「著しい交通の危険」が適用される場面とは

妨害運転罪の摘発/逮捕実例に見るポイント〈あおり運転”加害者誤認”回避マニュアル#4〉

妨害運転罪の摘発/逮捕実例に見るポイント〈あおり運転"加害者誤認"回避マニュアル〉

●文:ヤングマシン編集部(田中淳磨) ●イラスト:田中 斉

’20年6月30日に「妨害運転罪」が施行された。だが実際には何に気をつければいいのかよく分からない状況だろう。取り締まりの基準は? 法律の問題点は? 本特集では、これらの疑問を解決すべく、警察や弁護士にも徹底取材を行った。本記事では妨害運転罪の摘発/逮捕実例を見ながらそのポイントを解説する。

【事例1:東京都】初適用! クラクションを約2分間鳴らし続け、自分の車を被害者の車の前に割り込ませて通行を妨害

妨害運転罪の摘発/逮捕実例に見るポイント〈あおり運転"加害者誤認"回避マニュアル〉

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妨害運転罪が施行されたまさにその日、’20年6月30日17時半頃、江戸川区の環状7号線で、トラック(42歳男性)が前走車の軽乗用車(24歳男性)との車間距離を約4.5mにまで詰めて、約1.3kmにわたり追走した。その際、約2分間にわたってクラクションを鳴らし続け、その後に軽自動車の前に割り込んで停車させた後、路上で怒鳴りつけるなどした。トラックの運転手は「後ろから来た軽自動車に車間距離を詰められてカッとなった」と供述している。なお、あおり運転が撮影されていたのは加害者のトラックに装着されたドライブレコーダーであり、それが証拠となってしまった。

【事例2:大分県】初の逮捕! クラクションを鳴らしながら急接近する行為を約3km繰り返し、被害者の車の進路に割り込んで接触

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全国初の逮捕事例。’20年7月10日22時頃、別府市内の国道10号線で、乗用車(46歳男性)が軽自動車(20代男性)に対し、クラクションを断続的に鳴らしながら後方約3mまでの急接近を約3kmにわたり繰り返し、軽自動車の進路に割り込んで急ブレーキをかけて接触させた。さらに男性の肩や首をつかんで暴行を加え、「包丁で刺すぞ」と脅した。7月23日に暴行罪と脅迫罪の容疑で逮捕/起訴、8月18日には妨害運転罪の疑いで再逮捕された。この事故では双方ともにドライブレコーダーを付けておらず、8月23日に実況検分が行われ、容疑者を同乗させた捜査車両であおり運転の状況が確認された。

【事例3:千葉県】県内初摘発! 前走車の前に割り込んで急ブレーキをかけて停車させ、交通の危険を生じさせた

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’20年7月17日18時頃、千葉市の国道16号線で乗用車(30歳男性)が前走する乗用車(22 歳男性)の前方に割り込んで急ブレーキをかけ急停止させた。30歳男性はT字路で右折しようとした時、右から来た車が渋滞で進路を防いだためクラクションを鳴らし、右折をやめて左折して追走、妨害行為を続けた。千葉県警は交通量の多い国道で大事故につながった可能性があったことを踏まえ、より罰則の重い「著しい危険(5年以下の懲役または100万円以下の罰金/違反点数35点/即時免許取り消し)」と認定し書類送検。「著しい交通の危険」としては全国初の適用となった。

どの実例も10類型を複数犯している

上に示した3つの事例は、妨害運転罪の施行後に耳目を集めた摘発の事例だ。どの事例の加害車も10類型の違反を数種類犯してあおった上で、相手の車(被害車)を停止させ、「道路における交通の危険を生じさせるおそれ」を発生させている。これがポイントだ。

中でも千葉県内で初摘発となった事例3では、妨害運転罪の中でもより重い罰則が適用された。国道16号線という首都圏でも交通量の多い幹線道路で他車をあおったという行為が妨害運転罪と認定された上で、「道路における著しい交通の危険を生じさせた(注:”おそれがあった”ではなく”生じさせた”)」ことが「著しい交通の危険」となる妨害運転罪の国内初適用となった。

道路上で停車させて怒鳴りつける/暴行するなど、どれも明らかに悪質な行為であり、妨害運転罪以外にも暴行罪等が適用されている事例もあるが、加害者はまず自分が被害を受けた(迷惑をこうむった)と感じている点にも注目したい。そうした怒りやイライラでカッとなってしまうのは、車に乗っていて気が大きくなっているからかもしれないが、バイクの場合はそうはいかない。車の前に割り込んで急停車させようと急ブレーキをかけても、接触した瞬間にライダーは無事では済まないからだ。

だからこそバイクに乗るライダーは、挑発されたりあおられたと感じても、4輪の運転時より冷静さを保つべきだ。怒りの感情をコントロールする”アンガーマネジメント”として、よく「6秒待とう、数えよう」と言われるが、それに加えて自身の理性と冷静さを保つためにも、ドライブレコーダーは装着しておいた方がよいだろう。

次ページでは、数々の交通事故や道路交通法違反に関する弁護を行い、事故や違反の要因分析もされている交通関係のスペシャリストに、妨害運転罪について伺った。


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