
2023年の1月、日本自動車工業会は「自治体の二輪車駐車場施策に関する調査」報告書を公表している。今回は調査結果についての筆者の主観を基に、「誰に何が求められているのか」について言及しておきたい。
●文:ヤングマシン編集部:田中淳磨(輪)
“自治体の二輪車駐車場施策に関する調査”報告書が公開
同様の調査は7年ほど前にも発表されていたが、その内容はなかなかに衝撃的だった。ひと言で表すならば「自治体の関心が低すぎる」のだ。
調査対象は東京23区、東京都下の7市、全国の政令指定都市20市の計50団体となる。バイク駐車場の設置に向けて積極的に動いている自治体もあるが、自動二輪車駐車場整備の情勢について「自動二輪車の駐車車両が少なく、駐車場が必要との考えに至っていない(28%)」、毎年行われている国交省の呼びかけについても「現在、とくに取り組みは検討していない。(48%)」という残念な結果も。
業界活動を通じて、’06年に駐車場法に自動二輪車(50cc超)を含めてからはや17年、バイク駐車場の数は右肩上がりに増えては来たものの、それは元々、バイク駐車場というものがほとんどなかったからだ。
オートバイ議員連盟による勉強会といった場でも国会議員の前で数々の陳情が行われてきたが、いまや駐車場法を所管する国土交通省の呼びかけにも期待はできないのかもしれない。
’16年にはオートバイ議員連盟に所属していた小池百合子氏が東京都知事に就任し、そうしたパイプから都所有施設へのバイク駐車場の設置も実現はしている。しかし調査結果では東京23区のうち7つの自治体は「自動二輪車の駐車場施策を行っている部署はない」とも回答しているのだ。
〈図1〉「地域に自動二輪車駐車場を増やすには、どのような要件が満たされることが必要ですか?」への自治体の回答(選択肢・複数回答あり) ※東京都の7市とは、立川市/武蔵野市/府中市/調布市/町田市/福生市/多摩市であり、政令指定都市の20市とは、札幌市/仙台市/さいたま市/千葉市/横浜市/川崎市/相模原市/新潟市/静岡市/浜松市/名古屋市/京都市/大阪市/堺市/神戸市/岡山市/広島市/北九州市/福岡市/熊本市となっている。
’21年4月に条例改正を施行し、自転車駐車場に自動二輪車まで受け入れできるようになった東京都江東区。
自治体側も情報不足 伝えるための仕組みを考える必要がある
とは言え、悲観ばかりはしていられない。誰が何をすべきかのヒントは調査結果の中にも見えている。
注目すべきは「自動二輪車駐車場整備を推進するための要件」についての回答だ(図1参照)。半数にあたる25の団体が「地域のどこに自動二輪車駐車場が必要か、具体的な情報が必要」と回答しているのだ。これは地域課題を改善する上で最も重要なことである市民の声が行政に届いていないということを表している。
これまでにも、二輪業界団体等からバイク駐車場がどこに欲しいのかという調査結果やデータは公表されているが、現状では当事者としては動けないということだろう。駐車場はやはり地域の課題であり、国がどう示そうと、個々の自治体で自分事として受け止められなければ、実効的な施策は動かない。
市民(ライダー/バイク利用者)が行政にその声をどう具体的に届けるのか、その仕組みを整えることがまずは必要ではないだろうか。市民の声こそが自治体の原動力であり、二輪業界はその仕組み作りに本腰を入れて注力すべきだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事([連載] 2輪車利用環境改善部会)
原付バイク安全運転スキルアップ講習会について 本講習会は原付バイクに特化した安全運転講習会で、原付利用者の交通安全意識と安全運転技能の向上を図り、交通事故を防止しようという狙いで2024年から開始され[…]
熊本市繁華街、バイク駐車場の実態 熊本一の繁華街である下通(しもとおり)商店街の周辺を歩いたが、目につくのは自転車駐輪場への125cc以下の受け入れが進んでいること。とくにアーケードから1本入った路地[…]
講習で学ぶカーボンニュートラルと電動モビリティの関係 今回の電動二輪車技術・安全運転講習会は、バイク通学の実施や「二輪車競技部」の部活動で知られる熊本県立矢部高等学校の生徒を対象に行われた。 循環型社[…]
京王線沿線には14か所のバイク駐車場が 京王電鉄は、前身となる京王電気軌道株式会社が1910年(明治43年)に設立され、首都圏では東武鉄道、京浜急行電鉄に次ぐ長い歴史を持つ会社だ。 鉄道の駅は公共交通[…]
「乗せて指導する教育」を実施、バイク通学者が多い熊本県立矢部高校 熊本県の県立矢部高等学校は、原付免許取得とバイク通学を2年生以上の生徒に許可している。「乗せて指導する教育」を、長年にわたり続けている[…]
人気記事ランキング(全体)
カワサキ500SSマッハⅢに並ぶほどの動力性能 「ナナハンキラー」なる言葉を耳にしたことがありますか? 若い世代では「なんだそれ?」となるかもしれません。 1980年登場のヤマハRZ250/RZ350[…]
マーヴェリック号の燃料タンク右側ステッカー エンタープライズに配属された部隊 赤いツチブタは、「アードバークス」の異名を誇る米海軍「第114戦闘飛行隊(VF-114)」のパッチ。1980年代には第1作[…]
※この記事は別冊モーターサイクリスト2010年11月号の特集「YAMAHA RZ250伝説」の一部を再構成したものです。 ヤマハ RZ250のエンジン「2ストロークスポーツの純粋なピーキー特性」 ヤマ[…]
カラーバリエーションがすべて変更 2021年モデルの発売は、2020年10月1日。同年9月にはニンジャZX-25Rが登場しており、250クラスは2気筒のニンジャ250から4気筒へと移り変わりつつあった[…]
公道モデルにも持ち込まれた「ホンダとヤマハの争い」 1980年代中頃、ホンダNS250Rはヒットしたが、ヤマハTZRの人気は爆発的で、SPレースがTZRのワンメイク状態になるほどだった。 しかしホンダ[…]
最新の投稿記事(全体)
カワサキW800(2017) 試乗レビュー この鼓動感は唯一無二。バイクの原点がここに 1999年2月に発売されたW650は2009年モデルを最後に生産を終了。その2年後の2011年、ほぼ姿を変えずに[…]
旧車の開発に使われた”鉱物油”にこだわる 1992年に創業した絶版車ディーラーのパイオニア・ウエマツ。販売だけでなく、整備にも徹底して力を注いできた同社がそのノウハウをフィードバックし、旧車に特化した[…]
インパクト大なシリーズ初カラー 現代的ストリートファイターのMT-09をベースに、アルミタンクカバーなど金属の質感を活かした専用外装などでネオレトロに仕上げられた1台であるXSR900。3種のパワーモ[…]
イベントレース『鉄馬』に併せて開催 ゴールデンウィークの5月4日、火の国熊本のHSR九州サーキットコースに於いて、5度目の開催となる鉄フレームのイベントレース『2025 鉄馬with βTITANIU[…]
ロングツーリングでも聴き疲れしないサウンド 数あるアドベンチャーモデルの中で、草分け的存在といえるのがBMWモトラッドのGSシリーズ。中でもフラッグシップモデルのR1300GSは2024年に国内導入さ[…]
- 1
- 2