並列とV型って何が違うの?

バイク選びはエンジンで決まる?! 今さら聞けない『気筒数とクランク位相』の話

  • 2021/1/5

●文:山下剛

バイクは車重に対するエンジン出力やエンジン重量の占める割合が高い。さらに操縦するライダーと動力源の距離が極めて近いことから、エンジンの出力特性やバイブレーションによってバイクの印象は大きく変わる。そんな“バイクのキホン”とも言えるエンジンの『気筒数とクランク位相』について解説していこう。ここで取り上げるのは現代の一般的な4ストロークエンジンとし、2ストロークは割愛させてもらった。

気筒=シリンダーの本数と並べ方で、エンジン特性は大きく変わる!

エンジンの仕組みをごくカンタンに説明すると、ガソリンと空気を混ぜ合わせた混合気に火をつけて爆発(正しくは燃焼)させたときに発生する、気体が膨張する力を物を動かす力に変える機械だ。ひと言でいうと、エンジンは熱エネルギーを機械エネルギーに変換する装置だ。

ホンダ CRF250L(従来型)の単気筒エンジン・カットモデル。

熱エネルギーを機械エネルギーに変えるためには、爆発の衝撃と圧力上昇に耐えられる密閉空間が必要だ。この空間を持つ部品のことをシリンダー(気筒)という。

シリンダーが1つのエンジンを単気筒といい(1気筒とはいわない)、これがエンジンの基本形だ。バイクのエンジンでは現在、単気筒、2気筒、4気筒が主流になっていて、この他にトライアンフ、MVアグスタ、ヤマハには3気筒エンジンもあり、ホンダとBMWは6気筒エンジンを作っている。マイナーな存在ながら、アメリカのボスホスは8気筒エンジンを搭載するバイクを生産している。

単気筒エンジンはシリンダーが1つなので、構造がシンプルだ。まずは単気筒エンジンを例に、エンジンの構造を説明しよう。

エンジンの核といえる部分を大まかにいうと、シリンダー、ピストン、コンロッド、クランクシャフトで構成されている。

KTM・990アドベンチャー(2011年モデル)のクランク、コンロッド、ピストン。この機種はVツインエンジンだ。 [写真タップで拡大]

同じくKTMの790アドベンチャー(2019年モデル)のシリンダー。こちらは並列2気筒エンジン。 [写真タップで拡大]

シリンダーは前述したように混合気を爆発させるための密閉した空間を持つ部品で、その空間のことを燃焼室という。

ピストンは燃焼室内を上下に動く部品で、爆発した混合気が膨張する力で動く。つまり熱エネルギーを受け止め、機械エネルギーを生み出す第一線の部品だ。

クランクシャフトはピストンの上下(往復)運動を回転運動に変える部品だ。そのためシャフト(軸)といっても真っ直ぐな棒ではなく、コの字状に屈曲している。ちなみにエンジン回転数とはクランクシャフトの回転数のことで、クランクシャフトが1分間に何回転するかを示した数字だ。

コンロッドはピストンとクランクシャフトをつないでいる部品のことをいう。

エンジンは単気筒よりも2気筒、2気筒よりも4気筒のほうが排気量を増やしやすく、また高回転まで使うことができるようになり、それに伴い出力(パワー)も上がる。さらに振動を小さくできる。

そのぶん部品点数が増えて複雑になるし、エンジンは大きくなって重くなる。設計や組立にも手間がかかり、生産コストが高くなる。

そうしたことを踏まえるともっともバランスに優れるのが2気筒エンジンで、現在は国内外を問わずほとんどのメーカーが生産しており、バイクのエンジンは2気筒が主流となっている。

シリンダーが1つ増えるとエンジンの仕組みはより複雑になる。まずは2つのシリンダーの並べ方(気筒配列)をどうするかだ。

2気筒の配列方式は主に、この3種類がある。

・並列(直列)
・V型
・水平対向

これらの特徴をひとつずつ見ていこう。

並列エンジンとは、シリンダーを横に並べて配置する方法だ。進行方向に対して横方向にシリンダーを配置することから並列(パラレル)という。しかしクルマでは直列と呼ぶことが一般的なため、メーカーによっては直列と明記している。どちらもシリンダーを一直線上に並べていることに違いはなく、バイクでは並列と直列は同じ意味と考えていい。日本4メーカーをはじめ、トライアンフ、MVアグスタ、KTM、ロイヤルエンフィールドなどが得意としている。

・エンジン前後長が小さい(短い)
・部品点数が少ない
・出力特性を自由に設定しやすい

ホンダCBR250RR(2017年モデル)の並列(直列)2気筒エンジン。

V型エンジンとは、2つのシリンダーをV字状に配置する方式だ。並列と比べてエンジン全体をコンパクトにしやすい特徴がある。また、V字の角度(シリンダー挟み角、またはバンク角ともいう)によってエンジンの外観や出力特性に変化をつけられる。ハーレーダビッドソンの45度、ドゥカティの90度が有名だ。ドゥカティの場合は、VよりもLに形状が似ていることからLツインとも呼ぶが、あくまでV型エンジンの一種だ。この他に、インディアン、モト・グッツィ、アプリリア、KTMが得意とし、もちろん日本4メーカーも多数のV型エンジンを作っている。

・エンジン幅が小さい(狭い)
・ピストン往復運動の振動を消しやすい
・外観に個性を出しやすい

スズキ Vストローム1000(2017年モデル)のV型2気筒エンジン。

水平対向エンジンとは、クランクシャフトを中心にシリンダー同士が向き合う気筒配列のことだ。フラットツインともいう。2つのピストンが互いにぶつかり合うように動き、その様子がボクシングの拳の打ち合いに似ていることからボクサーエンジンとも呼ばれる。構造的に振動が少ないが、エンジンサイズがかさばる。BMWのお家芸といえる方式で、現行車ではウラルとホンダ・ゴールドウイング(ただし6気筒)だけが水平対向エンジンを載せている。

・エンジン全高が小さい(低い)ため低重心
・ピストン往復運動の振動が少ない
・エンジンの冷却効果が高い

BMW R1200GS(2011年モデル)の水平対向2気筒エンジン。

ピストンの位置がズレている?! 位相角のヒミツ

そして2気筒以上のエンジンにおいて、出力特性やトラクションを決定づけるのがクランク位相だ。クランク位相とは、AとBのシリンダーで発生する爆発(燃焼)のタイミングを決めるもので、同時にピストン往復運動のタイミングも決まる。

クランク位相の話をする前に、4ストロークエンジンの工程についておさらいするとともに、クランク角のことを説明しよう。

ご存知のとおり、4ストロークエンジンとは

吸気
圧縮
爆発(燃焼)
排気

という4工程で1サイクルとなる。単気筒エンジンなら、この4工程は1つのシリンダーのみで行われる。そしてもちろん、2気筒以上になれば2つ以上のシリンダーでこの工程が同時に進行している。

同時進行といったが、完璧に同時進行させるなら多気筒化の意味がない。なぜなら単気筒の特性と変わらないエンジンになってしまうからだ。

そのため2気筒エンジンでは、2つの工程を微妙にずらしている。このずれの度合いをクランク位相(クランク角)という。

ホンダNC700シリーズ(2012年モデル)のクランクは並列2気筒エンジンながらツイストされ、後述する270度位相クランクとされた。

クランク位相の代表的なパターンを、並列2気筒エンジンを例に見ていこう。

基本形となるのは360度位相クランクだ。この場合、AとBの2つのピストンは同時に往復運動する。しかし、爆発はAとBで交互に行っている。そのためそれぞれのピストンの動きを比較するとこうなる。わかりやすくするため、ピストンAの1工程目を爆発にする。

ピストンA  ピストンB  クランク回転角度
1. 爆発    1. 吸気    0度
2. 排気    2. 圧縮   180度
3. 吸気    3. 爆発   360度
4. 圧縮    4. 排気   540度

爆発タイミングをこうしてずらすことで、1サイクルで2度の爆発を起こし、2気筒化のメリットを生んでいるわけだ。

ではなぜ、この爆発パターンを360度というのか。

上記のクランク回転角度とは、クランクが何回転したかを角度で示したものだ。エンジンがこの4工程(1サイクル)をこなすとき、ピストンは2往復し、クランクシャフトは2回転する。これを度数で表すと、1回転は360度。すなわち1サイクルするとクランクシャフトは720度回転することになる。

これを踏まえると、ピストンAとピストンBの爆発タイミングが360度ずれていることがわかる。つまり2つのシリンダー内で360度毎に爆発が起きているわけだ。
並列2気筒エンジンではこの他に、180度と270度の位相クランクがメジャーだ。180度ではピストンAが爆発してから180度でピストンBが爆発する。わかりやすくするため2サイクル(1440度)まで並べてみよう。

ピストンA  ピストンB  クランク回転角度
1. 爆発    1. 圧縮   0度
2. 排気    2. 爆発   180度
3. 吸気    3. 排気   360度
4. 圧縮    4. 吸気   540度
5. 爆発    5. 圧縮   720度
6. 排気    6. 爆発   900度
7. 吸気    7. 排気   1080度
8. 圧縮    8. 吸気   1260度
9. 爆発    9. 圧縮   1440度

1回目から2回目までの爆発間隔は180度になるが、2回目から3回目は540度まで間隔が開く。そのため爆発間隔はダダッ・ダダッ・ダダッというリズミカルになる。こうした位相クランクを不等間隔爆発ともいう。対して360度位相クランクは間隔が一定のため、等間隔爆発という。

これを踏まえると、270度位相クランクはこんな具合になる。

ピストンA  ピストンB  クランク回転角度
1. 爆発    1. 吸気   0度
2. 排気    2. 圧縮   90度
3. 吸気    3. 爆発   270度
4. 圧縮    4. 排気   450度
5. 爆発    5. 吸気   720度
6. 排気    6. 圧縮   900度
7. 吸気    7. 爆発   990度
8. 圧縮    8. 排気   1170度
9. 爆発    9. 吸気   1440度

1回目から2回目までの爆発間隔は270度で、2回目から3回目は450度の間隔が開く。爆発間隔はダダン・ダダン・ダダンというイメージで、数字が示す通り180度と360度の中間的な特性になる。また、360度と比べて90度位相がずれた270度は、90度V型2気筒と同じ爆発間隔となる。

クランク位相の違いによって、並列2気筒エンジンの特性も変化する。
・360度 ピストンが同時に往復するため振動が大きい
     低~中回転域で有利な特性
     振動を抑制するバランサーが必要
・180度 ピストンが交互に往復するため振動が小さい
     高回転域まで伸びる特性だが低回転でやや不利
・270度 ピストンがずれて動くため振動はやや大きめ
     高回転で有利な特性
     不等間隔爆発の特性が良好なトラクションを発生

270度、180度、360度それぞれの爆発間隔。これらの違いがフィーリングを大きく変化させる。

それぞれの特性を生かすため、同じエンジンでもモデルによってクランク位相を変えるケースも多い。トライアンフはかつてボンネビルの並列2気筒エンジンで、ボンネビルT100は360度、スクランブラーは270度としていた(現在は270度で統一)。

並列2気筒エンジンの270度クランク位相を初めて採用したのはヤマハ・TRX850で、トルクの山と谷間を感じやすく、なおかつV型2気筒のような鼓動感を味わえることが特徴だ。これはヤマハがパリ・ダカールラリーに参戦していたワークスマシンで開発された技術で、砂漠における良好なトラクションを意図したものだ。

古いところでは、ホンダが1961年に発売したCB72は、タイプ1を180度位相クランクの高速型、タイプ2を360度位相クランクの低中速型として、同じ並列2気筒エンジンを使い分けていた。

現在は2気筒らしい鼓動感を主眼として、多くの並列2気筒エンジンに270度位相クランクが採用されている。

並列2気筒エンジンを搭載する現行モデルのうち、代表的なもののクランク位相はこんなふうになっている。

・360度=カワサキ・W800、メグロK3

・180度=カワサキ・Ninja650/400/250、ホンダ・CBR250RR、CB400X、ヤマハ・YZF-R25/R3、スズキ・GSX250R

・270度=トライアンフ・ボンネビルシリーズ、ホンダ・NC750X/S、CRF1100Lアフリカツイン、ヤマハ・MT-07、BMW・F750/850シリーズ

ちなみに、メーカーが公表しているスペック表にクランク位相が記載されることはほとんどない。しかしバイク雑誌やウエブサイトの試乗インプレッション記事ではクランク位相について記載されていることも多いので、並列2気筒エンジンのモデルを選ぶ際は参考にしてみるといいだろう。


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