ホンダの最強2気筒ニーゴーであるCBR250RRが令和2年度排出ガス規制に適合、型式名も「2BK-MC51」から新規制対応型を示す「8BK-~」へと進化。さらなる戦闘力アップを目指し、トラクションコントロールやSFF-BPフォークなど新たに手にした武器を含め、丸山浩が箱根の峠でチェックした。
●まとめ:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ホンダモーターサイクルジャパン
【テスター:丸山浩】ヤングマシンメインテスターを務める、自身が主導するウィズミープロフェッショナルレーシングの会長。過去にはCBR250RR最速プロジェクトとしてもて耐参戦などを行い、このマシンを限界まで走らせてきた経験を持つ。最近は動画のMOTORSTATION-TVを通して精力的に情報を発信中。
ホンダ CBR250RR 概要
並列2気筒のフルカウルスポーツとしては別格のパフォーマンスを誇るCBR250RR。’20年にカワサキが並列4気筒のZX-Rを投入するも、パワーアップをはじめとした熟成に加えて軽さと低速トルクという2気筒の良さは健在。ショートサーキットや峠ではRに勝る場面もたびたびあるなど、速さの面では今でも250クラス頂点のひとつだ。
そんなCBRがで3代目にあたるマイナーチェンジを実施。主目的としては令和2年度排出ガス規制への適合だろうが、それだけに終わらず最高出力をさらに上乗せして42psへとアップ。そのエンジンには従来からある3段階パワーモードに加え、3段階+OFFのトラクションコントロールも新たに加わった。また足まわりにショーワ製SFF-BP(セパレートファンクションフロントフォークビッグピストン)サスペンションを採用して、さらなる路面追従性の向上を狙うなど本気の戦闘力底上げを行ってきた。
形も走りも切れ味アップ!〈ホンダ CBR250RR 試乗インプレッション〉
外装も一見同じように見えるが、やはり新作。レイヤード構造のアッパーカウルにはウイングレット機能も持たされているなど全面的に見直されており、細部を見ると実に多くの部分が変わっている。各所を絞り込んだ複雑な造形の割にはウインドプロテクション性能も高く、軽く伏せると頭頂部に当たった風が気持ちよく抜けていった。個人的にはタンクから続く長い形状だったシート下サイドカバーをコンパクトなものとした点や、下部をそぎ落としてさらなる足着き向上を狙っているなど、エントリーライダーに対する心配りを忘れていないところが嬉しい。
ライディングポジションの雰囲気は変わっていなかった。ハンドル位置は低く、絞り角とタレ角は結構強めでスーパースポーツらしいヤル気を呼び起こす。しかしライダーとハンドルの間が近いのでそんなに前傾しなくても大丈夫と、ツーリングで疲れない快適さも健在。タンク上面がガッと横に張り出して迫力がありつつ、ニーグリップでヒザが当たる部分はギュッと絞られている。ここのスリムさはエンジン横幅だけでなくフレームも一緒に絞り込める2気筒だからこそ実現したという感じで、4気筒に大きく勝る部分。したがって足着き性も抜群。スーパースポーツらしい腰高感のあるシートながら足がスッと真っ直ぐ下に伸びてステップ類も邪魔しない。身長168cmの私だと両足がほぼかかとまで接地する。もちろん2気筒は車重も軽いから跨ったままでの取りまわしも非常に楽!
もともとパワフルだったエンジンは圧縮比も上げたことで最高出力発生回転数は500rpm上昇し、より高回転まで回るようになっていた。4気筒との差を狭めようと努力しているのが感じ取れ、峠の走りにはさらなる磨きがかかっている。それでいて相変わらず低速域のスカスカ感もないので街中から高速/峠とあらゆるところで扱いやすい。2気筒の有利な部分を存分に享受できる。
4気筒には負けない! 渾身の性能アップだ〈ホンダ CBR250RR 試乗インプレッション〉
峠を攻めてみると新型は制御面でも熟成が進んでいた。最も変わったと感じたのはパワーモードの設定だ。先代では「Sport+」と「Sport」モードの間であまり変化がなく、「Sport」でも押し出しのパンチが強すぎたくらいで、峠でもそれで十分という感じだった。それが今回の「Sport」ではピークパワーそのものは「Sport+」から変えず、適度なツキに。「Comfort」ほどいかないまでも優しく、扱いやすくしている。一方、「Sport+」はパンチ力が一層際立つものとなり、サーキットをはじめここぞというときに威力を発揮してくれるようになっていた。
新設されたHSTC(ホンダセレクタブルトルクコントロール)=トラクションコントロールは峠のアスファルト上だとあまりモード間の違いを感じないかもしれない。だが、ダート部分で試してみると最も介入度が強いモード3では効きっぱなし。逆に弱いモード1では効きながらも少しでも車体を前に行かせようとする動きを見せるなど、ちゃんと制御されている。モード1ではトラコンを入れた状態でのサーキットタイムアタックにも対応した設定具合と見た。試乗車に装着されていたオプションの双方向クイックシフターも実戦志向。シフトダウンのオートブリッピングは控えめで、回転数をあまり上げずにストンストンと素早くギヤを落としていくものとなっている。
車体面の戦闘力向上に大きく寄与するであろうSFF-BPフォークの性能も素晴らしく、リヤサスも含めてコーナー手前にあるゼブラ舗装でのギャップ吸収性は同日にテストしたCBR650R/CB650Rよりも優れていると感じたほど。ここはかなりコストをかけて作られたのだろう。総じて新型では新排ガス規制に対応しつつ、より攻め込むことを可能としてスーパースポーツらしさに磨きをかけたように思える。2気筒でも負けないものが作れるんだというホンダの意地がヒシヒシと伝わってきた。
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