一世を風靡したレーサーレプリカブーム。その出口はカワサキから突如現れた”普通の”マシン、ゼファーが定義したが、各社ともに様々なアプローチで試行錯誤を行い、次の時代を見据えた個性的なバイクを開発していた。本記事では、ホンダ CB-1/スズキ バンディット/ヤマハ ディバージョンを取り上げる。
●文:ヤングマシン編集部(宮田健一)
新しいネイキッドを目指すも明暗が分かれた【CB-1/バンディット/ディバージョン】
ゼファーの大ヒットに目を奪われがちだが、レプリカ真っ盛りの’80年代後半、すでに国内メーカーは「次」に向けて始動していた。オーソドックスな構成のゼファーで勝負したカワサキより、他メーカーのほうがむしろ次世代ネイキッドのカタチと性能を追求していたのかもしれない。
ホンダとスズキはレプリカの高性能な水冷4気筒に実用域に振ったセッティングを施し、パイプフレームを強調した新スタイルを提案。リヤサスペンションも性能重視のモノショックを採用した。それがCB-1とバンディットだ。ゼファーと同じ’89年のことである。
さらにヤマハはネイキッドではないものの、なんと空冷4気筒エンジンを新規開発し、美しさや旅を想起させるディバージョンを投入。600と同時開発で共有部が多いとはいえ、かなりの英断。しかもプライスはゼファーよりリーズナブル。
…が、CB-1とディバージョン400は、残念ながらヒットには至らず短命に終わった。しかしバンディットは一定の人気を得て後年まで生産/開発が続く。比較的コンセプトが近いCB-1との差は、どこから生まれたのだろうか…。
早すぎたメーカー製ストリートファイター:’89 HONDA CB-1
CBR400RRのカムギヤトレーン式水冷4気筒に、低中速域でリニアに反応する特性を狙ってポート長の最適化や不等長エアファンネルを採用。バルブ開閉タイミングも変更した。大径の構造用炭素鋼管のツインチューブ型フレームはデザインの要でもあり、新時代のスポーツネイキッドを感じさせたが、人気はいまひとつだった。
艶を意識した美しい山賊:‘89 SUZUKI BANDIT400
美しいパイプワークを強調したダイヤモンドフレームに、レプリカGSXR400の水冷4気筒をベースに実用回転域の性能を重視したエンジンを搭載。大径の多孔式フローティングディスクや異径4POTキャリパーなどブレーキも強力。セパレートハンドルやパイプハンドル(ロー/アップ)、カウル装備車など多彩な仕様を揃えた。
風を感じる空冷ツアラー:’91 YAMAHA DIVERSION400
ハーフカウルの落ち着いたデザインは、いかにも旅を楽しむためのバイク。…とはいえ空冷4気筒は新設計で、ジェネシス構想を反映した前傾35度のシリンダーにダウンドラフトキャブでストレート吸気と、持てる技術を投入。
ゼファー後もまだレプリカは元気
ネイキッドブームが始まり終息に向かいつつあったとはいえ、レプリカ勢もまだまだ元気。各メーカーともおおむね’90年代半ばまでマイナーチェンジ等で熟成を図っていた。しかし’90年代後半は継続生産もしくは在庫販売で、’00年代初頭に姿を消した。
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