今のバイクではあり得ない振動、サウンド、匂い──。現代には再現しがたい絶対的な個性を持つ絶版旧車には、“あの頃”の青春が詰まっている。本記事では、ヤングマシンのメインテスターである丸山浩が、RZ350/GSX1100Sカタナ/CB750フォアに試乗した模様を紹介する。
●文:ヤングマシン編集部(沼尾宏明) ●テスター:丸山浩 ●写真:関野温 ●外部リンク:バイク王つくば絶版車館
YAMAHA RZ350
昔は面食らうほど速いイメージだったけど、今乗るとパワー感はさほどでもない。それでも途轍もなく楽しい! アイドリングから少し開けるとバラララッと震え、4000~5000rpmで振動が一旦消える。7000rpm程度から再びビヤーッ! と振動が。この移り変わりを味方にして走るのが味わい深い。振動の伝わり方も独特で、こんなバイクはもう作れないだろう。今なお超コンパクトで、ハンドリングの軽さにも驚く! そして風向きで変わる香りが最高。
HONDA CB750FOUR
’69年、実質的に世界初の並列4気筒車として誕生。ツイン全盛期に圧倒的な動力性能を誇り、「ナナハン」という言葉もここから生まれた。まさに革命的な1台だ。冷却フィンが深く刻まれたSOHC2バルブ736cc空冷直4は67psを発生。回転上昇は緩やかながら、5000rpm程度からパワーが盛り上がる。威風堂々とした車格と4本マフラー、流麗な外装など、日本メーカーが世界に打って出る気概が随所に。
若い頃に乗ったし、ナナハンライダーも読んでいたから、やっぱり懐かしい。気筒ごとにバラバラに爆発している感覚と図太く乾いた排気音は、演出を施していない「素のバイク」ならでは。細いタイヤのせいか、乾燥重量235㎏のわりに軽く車体が寝るが、ハンドリングや取り回しはズシリと重い。それなりのパワーに対し、「止まれない、曲がれない」アンバランスさが凄みになっている。本田宗一郎氏が言ったとおり「誰が乗るんだ」という雰囲気は今なお健在だ。
SUZUKI GSX1100S KATANA
’81年、日本刀をイメージしたフォルムで衝撃デビュー。象徴的なフロントカウルは空力特性まで考慮した設計で、独特な動きを見せるメーター、チョークダイヤルなどの機能もデザインに織り込まれている。上体は、セパレートハンドルによる鬼の前傾で「このライディングポジションは小柄なヒデヨシじゃ無理」(丸山)。一方でエンジンは極めて真っ当。DOHC4バルブの1075cc空冷直4エンジンは滑らかに回り、110psを発生する。
カタナを語る上で外せないのがハンス・ムートらによる唯一無二の造形。ただし人が乗ることよりデザインが優先のため、タンクが長く、ハンドルが異様に遠い。今時のマシンはカテゴリーごとに似たライディングポジションだが、現代では考えられない異質なライポジだ。そこをライディングテクニックで工夫して乗りこなすのが味になっている。エンジンはフォアから10年以上の歳月が開き、洗練。スムーズに回転が上昇し、バックラッシュ音もない。とはいえ今のスーパースポーツと比べれば断然ワイルドだ。
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