●編集:モーサイ編集部・上野茂岐 ●試乗レポート:阪本一史 ●写真:もがきかつみ ※当記事は『別冊モーターサイクリスト1999年1月』の記事「国産ビッグオフロードモデルの現在」を編集・再構成したものです。
スズキ「Vストローム1050」のデザインは、1988年のパリダカレーサー「DR-Z」と、その公道版モデルといえる「DR-BIG」がモチーフ。というか、DR-ZとDR-BIGを当時担当したデザイナーが、Vストローム1050開発チームに加わっている。ここでは、最終進化形DRビッグ(DR800S)の当時インプレッションを紹介したい。
スズキDR800S:油冷779cc単気筒エンジンの独特な世界
別名「デザートエクスプレス」、「砂漠を駆ける怪鳥」とも言われるDRビッグ(DR800S)には、第一に779ccシングルというエンジンに興味をそそられた。
SACS(Suzuki Advanced Cooling System)の油冷システムと2軸バランサーの採用で熱的問題と振動に対処しているが、それなりの荒々しさを期待できそうだと思ったからだ。なにせクチバシのようなアッパーカウルのスタイルは、十分戦闘的かつ個性的(しかもスタイリッシュ)だし、走りにもそれが反映されているはず──。
ところが、エンジン始動は拍子抜けするほど容易だった。オートデコンプが作動してくれるから、ライダーはイグニッションをオンにしてセルボタンを押すだけでいい。
もちろん一発で始動し、ガラガラガラとそれなりに大きなメカノイズはあるが、思ったより軽いクラッチをミートすると発進も苦ではない。ドッと出ることを覚悟(期待)して恐る恐る出ると、そんなに出ない。このエンジンは低回転からトルクがわき出るタイプでないのだ。
それにしても意外だったのは、足を着いて停止していない限りではDRビッグが「ビッグオフ」を感じさせないこと。
重心の低さ(=安心感)ではアフリカツイン750にかなわないものの、ライディングポジションは3車中最もコンパクト。それはシングルエンジンのメリットである前後長、幅ともコンパクトに造れることが生きているせいだ。この点において、僕は普段の足であるXLR250から乗り替えても違和感がなかった。
かように「ビッグ」と名付けられながらもコンパクトなDRビッグだが、エンジン特性は当然250トレールバイクと比べるべくもない。60km/h以下といった日本の一般道レベルでは、「そんな速度で走るな」と主張するようにモガく。ギクシャクするのだ。ギヤリングが概ねハイギヤードなせいもあるだろう。とりわけハイギヤードな4~5速には入らず、街なかでは3速以下、交差点の曲がり角では2速でも高い印象である。
しかし、こんなせせこましい場所でのレポートはDRには反則かもしれない。なにせデザート(砂漠)とハイウェイでのエクスプレスが本分だからだ。
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