’23年4月18日、国土交通省が「まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン(第2版)」を公表した。近年の考え方のトレンドである「街づくりの中で駐車場はどうあるべきか?」について触れられているので紹介しよう。
●文:ヤングマシン編集部(田中淳麿)
進展する国交省の認識 まちづくりは転換点へ
「まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン」の基本編(’18年7月)と実践編(’19年3月)を統合/再編し、最近の動向を考慮して内容が更新された第2版が公表された。相次ぐ駅前の再開発やクルマの個人所有の減少、新たなモビリティの登場、少子高齢化などを踏まえ、高度経済成長期のまちづくりが転換点を迎えたことを実感する内容でもある。
まずは、第2版が発行されるまでのいきさつや流れについて説明する。’20年9月7日に改正都市再生特別措置法が施行された。これにより、安全で魅力的な街づくりを進める上で、道路を含めた都市空間はクルマ中心から人中心のウォーカブルなものへと転換すべきとされ、それ以降、駐車場施策は街づくりと連携させながら検討すべきという流れになっている。東京都が策定した「総合的な駐車対策の在り方」もこの考え方に沿ったものだ。
ガイドラインは、駐車場施策の現状と課題、基本的な考え方と検討のポイント、施策の進め方、政策課題に対応した施策の紹介で構成されており、バイクについては「多様なモビリティへの対応(自動二輪、原付等)」と「人中心の街づくり」という視点で取り上げられている。バイクが多様なモビリティ(電動キックボード等)の括りであることには違和感を感じるが、これまで、いかに駐車環境の考え方/議論の中にバイクが含まれていなかったかということを考えさせられる記載でもある。
この他に、荷捌き車両への対応、観光地の渋滞対策、バリアフリー・ユニバーサルデザインへの対応、コロナ禍でのライフスタイルの変化、DX/GXの推進など、社会情勢の変化を踏まえた政策課題について扱っている。ガイドラインでは、駐車場施策の進め方や需要と供給の適正化(量から質へ)/配置の適正化/公民連携での取組みなどについて総合的に扱われており、街づくりにおける駐車場施策のマニュアル的意味合いを持つ。
過剰な駐車場や民地の有効活用を進めるべき
今後、クルマの所有は減少が見込まれているが、すでに都心部の附置義務駐車場の中には余っている所もあり、過剰な駐車場が街づくりの障害となる自治体も出てきている。その一方、二輪車の附置義務駐車場の条例制定都市は、’06年の駐車場法改正以来わずか10市に留まっており、今後も条例制定都市が増えていくという希望を持つのは正直難しい。
現在、バイク駐車場で数を増やしているのは軒下などを貸し出す形の予約制駐車場だ。こうした草の根的な民地の有効活用と、ガイドラインでも示されているような自転車/自動車駐車場の一画への二輪車受け入れというのが現実的な路線であり、人中心の街づくりに基づいた再開発計画の中でライダーやバイク利用者が来訪者として認識され、「バイク置き場はどこに作るのか?」と当たり前に議論される世の中にしていかなければ、都市部/繁華街における二輪車の駐車問題はなかなか改善できないだろう。
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