2025年11月から原付一種(50cc以下)のバイクも最新の排出ガス規制が適用され、現行のままでは継続生産ができなくなる。すでに125cクラスのエンジン出力を制限した「新原付」の導入は確定的だ。そんななか、ホンダは50ccエンジンの生産終了を検討しているという。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ)
次期タクトやジョルノは開発中止か
現行の排出ガス規制に適合した原付一種(50cc)の継続生産は2025年10月末までとなるが、その後の展開が見えてきたのでお届けしたい。
既報の通り、現行の原付二種モデルのうち110~125cc程度の車両をベースに、最高出力4kWの制限を施した“新基準原付(新原付)”を導入していく法改正はほぼ確定と言っていい。この車両を従来通り原付免許で運転可能とすることが、2023年末に警察庁が管轄する有識者検討会で報告されている。
そこで気になるのは、現行50ccモデルの行方と、新原付のベースモデルは何になるのか、ということ。
50ccモデルについては、ヤマハの日髙社長がすでに会見でホンダ製50cc(ビーノおよびジョグ)の廃止を明言し、新原付として125ccエンジンのヤマハ製品を日本に投入するとした。ヤマハ製ビジネススクーターのギア(台湾生産)については言及されていないが、こちらも終了と見るのが自然だろう。
スズキは125ccベースの新原付を開発する構えで、50ccエンジンモデルは終了へ向かう動きも垣間見える。ジャパンモビリティショー2023では電動バイクのeチョイノリやe-POを参考出品しており、こちらも50ccエンジン車の代替モデルになっていくと見られる。
そして今回、新たな動きが見えてきたのはホンダだ。新原付制度の導入が決定的になる以前は、2025年以降も50cc継続(タクトやジョルノの後継?)の方針もあったというが、現在は50ccエンジンの生産終了を検討しているという。しかも、かなり高い可能性での検討だ。
ホンダの50ccエンジン車ラインナップは、タクト/ジョルノ/ダンクといったパーソナルユース想定のスクーターに加え、スーパーカブ50/同プロ/クロスカブ50、さらにベンリィやジャイロなどのビジネススクーターと全10機種(バリエーションモデル含む)が揃う。それぞれ、どうなっていくのだろうか?
ホンダはどんな代替モデルを用意する?
まずスクーターに関しては、ディオ110ベースの新原付などである程度は代替可能だろう。とはいうものの、世界標準になる110~125ccクラスは2人乗りも想定した車体がベースになるためどうしても大柄になり、車重もそれなり。加速性能は現行50ccモデル比で不足ないにしても、地方では小柄なお年寄りが日常のアシとして原付を利用する、なんていうケースも多く見られることから、本当に110~125ccベースの新原付で50ccモデルを代替しきれるかというと、そんなことはないだろう。
電動バイクのEM1 e:についても50ccエンジンモデルに較べればやや大柄で、どちらかというと原付二種クラスに近い車格。また、充電の運用などは居住地域や利用距離に大きく左右されることから、まだまだエンジン車のような使い勝手とは言えまい。
となれば、採算はともかくとしてユーザーメリットを考えたとき、110cc程度のエンジンを搭載した日本専用モデルの開発が望ましい。企業の基礎体力を考えても、そんなことができるのはホンダだけだ。「人や社会の役に立ちたい」「人々の生活の可能性を拡げたい」といった、ホンダならではのフィロソフィーにも合致するはず。
逆に、電動バイクでかなり代替できそうなのはビジネススクーターだ。できそうというか、すでにベンリィ/ジャイロ/ジャイロキャノピーに『e:』がラインナップされ、郵政や新聞配達などで活躍中だ。今は都市部が中心だが、利用エリアが限られ、日々の走行距離が読めるビジネスユースでは、交換式バッテリーを採用した電動バイクのメリットが生きる。
最後にスーパーカブだ。スーパーカブという歴史ある車両は、初代C100が50ccの原付モデルだったこともあって、ホンダ原付の代表格といえるはず。現在はスーパーカブ110とベースを共有し、グローバルでは110のほうが標準になっていることから、110を出力制限した新原付の開発は容易な部類に入るだろう。しかし、けっして少なくないスーパーカブファン(カブ主)たちからは惜別の視線が送られるに違いない。これにホンダがどう応えるのか……。
スクーターやビジネススクーターに比べると、ユーザーメリットというよりは心情的な話になってしまうが、スーパーカブとはそういう存在でもあるのだ。
新原付カテゴリーについては今後も動向を注視し、続報があり次第お伝えしていく。
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