
’17年5月に発売されたヤマハのMT-10/SPが、最新の排ガス規制対応に伴い、外観刷新を含めたモデルチェンジを実施。電子制御の高度化や、四輪のサウンド開発技術の導入など、さらに操る楽しさを極めたぞ。
●文:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:山内潤也 ●外部リンク:ヤマハ
’22 ヤマハMT-10SP ABS
【’22 YAMAHA MT-10SP ABS】■全長2100 全高1165 軸距1405 シート高835(各mm) 車重214kg ■水冷4スト4気筒DOHC4バルブ997cc 166ps/11500rpm 11.4kg-m/9000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量17L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70ZR17 R=190/55ZR17 ●色:銀 ●価格:218万9000円(STDは92万5000円)
【ライディングポジション】シート高は10mmアップの835mm。やや腰高ではあるが、座面が広くて自由度が高いのは好印象。またハンドルが比較的高めで街乗りも苦にならない。[身長175cm/体重68kg]
[◯] MT-09よりも親しみやすい。法定速度で楽しむ贅沢
私がMT‐10に試乗するのはこれが初だ。同シリーズのMT‐07は万人に勧められる秀作で、MT‐09は乗りこなすことを求められるロデオマスター。そんな印象を持っていただけに、旗艦たるMT‐10はさぞや強心臓ぶりを発揮するスーパーネイキッドかと思いきや、それとは真逆のジェントルさをも併せ持つ、日常的にも乗りたくなる傑作だった。
試乗したのは、オーリンズ製の電子制御サスペンションを採用する上位モデルのSPだ。まずはエンジンから。YZF-R1ベースの997cc水冷直4は、最新の排ガス規制に適合しつつ160psから166psへとアップしている。クロスプレーン型クランクなので、一般的な直4とも、またMT‐09の直列3気筒とも異なる粒立った排気音だが、それとは裏腹に発進は滑らかさが際立つ。新型からSTD版にも採用されたライディングモードYRCは、モードAからDまで4段階から選択でき、スロットルレスポンス/トラクションコントロール/スライドコントロール/電子制御サスペンションの設定(SPの場合)が連動して切り替わるのだ。
特に感心したのは電子制御スロットルの完璧な調教ぶりだ。モードAはサーキット向け、Cは一般道向けという説明であり、モードごとに表情がしっかりと変化する。そして、どの設定でも右手の動きに忠実で、パーシャル中も不自然だとか不快な反応を示すことは皆無だ。粒立っていながらスムーズな加減速と、スロットルを大きく開けたときに聞こえる官能的なサウンド。CP4エンジンは速さだけではないことを思い知らされた。
ハンドリングも素晴らしい。本格的な峠道こそ走れなかったが、扱いやすさはMT‐09以上といっても過言ではない。二輪初のスプールバルブを採用したオーリンズの新型電子制御サスペンションは、オートとマニュアルそれぞれで1から3までの設定が選べる。一般道向けのA‐3でもサスは不自然に動きすぎず、それでいて高速巡航ではスカイフックとも異なる乗り心地の良さがあり、何とも不思議な感覚だ。そして、常に減衰力が変化しているのに、それを乗り手に感じさせないことにも感心した。
[△] A&Sを採用するのにクラッチレバーが重い
試乗中に何度か渋滞にハマったのだが、クラッチレバーの操作が重く感じた。アシスト&スリッパーは採用しているので、根本的にバネレートが高いようだ。なお、ダウンにも対応するようになったクイックシフターの動作は完璧と言っていい。
[こんな人におすすめ] 最新電子制御を全部詰め込んだ究極ネイキッド
電子制御スロットル/電子制御サスペンション/6軸IMUを採用するモデルが増えたが、ライダーの操作や心情とのシンクロ率では現時点でナンバーワン。スーパースポーツ由来の強心臓ネイキッドは外観の好みで選ばれることが多いが、迷うならMT-10を強くお勧めする。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(MT-10/SP)
ライトグレーのボディにライトブルーのホイール『アイスストーム(Ise Storm)』 ヤマハがMTシリーズの2025年モデルを一挙に公開した。欧州で発表されたのは「MT-09」「MT-03」「MT-1[…]
ヤマハは、2014年に誕生したロードスポーツモデル「MT-09」の発売10周年を記念したアイテムを詰め合わせた「MTシリーズ10周年記念BOX」を数量限定で発売する。 MT-09は、それまでの600c[…]
YZF-R1シリーズ直系の4気筒エンジンを搭載するスーパースポーツネイキッド ヤマハは、同社の最高峰スーパースポーツ「YZF-R1」のエンジンを低中速寄りに仕立て直して搭載した『MTシリーズ』のフラッ[…]
MTシリーズのフラッグシップを高品質SPLパーツでカスタム〈ベビーフェイス MT-10カスタム〉 ’17年にYZF-R1ベースのネイキッドとしてデビューしたMT-10。人気のMTシリーズのフラッグシッ[…]
充実の電子制御やパワーアップに加え、SPは二輪市販車で世界初採用のサスペンションも ヤマハは、同社の最高峰スーパースポーツ「YZF-R1」のエンジンを仕立て直して搭載したMTシリーズの最高峰モデル「M[…]
最新の関連記事(試乗インプレッション/テスト)
ラインナップ豊富な新生KLX230シリーズ カワサキは、KLX230シリーズをモデルチェンジするとともに、KLX230Sとしては3年ぶり(その他の無印やSMは2~5年ぶり)に復活させた。 KLX230[…]
BMWが打ち出すベテラン用オートマチック 違和感はなく、慣れという意識も必要なかった。走り出して10分もすると、僕はASA(オートメイテッドシフトアシスト)のコツを掴み、その機能をより効率良く活用する[…]
シェルパの名を復活させたブランニューモデル カワサキは、KLX230シリーズのモデルチェンジ時点で、トレッキングモデル「KLX230シェルパ」をラインナップに加えた。シェルパの名を冠したバイクとしては[…]
車体の刷新でスポーツ性を大幅強化 今回の倒立フォーク化&ラジアルマウント化のモデルチェンジでは、本来約4.5kgの重量増になるところを、MT-07ならではの軽さに拘って各部を軽量化。車体のねじれ/縦方[…]
大型バイクの重さ/シビアさから降りてしまったライダー 今回「CB650R E-Clutch」に乗るのは、元大型ライダーの赤坂さん。 バイク歴8年で10代から乗っていた赤坂さんは、以前はリッタークラスの[…]
人気記事ランキング(全体)
まず車間が変わることを理解しておこう! ツーリングでキャリアのある、上手なライダーの後ろをついてゆくのが上達への近道。ビギナーはひとりだと、カーブでどのくらい減速をすれば良いかなど判断ができない。そう[…]
“エフ”にとらわれず、新世代のCBをゼロベースで追求 YM:まずはCB1000Fコンセプトの狙いどころや、車両のコンセプトを教えて下さい。 坂本:“CB”はレースと共に育ってきたブランドですが、その役[…]
タイホンダ創立60周年を記念したスペシャルエディション 特別仕様車の製作に旺盛なカブハウスは、タイホンダの創立60周年を記念した「New Monkey Chrome Legacy Limited Ed[…]
モバイルタイプでも水の勢いは十分。洗車での活躍は間違いなし 今回発売されるケルヒャー「OC 5 Handy CB」は、もっと手軽に、どこでも洗浄したいというユーザーの持ち運びニーズに対応した、ガンタイ[…]
ラインナップ豊富な新生KLX230シリーズ カワサキは、KLX230シリーズをモデルチェンジするとともに、KLX230Sとしては3年ぶり(その他の無印やSMは2~5年ぶり)に復活させた。 KLX230[…]
最新の投稿記事(全体)
2.5次元アイドルがアンバサダー!? モーターサイクルショー開催概要 東京モーターサイクルショーの共通するメインテーマは、「いいね、バイク」。大阪のサブテーマには「バイク&ピース」、東京には「バイクっ[…]
グローバル販売を見据えたフラッグシップモデル 新発売となるSRD 5 Proは、Amazonで販売ランキング1位(バイク用Gps 2024年12月4日調べ Amazonランキング)を記録したベストセラ[…]
Q.ツーリングへ出かけるとバイクのすぐ前の路面ばかり見てしまいます。そのため先のほうの様子に気づくのが遅れ、カーブの手前で慌てます。「遠くを見ろ」とよく言われますが、先を見ていると手前の路面が心配にな[…]
マルケスがファクトリーマシンを手に入れたら…… MotoGP開幕戦・タイGPで優勝したマルク・マルケスは、圧巻の強さでしたね。7周目に、タイヤの内圧が下がりすぎないよう弟のアレックス・マルケスを先に行[…]
その名も「V3R」と「V3R E-COMPRESSOR」だ! ホンダが全く新しい4ストロークV型3気筒エンジンのコンセプトモデルを公開したのは、2024年秋のEICMA(ミラノショー)でのこと。かつて[…]