
もう、絶対に無理だと思っていた。弾ける高周波サウンド、そしてあの痛快なパワーを、もう一度新車で味わえるかもしれないなんて! イタリア語で“250”を意味する「ドゥエチンクワンタ」は、レプリカ世代の涙腺崩壊間違いなしのニューモデルだ! 前編の車両紹介に引き続き、後編では試乗インプレッションをお届けする。
●文:Klaus Nennewitz ●翻訳:小島聖美(KOJI&CO) ●写真:Marco Chilá ●取材協力:モータリスト合同会社
もう、絶対に無理だと思っていた。弾ける高周波サウンド、そしてあの痛快なパワーを、もう一度新車で味わえるかもしれないなんて! イタリア語で“250”を意味する「ドゥエチンクワンタ」は、レプリカ世代の涙腺[…]

【VINS MOTORS DUECINQUANTA STRADA|PROTOTYPE】■軸距1380各mm 車重105kg(乾燥) キャスター角23° ■水冷2ストV型2気筒クランクケースリードバルブ 249.5cc 内径×行程54×54.5mm 75hp/11700rpm 45Nm(4.59kg-m)/11700rpm 変速機形式6段リターン 燃料タンク容量12L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70-17 R=150/60-17 ●レース仕様車の参考価格:3万3000ユーロ(≒430万円) [写真タップで拡大]
フェラーリのエンジニアが”作りたいモノ”をカタチに
’90年代を最後に、公道を走れる2サイクルのオンロードバイクは途絶えている。それをまったくのオリジナルエンジンで作り出そうというプロジェクトに心を躍らせながら、イタリアはマラネロの地に試乗に赴いた。
フューエルインジェクションを備え、75hpを発揮する2軸クランク/90度Vツインの2サイクル250ccエンジンを搭載するこのバイクを作り上げたのは「ヴィンスモータース」。3人の野心的な若手技術者が集まり、オリジナルのエンジンをオリジナルの車体に積む、まったく新しいモーターサイクルを走らせる夢を実現させたのだ。
このプロジェクトは、ヴィンセンツォ・マッティア代表がフェラーリに在籍していたころから形作られていた。与えられた仕事の中で限界を感じていた彼が、独自性を追求しながら自宅で最初のプロトタイプを作り上げたのが’15年。ありものの2サイクルエンジンをベースに、シャーシを文字通り「(カーボンを)編み上げていく」手法で形にしたそれは、将来への自信へとつながり、’17年3月に3人はヴィンスを立ち上げたのだ。
2軸&同爆のVツインは超トルクフル&スムーズ!
今回試乗できたのは、ストリート仕様のカウルを用意し保安部品を付けた”公道用プロトタイプ”とも言える仕様。マシンは開発の最終段階にあり、厳しい排ガス規制”ユーロ5″に合格する目処も立っているという。
レースエキゾーストのままのマシンは、セルボタンを押すだけで簡単に目覚める。あの懐かしい2サイクルエンジンならではの振動と頼りないアイドリング。ブリッピングを行うと’90年代のモトクロッサーのようなサウンドが響くのは、360度同爆クランクならではだ。カジバ ミトを踏襲したというライディングポジションは、軽量なボディに低くセットされたセパレートハンドルがスポーツライディングにライダーを誘ってくれる。
クラッチを繋ぐと、ごく低回転から2サイクルらしからぬスムースさでマシンは加速し始めた。驚くほどのトルクの山! アクセルをひねれば力強く漸進的にパワーが湧き上がるが、’90年代に使命を終えた2サイクルのような2次曲線的パワー感とは異なり、スロットルに対してリニアにパワーが溢れ、それがレブリミットまで持続する。サーキット仕様のギヤボックスは1速で90km/hに達するほどロングだが、トルク任せのシフトアップを重ねてもエンジンは非常にフレキシブルなのだ。
これには100kgをわずかに超える程度に留められた車重も大いに貢献しているが、何よりも鋭いコーナリングこそが軽量なシャシーの真骨頂だろう。矢のようにコーナーの頂点へとマシンを導き、図太いトルクが恐ろしいほどの脱出加速を助けてくれる。独特のレイアウトのサスペンションは、やや硬質ながらスポーツライディングを存分に楽しませてくれる仕上がり。縦軸まわりの剛性感の高さは一般的なテレスコピック式フロントフォークでは到底実現し得ないもので、ホタホアン製のブレーキが発生する鋭いストッピングパワーを難なく受けとめる。
カーボンモノコックのシャーシは極めて高剛性で、その切れ味の鋭さは高速レーンチェンジなどで際立つが、ライディングの幅を狭めるほど硬いというわけではない。むしろ驚くほど軽快な切り返しを楽しみつつ、確実に地面を捉え続けるサスペンションとのバランスを楽しむ、スポーツライディングをたっぷり味わえる設定と言えよう。
ドゥエチンクワンタは、他のいかなるバイクとも異なる乗り味を楽しませてくれる逸品だった。車体は超軽量で鋭く意のままに操れるし、エンジンは極めてうまく調教されており、スロットルの開閉にわずらわしさを感じさせず、2サイクルが苦手とするパーシャルスロットルでもマシンの動きは落ち着いている。これほどまでに個性的で革新的な、しかし十分以上に実用的なマシンはないだろう。ホモロゲーションモデルのリリースが楽しみだ。
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