●文:ヤングマシン編集部(田中淳磨) ●イラスト:田中 斉
’20年6月30日に「妨害運転罪」が施行された。だが実際には何に気をつければいいのかよく分からない状況だろう。取り締まりの基準は? 法律の問題点は? 本特集では、これらの疑問を解決すべく、警察や弁護士にも徹底取材を行った。本記事では妨害運転罪の摘発/逮捕実例を見ながらそのポイントを解説する。
複数の違反行為をすると妨害目的と見なされやすい? '20年6月30日に妨害運転罪が施行されて以降、各地で摘発は続いていたが、初逮捕となったのは8月18日の大分県での事例だ。施行後ずいぶん日が経っている[…]
【事例1:東京都】初適用! クラクションを約2分間鳴らし続け、自分の車を被害者の車の前に割り込ませて通行を妨害
【事例2:大分県】初の逮捕! クラクションを鳴らしながら急接近する行為を約3km繰り返し、被害者の車の進路に割り込んで接触
【事例3:千葉県】県内初摘発! 前走車の前に割り込んで急ブレーキをかけて停車させ、交通の危険を生じさせた
どの実例も10類型を複数犯している
上に示した3つの事例は、妨害運転罪の施行後に耳目を集めた摘発の事例だ。どの事例の加害車も10類型の違反を数種類犯してあおった上で、相手の車(被害車)を停止させ、「道路における交通の危険を生じさせるおそれ」を発生させている。これがポイントだ。
中でも千葉県内で初摘発となった事例3では、妨害運転罪の中でもより重い罰則が適用された。国道16号線という首都圏でも交通量の多い幹線道路で他車をあおったという行為が妨害運転罪と認定された上で、「道路における著しい交通の危険を生じさせた(注:”おそれがあった”ではなく”生じさせた”)」ことが「著しい交通の危険」となる妨害運転罪の国内初適用となった。
道路上で停車させて怒鳴りつける/暴行するなど、どれも明らかに悪質な行為であり、妨害運転罪以外にも暴行罪等が適用されている事例もあるが、加害者はまず自分が被害を受けた(迷惑をこうむった)と感じている点にも注目したい。そうした怒りやイライラでカッとなってしまうのは、車に乗っていて気が大きくなっているからかもしれないが、バイクの場合はそうはいかない。車の前に割り込んで急停車させようと急ブレーキをかけても、接触した瞬間にライダーは無事では済まないからだ。
だからこそバイクに乗るライダーは、挑発されたりあおられたと感じても、4輪の運転時より冷静さを保つべきだ。怒りの感情をコントロールする”アンガーマネジメント”として、よく「6秒待とう、数えよう」と言われるが、それに加えて自身の理性と冷静さを保つためにも、ドライブレコーダーは装着しておいた方がよいだろう。
次ページでは、数々の交通事故や道路交通法違反に関する弁護を行い、事故や違反の要因分析もされている交通関係のスペシャリストに、妨害運転罪について伺った。
※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
複数の違反行為をすると妨害目的と見なされやすい? '20年6月30日に妨害運転罪が施行されて以降、各地で摘発は続いていたが、初逮捕となったのは8月18日の大分県での事例だ。施行後ずいぶん日が経っている[…]
あおり運転の対象となる10類型 (1) 対向車線からの接近や逆走を行う[通行区分違反|道路交通法第17条第4項] (2) 後続車に対して不要な急ブレーキをかける[急ブレーキ禁止違反|道路交通法第24条[…]
耳目を集める事件が厳罰化につながった '20年6月に創設され、徐々に摘発が増えてきた「妨害運転罪」。厳罰化につながったのは、'17年6月に起きた東名高速道路でのあおり運転事故がきっかけだ。あおった末に[…]
10の違反が「あおり行為」として厳罰化 今まで明確な罰則規定のなかった「あおり運転」を定義付けした改正道路交通法が'20年6月30日から施行される。また7月2日から自転車でのあおり運転を「危険行為」と[…]
「あおり運転」を新たに規定して罰則を設ける道路交通法改正案が3月3日、閣議決定された。今まであおり運転を直接取り締まる規定はなかったが、法案では「通行を妨害する目的で特定の違反を繰り返すなどの行為」と[…]