ホンダは原付1種の電動スクーター「EM1 e:(イーエムワン イー)を発表、8月24日に発売すると発表した。ホンダがリースやビジネス向けではなく、個人向けの電動バイクを販売するのは日本ではこれが初。価格は着脱式のバッテリーや充電器を含んで29万9200円だが、自治体によっては6万円近い補助金が受けられるため、現状の50ccスクーターと同等の24万円程度で購入できるのもトピックだ。 ※ホンダ発表の情報が更新されたため、2023年6月17日に補助金の額を訂正しました
●文:ヤングマシン編集部(マツ) ●写真:ホンダ
原付一種の灯を消さない! ホンダの覚悟が伝わる価格設定
国内ホンダ初のパーソナル向け電動バイク・EM1 e:が8月24日に発売される。ホンダ独自の交換式バッテリー「モバイルパワーパックe:(MPP)」を1個使用する原付1種クラスの車両で、満充電の走行距離は53km(30km/h定地走行テスト値)、バッテリーの充電時間は約6時間と発表されている。
価格はバッテリー1個と専用充電器を含んで29万9200円と、バッテリーのコストがかさむ電動バイクとしては破格の設定だが、CEV(Clean Energy Vehicle)の補助金2万3000円に加え、自治体からの補助金があり、これが東京都だと約3万6000円支給される。つまり実質24万円程度で購入できるのだ。
これはホンダで言えば50ccのダンクやベンリィと同等で、ガソリンエンジンの原付と正面から比較検討できる価格帯となるのだ。迫る排ガス規制などでその存続自体が危ぶまれている原付一種だが、その継続に向けて、ホンダはEM1 e:でひとつの意思表示をしたと言っていい。
ガソリン原1とほとんど変わらぬ使い勝手
EM1 e:の概要を説明すると、2021年に中国の五羊ホンダから発売された電動スクーター「U-GO」がベースで、このバッテリーをMPPに置き換え、モーターや制御系を専用チューニングしている。とは言えU-GOは開発時から世界展開が折り込まれており、EM1 e:として初公開されたのは昨年秋のミラノショー。欧州や日本だけでなく、今後はインドネシアなどでも販売される予定だ。
シート下に収められるMPP(約10.3kg)は容易に着脱でき、住宅内に持ち込んで充電できるため、使い勝手は電動アシスト自転車と変わらない。車体は全幅680mmと非常にスリムで、車重も92kgとガソリン原1の+10kg程度に収められている。欧州や中国ではタンデムが可能なため、その副産物として非常にゆったりしたシートスペースを持っており、フラットなフロアと併せて乗車姿勢の自由度も高い。
シート下にはさすがにヘルメットは入らないものの3.3Lの小物入れが設けられ、フロント部にはペットボトルが収まるインナーラックやUSB電源ソケットが標準装備される。モーターは後輪に収められたインホイールタイプで、走行時は通常モードとバッテリー消費を抑えるECONモードが選択可能だ。ブレーキは前後連動のコンビブレーキで、灯火類はフルLEDとして省電力に配慮している。
実質価格がガソリン車同等なのは先述したが、53kmという航続距離も原1の使われ方を踏まえれば必要十分。さらに充電などの使い勝手でも不便がないとすれば、EM1 e:はあらゆる面でガソリン車と比較検討できる、初めての電動バイクと言えるかもしれない。
出るぞッ! EM1 e:の原付2種バージョン!!
このEM1 e:だが、2年以内に原付2種バージョンが登場することがメディア向けの説明会の場で示唆された。ホンダは昨年の9月に“2025年までに10機種以上の電動バイクを発売する”と宣言しているが、「その中の1台として、そういうもの(=原2バージョンのEM1 e:)も含まれているとお考え頂きたい」と、ホンダの電動二輪を統括する人物が語ったのだ。
幅広い層への訴求を意識したため、まずは原付1種として登場したEM1 e:だが、すでにバイクに乗っている人間からすれば購入対象になるのはやはり2種。これは大いに期待したいところだ。
さらにEM1 e:の発売と同時に、今までビジネス向けのリース販売だった、ベンリィe:/ジャイロe:/ジャイロキャノピーe:の電動ビジネスバイク3機種の一般販売もスタートすることが明かされた。これはEM1 e:の発売に際し、使用済みバッテリーの回収とリユースに目処が立ったことが要因だという。
ちなみに2021年に登場したこれら電動ビジネスバイクは、2年間で累計販売台数が1万台に達したと発表されたが、EM1 e:は年間の販売目標台数を3000台と掲げている。そのボリュームの大きさがホンダの意気込みだが、すでに銀行などから大口の引き合いが来ており、達成はさほど難しくない…といった雰囲気すら感じられた。
いずれにせよ、EM1 e:は日本の原付が電動化へ向かう転換点となるはずだが、重要なのはエンジンとか電動とかの前に“なんとか日本の原付1種を存続させたい”という思いをホンダが形にしたこと。一時より大幅に減ったとは言え、現在も年間10万台以上の需要がある原付1種。安価な国民の足を無くすわけにはいかない…という決意がそこには見えるのだ。
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