
ツーリングに便利なバイク専用ナビゲーションアプリ「ツーリングサポーター」が、多くのバイクメーカーも採用するボッシュの「mySPIN」に対応したと発表されました。スマートフォンにアプリをインストールし、バイクのメーターと無線で連携することによって、さまざまな機能が使えるようになります。
ハンドルバーのコントローラーからも操作可能
ナビタイムジャパンが提供するスマートフォン用バイク専用ナビゲーションアプリの「ツーリングサポーター」が、スズキ・GSX-S1000GTとカワサキ・Ninja H2SX SE(欧州発表済み/国内は2022年初夏導入予定)が採用するボッシュのmySPINに対応しました。
スマホにツーリングサポーターをダウンロードして、mySPIN採用の車両と接続することでメーターにツーリングサポーターのナビ画面が表示される。ナビ機能を使用するには、ツーリングサポーターのプレミアムプラスコース登録(月額800円または年額8000円)が必要。
この2車は、ボッシュの6.5インチサイズのフルカラーTFT液晶多機能メーター(インテグレーテッド・コネクティビリティ・クラスター)を採用していて、このメーターが採用しているmySPINといういわゆるOS上でツーリングサポーターを使用することができる、つまりバイクのメーターにツーリングサポーターの画面が表示され、目的地までナビゲーションしてくれるというものです。
バイクのメーターがそのままナビの画面になることのメリットは大きく、まず視線の移動が少ないためにライディング中の安全性が大きく向上します。さらに、ツーリングサポーターのインターフェイスもこのTFT液晶メーター用に最適化されているので、視認性もとても高いものになっています。
また、ツーリングサポーターはこの2車が採用しているハンドルバーのコントローラーにも対応していて、ハンドルバーの操作でナビゲーションの各種設定を行うことも可能になっています。厚手のグローブを付けていても確実に操作することが可能です。
さらに、車両の走行中状態をツーリングサポーターが認識して、走行中にハンドルバーのコントローラーや画面を操作すると、安全性を考慮して操作制限の注意喚起画面が表示されるなど、至れり尽くせりの仕様になっています。
車両とツーリングサポーターが連携することで、走行中か否かのチェックを行うことができ、走行中にハンドルのコントローラーや画面タッチでナビの操作をしようとすると図のようにメーター画面にウォーニングが表示される。これが従来のスマホナビとは大きく異なる点で、ライディング中の安全性向上にも大きく寄与してくれる。
スズキ・GSX-S1000GTの左のハンドルバーにはご覧のように「モード/設定スイッチ」(本文中ではコントローラーと表記)が装備されていて、このスイッチの操作でツーリングサポーターの設定が可能だ。
GSX-R系の水冷4気筒エンジンを、エアロダイナミクスを徹底的に追求したボディに搭載するスズキ・GSX-S1000GT。クルーズコントロールシステムや、電子制御システムS.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)によるライディングアシスト機能など、快適なロングツーリングを実現する装備を満載している。サイドケースなどの純正アクセサリーも豊富に用意されている。価格は159万5000円。
初夏に登場予定のカワサキ・Ninja H2SX SEは、mySPINだけではなく、ボッシュ製のライダー支援システムARAS(Advanced Rider Assistance System)を採用。ミリ波レーダーを車両前後に配置し、ACC=アダプティブクルーズコントロール(前車追従型クルーズコントロースシステム)やBSD=ブラインドスポットディテクション(死角検知)、さらに前方衝突警告といった装備を実現して安全性能を飛躍的に高めている。
車両のメーターに表示させた場合も、ツーリングサポーターのナビゲーション画面に加えて、上部左側には走行可能距離・水温、右側にはスピードやギヤポジションが表示される。車両との完全連携が可能なところがmySPIN+ツーリングサポーターの大きなメリットだ。ツーリングサポーターはナビアプリとしてもとても使いやすく、ルート検索した場合、右上の図のように候補ルートを複数表示してくれる。
iPhoneの振動問題もこれで解消する
バイクのメーターがそのままナビ画面になるといいと思っていたライダーは多いと思いますが、今回のmySPINとツーリングサポーターの連携でそれが現実のものとなったわけです。
さらに、これによっていまiPhoneユーザーの間で話題になっている「振動問題」も解決できてしまいます。
昨年からSNSなどで多くの声が上がっていた、スマートフォンホルダーを利用してバイクにiPhoneをマウントしてナビとして使用していたら、iPhoneのカメラの調子が悪くなったという話をご存知の方もいらっしゃると思います。
これは、特定の周波数範囲で振幅が大きい振動 (とりわけ、バイクの高出力エンジンの振動) を iPhone が受け続けると、カメラシステムの性能が低下する(写真がブレたりピントが合わなくなる)おそれがあるというもので、アップルも2021年9月にそういうことが起こり得ることを正式に公表しました。
具体的には、光学式手ブレ補正(OIS)やクローズドループ方式のオートフォーカス(AF)などのカメラシステムを採用しているiPhoneで、そういう事象が発生する可能性があるとしています。
特に、高出力または大排気量のバイクでそのトラブルが発生する可能性が高く、逆に原付やスクーター、電動バイクなどは振動の振幅が低いためにトラブルが発生する可能性は低いとしながらも、バイクにiPhoneを取付けて使用する際は防振マウントを使用する、あるいは長期にわたる常用は控えるようにと警告しています。
ちなみに、アンドロイド搭載のスマートフォンではそういうトラブルは発生していないようですが、ここ日本においてはiPhoneの普及率は45%以上と言われています。
つまり、半数近くの人がiPhoneを使用しているわけで、この記事を読んでいらっしゃる読者の方もバイクにiPhoneを付けて、ナビ代わりにしている方はかなりいらっしゃるはず。ですから、iPhoneが使えないとなるとかなり問題で、ツーリングに出かけるのが不安になった方もいらっしゃるでしょう。
そういう事態を受けて、スマホホルダーを製作しているメーカーも、車体からスマートフォンに伝わる振動を軽減するための対策パーツをリリースし始めています。
現在のところ、クアッドロック、デイトナ(SPコネクト)、サインハウス(マウントシステム)が防振マウントを発売中で、どの商品も人気で品不足が続いているようです。それだけ、トラブルに遭った、あるいはトラブルの可能性を聞いて未然に防ごうという方が多いのですね。
しかし、このmySPIN+ツーリングサポーターの組合せならそんな心配はまったくの無用。mySPIN+ツーリングサポーターの連携はブルートゥース接続なので、スマホをバイクにマウントする必要がなく、iPhoneユーザーでも安心してナビアプリを使用できるのです。
スマホをナビとして使用している方にとって理想的なシステムですが、残念なのは、現在のところこのシステムを使用できるのは前述の2車のみ。
ホンダのゴールドウイング(写真)やアフリカツイン、NT1100、ハーレーダビッドソンのツーリングファミリーが採用するアンドロイドオート/アップルカープレイも、車両のメーターにスマホのナビアプリなどを表示することが可能だ。
ボッシュの6.5インチ・フルカラーTFT液晶多機能メーターは、BMW、ドゥカティの一部車種も採用していますが、現在のところツーリングサポーターには対応していなくて、「●●コネクト(●●にはメーカー名が入る)」と言うメーカー独自のアプリを用意するケースが多いようです。ただ、残念ながらドゥカティ以外は日本の地図に対応していなくて、実質的にせっかくの機能が使用できないようです。
同様のシステムに、一部のホンダ車やハーレーダビッドソンのツーリングファミリーのモデルがアンドロイドオート/アップル・カープレイで、スマホのナビを車両のメーターに表示できますが、まだまだごく一部の車種にとどまっています。
ツーリングサポーターの今後の対応機種拡大に関して、ナビタイムは「各社からのお話をいただき、技術的に対応可能なものであれば、今後も連携を検討していきたい」とのことでしたが、これから発売されるニューモデルに関しては、車両のメーターにナビゲーション画面が表示されるようなシステムを多くの車種が採用するようになって欲しいものです。
バイクにナビなんていらないと思う方もまだ多いかもしれませんが、ナビはただの道案内ではなく、安全装備でもあります。
知らない道を、道路標識頼りに走って、うっかりよそ見をしてしまい危険な目に遭うような事態も、ナビの音声案内があれば避けることができます。
今回のmySPIN+ツーリングサポーターの発表で、あらためて優れたエレクトロニクスがバイクの安全性向上に大きく寄与することを強く感じました。
※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
皮切りはスズキGSX-S1000GTだった! ボッシュは、ドイツに本社を置く総合サプライヤーで、日本に二輪車部門の開発センターを置くことでも知られている。今回のようなスマートフォン接続機能だけでなく、[…]
バイク専用デバイスホルダー「MOUNTSYSTEM(マウントシステム)」より、スマートフォンホルダー専用振動吸収ユニット『VIBRATION GUARD(バイブレーションガード)』を発売します。 製品[…]
ハンドルに装着する場合、パイプハンドル径を計測しよう 日本メーカー大半に採用されているパイプハンドルの径は22.2mm 。ハーレーはそれに比べ太く25.4mmだ。つまりは1インチ。国産モデルからの乗り[…]
電子制御が進化し、スマートフォン接続には専用アプリ「SUZUKI mySPIN」を初導入 スズキは新型スポーツツーリングモデル「GSX-S1000GT」をついに国内正式発表。先に欧州などで発表されてい[…]
全身アップデートのスーパーツアラー、さらなる安全性と利便性を獲得 カワサキならではのバランス型スーパーチャージドエンジンを搭載するスーパーツアラー「ニンジャH2 SX/SE」がモデルチェンジを果たした[…]
最新の記事
- 2025MotoGPヘルメット勢力図は5社がトップを分け合う戦国時代へ突入! 日本の3メーカーに躍進の予感!?
- 【SCOOP!】スズキ「GSX-8」系にネオクラが存在か!? 丸目のGS&クーリーレプリカ復活希望!!
- 「初の100ps超え!! 」全面改革で進化した第二世代のZ:カワサキZ1000J【あの素晴らしい名車をもう一度】
- 3色ラインナップ化! ホンダ「CT125ハンターカブ」歴代カラー大図鑑【2022年モデル】
- 【受注限定】SHOEI「グラムスター」に新色モスグリーン! 5月発売で全5色展開に
- 1
- 2