佐藤寿宏のレース通信

天国から地獄を味わったBabyFace、小室旭は待望のチーム初優勝!

5月22~23日に開催された全日本ロードレース選手権第3戦SUGOで、ようやく歯車が噛み合ってきたBabyFaceは初ポールポジションを獲得。公式予選までは順調でしたが……。


●文/写真:佐藤寿宏

濃霧での走行キャンセル、JSB1000のレース1中止

全日本ロードレース選手権第3戦SUGOが人数制限など新型コロナ対策をした上で開催されました。金曜、土曜と午後は濃霧のために走行がキャンセルされ、JSB1000クラスのレース1とJP250のレースが中止となってしまいました。

土曜日に行われたJSB1000クラスの公式予選では、雨が止み、路面が乾いて行く中、BabyFace Powered by YOSHIMURAの津田一磨がいち早くスリックタイヤに交換。路面コンディションを慎重に判断しながらペースを上げ見事ポールポジションを獲得しました。これは一磨自身にとっても、チームにとっても初めてのことでしたが、残念ながらレース1は中止。辻本聡監督は「BabyFace佐藤代表をポールポジションに連れて行きたかったなぁ」と語っていましたが…。レース2は、2番手グリッドからスタートした一磨でしたが、やや出遅れ6番手にポジションを落とし焦ったのか、3コーナー立ち上がりでハイサイド転倒。悔しいリタイアとなりました。

レース2は2番手グリッド。中止になったレース1は、予選順位でハーフポイントが与えられた。

BabyFace は、昨年からヨシムラのマシンを貸与されていますが、トラブル続きでなかなか結果を残せていません。今シーズンは、体制を一新。経験豊富なS Supplyの2人も加わり、ようやくうまく回ってきたところでした。JSB1000クラスは、次は第5戦鈴鹿になるので、そこでの走りに期待しましょう。

小室旭が待望の初優勝

J-GP3クラスでは、小室旭が待望の初優勝を飾りました。開幕戦では、うまくレースメイクができずに悔しい2位。今回は、最大のライバルである尾野弘樹が事前テストで負傷していただけに、勝たなければいけないレースでした。

ついに、ようやく勝っただけに喜びもひとしお。次戦の筑波ラウンドは、小室が得意としているコースだけにタイトル争う上で重要な1戦となる。

しかし、小室も事前テストからエンジントラブルを抱えていました。小室の駆るKTM RC250Rは、古市右京から譲り受けたもので、2014年式とかなりの型落ちです。RedBullルーキーズカップで使われていたマシンなので、耐久性重視なのでエンジンパワーを抑えた仕様になっています。それでも今の全日本レギュレーションでは、Honda NSF250Rよりストレートスピードでは、アドバンテージがあります。だからといって簡単に勝てないのがレース。小室は、昨年からSUNNY MOTO PLANNINGという新チームを応援してくれる人たちと立ち上げ、レース経験のないスタッフばかりで、タイトルまであと一歩という成績を残しました。今シーズンは、小室自身は、最後のフル参戦のシーズンと位置付け、チャンピオン獲得に挑んでいます。

改修された1コーナーは水が湧いている部分があり、ホールショットを獲るのが一番安全策と、小室は予定通りトップで1コーナーに入って行く。

予選は、ウエットコンディションでしたが、路面の状況は刻一刻変わっていました。コンディションがよくなる瞬間を逃さないために小室は、コースに居続けました。そしてセッション終盤にコンディションを把握すると1周1秒ずつタイムアップしていきポールポジションを獲得しました。

予選でもエンジントラブルを抱えたままでしたが、ウエットだったため何とかごまかせたと言います。この後、エンジントラブルの原因が分かり、決勝日朝のウォームアップ走行で確認すると、後はレースに臨むだけでした。

トップでチェッカーフラッグを受け、歓喜の表情を浮かべる小室。天国の母に勝ったことを真っ先に報告した。

尾野はケガをしていながら果敢な走りをしていました。小室はできれば尾野との間に他のライダーをはさみたかったが、目していたライダーが転倒してしまったため、最後は尾野との一騎打ちとなりました。最終ラップの攻防を冷静に制した小室は、快心の笑みを浮かべていました。

次戦は、ホームコースとも言える筑波ラウンド(6月19日・20日)。2レース制で行われるだけにタイトルを争う上で重要なレースになるのは間違いないでしょう。

ST600では18歳が全日本初優勝!

ST600は、18歳の荒川晃大が圧倒的な速さを見せ、ポールポジションから全日本初優勝を飾りました。事前テストでは、前人未踏の1分29秒台をマークする速さを見せていましたが、レースウイークに入ると初日に転倒があり、肋骨にひびを入れてしまっていました。

まだ荒削りな部分はある荒川晃大だが、新型CBR600RRの電子制御が、うまくマッチしているようだ。追った小山知良もビックリのライディングを見せている。

その痛みをこらえながら予選ではポールポジションを獲得し、決勝も3周目にトップに立つと、そのまま独走態勢に持ち込み、全日本初優勝を飾った。

地方選手権で別格の走りを見せ上がって来た荒川晃大も今年で全日本3年目。ついにタイトル争いを繰り広げるシーズンになりそうだ。

途中、荒川を逃がすまいと2番手に上がった小山知良は、9周目に転倒リタイアに終わっている。小山曰く、荒川のライディングスタイルは、コーナリングスピードが速く、小排気量クラスのような走りだと言う。その走りにリズムを崩した小山は、ハイポイントコーナーへの進入でブレーキのタイミングがずれ、タイヤをつぶしてグリップを出せなかったことから転倒したと分析していた。コーナリングスピードが高ければタイヤにも厳しい走りになるが、新型CBR600RRの電子制御が、荒川の走りにうまくハマっているようだ。


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