――ちなみに、アルバイトをするにあたって許可証などは必要ですか?
熊坂:届け出制にはしていますが、許可制ではありません。
――今後の動きや展開について教えてください。
舟久保:バイク通学を始めた当初はわりと内々でやっていたのが、座学/実技講習会などで外部と連携できるようになってきているので、そこをさらに拡充できたらと思っています。形になってきているので、場合によっては通学条件の住環境に関するところをもう少し緩和してもいいかもしれないなとも考えています。
――条件緩和とはどれぐらいまでという感覚でしょうか?
舟久保:現在は緑区外(学校は緑区内にある)に住んでいる生徒に限定されていますが、緑区内に住んでいるけどちょっと登校しにくい生徒についても、バイク通学できるようにしてあげるとかですね。
熊坂:もちろん駐めるスペースの問題もありますけどね。
――ありがとうございました。
※掲載内容は取材時点(’23年12月)のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(三ない運動)
[1] 7年目の高校生講習も秩父地域からスタート 埼玉県内を6地域に分けて全8回で開催される「令和7年度 高校生の自動二輪車等の安全運転講習」が2025年も始まった。 第1回目の講習会は、6月15日に[…]
※特定原付:’23年7月に施行された新しい車両区分「特定小型原動機付自転車」について国交省が定めた略称。特定小型原付とも呼称される。 学校に戻ってから内容を伝える“伝達講習会” この取り組みは、高校生[…]
自分と他人の命を守ること コロナ禍開けの2023年は県内の二輪車交通事故が2331件と微増したが、そのような状況でも県内高校生の二輪車事故は減少傾向にあり、2023年は2022年に続いて死亡事故が発生[…]
スクールバス運行の経済的な限界 廃校や学区の統合により、児童や生徒の通学環境は年を追うごとに悪化している。菅政権下のこども庁(現こども家庭庁)では、スクールバスの全国的な展開も期待されたが、2023年[…]
バイクだけでなく、すべての通学手段がフラット ――バイク通学以外の安全教育、とくに交通安全に関する考え方と具体的な取り組みについて教えてください。 熊坂:バイク通学以外で言うと、自転車通学の生徒も50[…]
最新の関連記事(交通/社会問題)
新基準原付、その正体とは? まずは「新基準原付」がどんな乗り物なのか、正しく理解することからはじめよう。これは2025年4月1日から、第一種原動機付自転車(原付一種)に新たに追加される車両区分だ。 導[…]
トランプ関税はバイクの世界にも影響があるのか、国内各メーカーに聞いてみました 世界中に吹き荒れている「トランプ関税」の深刻な影響。 特に、自動車に課されることになった15%の相互関税は日本の自動車メー[…]
暫定税率を廃止するなら代わりにって…… 与野党が合意して、11月からの廃止を目指すことになったガソリン税の暫定税率。 このコラムでも数回取り上げてきましたが、本来のガソリン税28.7円/Lに25.1円[…]
松戸市〜成田市を結ぶ国道464号の発展 かつて、千葉県の北総地区は高速道路のアクセスが今ひとつ芳しくなかった。 常磐自動車道・柏インターや京葉道路・原木インターからもちょっとばかり離れているため、例[…]
歩行者が消える?超危険な「蒸発現象」による事故を防ぐ方法 2024年10月、岡山県内の道路である現象が原因となる交通事故が起きました。横断歩道を渡っていた高齢の女性をクルマがはねた、という事故です。ク[…]
人気記事ランキング(全体)
どうする? スクーターのエンジンがかからない ※これはまさに、筆者が直面した実話です。我が家のスクーター(TODAY)に乗ろうと思って、車庫から引っ張り出しました。ちょっと久しぶりですね。エンジンをか[…]
カスタムスピリットから生まれた英国ブランド まずMUTT Motorcyclesというブランドについておさらいしておこう。2016年、英国バーミンガムでカスタムビルダーのWill RiggとBenny[…]
“思い出の1台”に乗りたい バイクメーカーがニューモデルを開発する際は、ユーザーがそれを受容できるか、あるいは新たなマーケットを作り出せるかが重要。レーサーレプリカもネイキッドも、それがウケると分かっ[…]
日本の免許制度を考慮してナナハン4気筒と同時開発 GS750の弟分。世間にはそういう見方をする人がいるけれど、’76年から発売が始まったGS400を弟分と呼ぶのは、少々語弊があるのかもしれない。なんと[…]
随所に専用部品を投入したZシリーズ初のR仕様 Z1000の派生/上級機種として’78年に登場したZ1‐Rは、評価がなかなか難しいモデルである。まず当時の流行だったカフェレーサーの手法を取り入れながら、[…]
最新の投稿記事(全体)
随所に専用部品を投入したZシリーズ初のR仕様 Z1000の派生/上級機種として’78年に登場したZ1‐Rは、評価がなかなか難しいモデルである。まず当時の流行だったカフェレーサーの手法を取り入れながら、[…]
125ccクラス 軽さランキングTOP10 原付二種は免許取得のハードルも低く、手軽に楽しめる最高の相棒だ。とくに重要なのは「軽さ」だろう。軽ければ軽いほど、街中での取り回しは楽になるし、タイトなワイ[…]
“思い出の1台”に乗りたい バイクメーカーがニューモデルを開発する際は、ユーザーがそれを受容できるか、あるいは新たなマーケットを作り出せるかが重要。レーサーレプリカもネイキッドも、それがウケると分かっ[…]
用品から観光までバイクライフが広がる一日 「茶ミーティング」の最大の魅力は、その出展ブースの多様性にある。国内外のオートバイメーカーや用品メーカー、卸商といった我々ライダーにはお馴染みの企業が多数参加[…]
日本の免許制度を考慮してナナハン4気筒と同時開発 GS750の弟分。世間にはそういう見方をする人がいるけれど、’76年から発売が始まったGS400を弟分と呼ぶのは、少々語弊があるのかもしれない。なんと[…]