
「足つき」は、バイクを購入する際に重要となるポイントのひとつとして、ライダーの間でよく耳にするワードです。そもそも、足つきとはどのような状態を指すのでしょうか。また、その重要性はどういったところにあるのでしょうか。
●文:ヤングマシン編集部(Peacock Blue K.K.)
そもそもバイクの「足つき」ってなに? 鍵となるのは「安心感」?
初めてバイクを購入する際には、デザインや排気量、価格がまず注目されがちですが、意外に見落とされやすいのが「足つき」です。
ライダーの間でよく耳にするワードである足つきは、「足つきが良い」「足つきが悪い」などのように使われますが、そもそもどのような状態を指しているのでしょうか。
足つきとは、バイクにまたがってハンドルを握った際の、足と地面との接地感をさします。
例えば、バイクにまたがった際、自然に足が地面に接地し、左右のバランスが安定して保たれた状態は、「足つきが良い」とされます。一方で、「足つきが悪い」とされるのは、バイクにまたがった状態で地面に足がつかず、左右のバランスが不安定な状態です。
足つきが良いと、停車時のバランスをうまくとることができ、立ちゴケの不安も低減されます。
足つきのいいバイクとして人気の高いホンダ レブル250。後述するが、足つきを見る際に参考となる「シート高」は690mmだ。[身長168cm/体重61kg]
立ちゴケは、停車時にライダーがバイクごと転倒してしまうというトラブルを指しており、初心者ライダーにとっては大きな不安要素のひとつといえます。
一度、立ちゴケしてしまうと、バイクの重量によってはなかなか起き上がることができなかったり、怪我やバイクの損傷につながったり、ときには後続の交通にも影響を及ぼす可能性があります。
まだバイクの扱いに慣れていない初心者ライダーは、比較的立ちゴケしてしまうことも多いでしょう。ベテランのライダーであっても、地面のコンディションが悪かったり、傾斜の急な地点での停車だったりすると、立ちゴケしてしまう可能性は否めません。
しかし、足つきが良いことで、自身の足を支柱にバイクをしっかりと支え、バランスを取ることができるので、立ちゴケしにくい状態をつくりだせます。
さらに、立ちゴケするかどうかに関わらず、停車時に安定した状態をとれることは、初心者ライダーにとっての安心感につながります。安心してバイクを楽しむためにも、バイクの購入時には、足つきを考慮することが重要です。
強風と雨、荒れた路面という悪い条件が重なり、立ちゴケしてしまった例。
カタログではシート高に注目して、自分に合った足つきを探す!
バイク選びに重要な足つきですが、自分に合った足つきのバイクを探すためには、ショップで試乗して、実際の足つきや乗り心地を体感してみるのがベストです。
一方で、例えば、ネットを通して中古のバイクなどを購入する際には、年式や希少性などによって、同様のバイクを気軽に試乗することができない可能性もあります。
そんなときには、カタログなどに記載のある「シート高」に注目するのが得策です。シート高は、その名の通り、地面からバイクのシートまでの高さを表している数値です。
あらかじめ自分の体格に合ったシート高を覚えておくことで、足つきの良いバイクも探しやすくなります。
あくまでも目安ではありますが、普通自動二輪免許の教習車としての活用が多い、ホンダCB400SFは、シート高が755mmとなっています。教習を受けた際の足つきの具合も参考になりそうです。
上述したように、なかなか試乗できないような車種のバイクでも、同様のシート高のバイクに店頭で試乗してみることはできるでしょう。
もちろん、ハンドルの位置やシートの形状などによっても足つきは変わってきますが、おおよその目安として参考にすることはバイク選びにおいて有効といえます。
中型二輪免許の教習用バイクとして誰もが跨ったことがあるはずのホンダ CB400SF。シート高は755mm。
足つきの調整は「あんこ抜き」や「ローダウン」で!
ただ、足つきを重視すると、体格によっては、なかなか好みのバイクを選ぶことができない場合もあります。とくに、小柄な人の場合には、なかなか足つきの良いバイクを探すことが難しいでしょう。
また、シート高を計算して購入したバイクでも、完璧に自分の足つきの良さにマッチするとは限りません。
そんなときは、シート高を調整して、足つきを調整することを視野に入れても良いかもしれません。
シート高を調整する方法として、比較的ポピュラーなのが、シート内の緩衝材を減らす、通称「あんこ抜き」をすることです。
バイクのシート内部には、ポリウレタン素材の緩衝材が活用されているのが一般的です。シートの形に形成されたポリウレタンを、やすりやノコギリなどを用いて少しずつ削り取り、自身に合ったシート高や形状にすることで、足つきの良い状態を実現できます。
ただ、ポリウレタンを削りすぎたり、適当な削り方をしてしまったりすると、逆に座り心地が悪くなったり、ライディングポジションを取りにくくなったりする可能性もあります。
あんこ抜きをする際は、少しずつ微調整しながら進めるように注意しましょう。また、ポリウレタンを削る道具に加えて、シートの表皮を取り付ける際には、ハンドタッカーなども使用することになるため、道具の準備もしっかりとおこなう必要があります。
「あんこ抜き」をせずとも、オプションでローシートを設定できたり、座面の高さを調整できる機能のついたバイクもある。写真はハクスバーナ ノーデン901で、ロー状態でのシート高は854mm/ハイ状態では874mmだ。
さらに、ライダーのなかには、サスペンションでバイクの車高を落とす「ローダウン」をしている人も少なくありません。サスペンションを短くすることで、バイク自体の高さを低くし、必然的にシート高も下げることができます。
自身でバイクのカスタムをおこなうベテランライダーにとっては、こうしたカスタムもお手のものかもしれません。
初心者ライダーの場合には、まずはベテランライダーに付き添ってもらってカスタムしたり、ショップに作業を依頼したりして、安全かつ適切なカスタムがおこなえるようにするのが良いでしょう。
ホンダ GB350のリヤ(後輪)サスペンション。これを短くすることでシート高を下げて足つきを改善することができるが、その分だけ本来の衝撃吸収性を失うなど、不都合も生じる。
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