バイク館の試乗会で乗った!

名車の予感!! スズキ「VストロームSX」試乗インプレッション【250ccアドベンチャーの新顔】

ジクサー250シリーズと同系の油冷単気筒エンジンを搭載する、スズキの軽二輪アドベンチャーモデル「VストロームSX」のインド仕様に乗る機会を得たので、その模様をお伝えしたい。


●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●外部リンク:バイク館

大型アドベンチャーのいいところを残したままスリムダウンしたかのよう

筆者はスズキの大型二輪アドベンチャー「Vストローム650/XT」について、あまり目立たない存在ではあるが傑作の1台だと思っている。これは仲間うちのライターさんや編集者に聞いても意見が一致することが多く、長い距離を走るほどに愛着がわく乗り味は、同じスズキ・Vストロームシリーズの中でもベストバランスと言っていいかもしれない。

参考:Vストローム650/XT ●価格:95万95万7000円~ ※写真はXT

それと同じ匂いを、軽二輪(250cc)アドベンチャーのVストロームSXに感じたのだ。教習所の場内を利用した短時間の試乗だったので存分に味わい尽くしたとは言い難いが、それでも片鱗をうかがうことはできたと思う。

Vストローム650/XTとVストロームSXに共通するのは、徹底して車体がエンジンに勝っているという点だろう。

Vストローム650は、Vストローム1000(のちに1050)と共通の車体に名作と言われる650ccVツインエンジンを搭載し、エンジン出力に合わせて少し剛性の低いタイヤを装着した、というのが大まかな生い立ち。躊躇なくスロットルオープンできるバランスが持ち味で、高いアベレージスピードで長距離を駆け抜けられる点ではBMWのR-GSシリーズに通じるものがある。おおらかだが軽快で芯があり、鋭さとは無縁でもスポーティと言って差し支えない。

緊張感や疲れが少なく、休憩時間が短くて済むことを加味すれば、スーパースポーツも顔負けの平均速度で遠くの目的地へ到達できるのがVストローム650なのだ。

VストロームSXは、これをもっと軽量スリムにした感じとでも言おうか。並列2気筒エンジンを搭載する軽二輪アドベンチャー・Vストローム250よりも長いホイールベースやシート高835mmがやや大柄なイメージを抱かせるかもしれないが、実際には緊張を感じさせることもない。これに加えて、167kgというほどよい車重と最高出力26.5psが、Vストローム650/XTに通じる自在感を生み出しているのだ。

【SUZUKI V-STROM SX[2022 India model]】主要諸元■全長2180 全幅880 全高1355 最低地上高205 軸距1440 シート高835(各mm) 車重167kg(装備)■油冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ 249cc 26.5ps/9300rpm 2.26kg-m/7300rpm 変速機6段 燃料タンク容量12L■キャスター27度/トレール97mm タイヤサイズF=100/90-19 R=140/70-17 ●価格(バイク館):52万9000円 ●色:黄、黒、赤 ※諸元等は全てインド仕様

同じ軽二輪クラスのアドベンチャー/オフロードモデルと比較して、フィーリングでざっくり分類するなら、大型アドベンチャーモデルを軽量スリムにしたのがVストロームSX、オンロードツアラーをベースにクロスオーバー仕立てとしたのがVストローム250、そして125~200ccのオフ車をトルクフルにしたのがセロー250と言ったところだろうか。加えて言えば、CRF250シリーズは昔ながらのフルサイズトレールを現代的に洗練した感じだ。

SUZUKI V-STROM SX[2022 India model]ほかに黄色と黒をラインナップし、全3色。

安心して身を任せられるベストバランス

もう少し詳しくVストロームSXを見ていこう。

エンジンは、ジクサー250/ジクサーSF250と共通の油冷単気筒。特別にパワフルというわけではないが、167kgの車体をストレスなく加速させる。高回転まで回していっても振動は特に気にならない。軽二輪クラスとしてはギヤチェンジをズボラにできる特性だ。

ユーロ5に相当するBS6(インドの排出ガス規制)に適合しているためか、爆発の一発一発の感触は薄め。スズキらしく“道具に徹している”という雰囲気の中から、実直なキャラクターがにじみ出す。

車体は、ジクサー比で95mmも長いホイールベースに仕立てられているのが特徴だ。フロント19インチホイールをフォークの中心から前方にオフセットして締結し、スイングアームは50~60mm程度延長しているようで、おおらかなハンドリングとなっている。サスペンションのストロークを感じ取りやすく、リーンウィズで身を任せながら安心して車体を寝かしていくことができる。

写真のライダーは身長175cm。両足とも踵は浮くが、親指にしっかり体重が載る。シート高は835mmだが、車体がスリムなので数値からイメージするよりも足着きはいい感じだ。ちなみに、他メディアで試乗していた身長160cm台前半の方もまったく問題ないという話だった(身長150cm台はサンプルなし)。ハンドルバーの幅はやや広めで安心感がある。

軽すぎない167kgという車重も身を任せるのにちょうどよく、またライダーが触れるシートやハンドル、ステップといった部分も自然な感触だった。筆者は身長183cmだが、試乗会に同行した170cmの編集者も自然に感じたようなので、多くのライダーにフィットする作りと言ってよさそうだ。

バイブレ製キャリパーを採用するブレーキは、オンロードマシン寄りの利き味。しっかりと止まることができるだけでなく、カーブに向かって減速していく場面でもコントロールしやすい。試乗会で乗ったほかのアジア向けバイクに比べると、初期タッチはやや鋭い感じもあったが、オンロードモデルとしては標準的かつ慣れの範疇だ。

できる範囲で頑張ってみたコーナリングでは、鋭く曲がるというよりもひたすらおおらか。路面の凹凸などの影響を受けにくく、ライダーの意図に対して反応が早すぎないので、先の読めないワインディングロードなどでも安心して走れそうだ。MRF(インドのメーカー)製タイヤのグリップ力まではわからなかったが、急激な挙動の変化や切れ込みなどはなく、こちらも自然なフィーリング。やはり軽快かつ芯のあるスポーツ性が好印象だ。

舗装路を軸足に、荒れた道や多少のダートをものともせず、行きたい場所へとガンガン突き進める走りの性能は、アドベンチャーモデルとして名車になりうる可能性が感じられた。もちろん街乗りやツーリングも得意分野だろう。

ちなみに、ジクサー系の油冷エンジンは驚異的な低燃費でも知られており、経済性でも航続性能でも満足させてくれそうだ。ジクサー250は40km/Lを軽く超える実燃費で、多少重く大きくなったVストロームでも気を遣った走りなら40km/Lは難しくないはず。燃料タンク容量は12Lだが、ワンタンクで500km近い走行距離が期待できるかもしれない。

バイク館ではインド仕様のVストロームSXを52万9000円でラインナップしているが、3色あるカラーバリエーションは全色とも入荷待ちとなっている(2023年1月5日現在)。2023年夏ごろとされる国内仕様の正式導入も待ち遠しい!

VストロームSXのディテール

SUZUKI V-STROM SX[2022 India model]

ジクサー250と同じユニットと思われるヘッドライト。縦に並ぶLEDがスズキらしい。ウインカーはバルブ式を採用している。

液晶メーターは速度や回転、燃料残量、ギヤ段数などを表示。インド仕様はターンバイターンのナビゲーションにも対応する。

Suzuki Oil Cooling System(SOCS)を採用したエンジンは、特にシリンダーから上が異様にコンパクト。1980年代の油冷とは設計思想が異なり、構造的には水冷に近いとされる。

マフラーはジクサー250と共通に見えるが確信は持てず。カバーの色などは異なる。

ニーグリップしやすいタンクと、クッションがしっかりしたシートが快適な走りを実現。インドならではのサリーガードは、民族衣装のサリーをチェーンに巻き込まないためのものだ。

ABSを標準装備するブレーキは、オンロードで十分な制動力を発揮する。前輪21インチの本格オフロード系よりも初期制動は強めだ。

左右にナックルガードを標準装備する。

シンプルな左右のハンドルスイッチ。

ステップは防振ラバー付き。外せばオフロード的なステップに早変わりする。


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