●文:ヤングマシン編集部(田中淳磨)
’20年6月30日に「妨害運転罪」が施行された。だが実際には何に気をつければいいのかよく分からない状況だろう。取り締まりの基準は? 法律の問題点は? 本特集では、これらの疑問を解決すべく、警察や弁護士にも徹底取材を行った。加害者にも被害者にもならないための運転や装備についても紹介する。まずはこの妨害運転罪が生まれた背景とその罰則内容について解説する。
耳目を集める事件が厳罰化につながった
’20年6月に創設され、徐々に摘発が増えてきた「妨害運転罪」。厳罰化につながったのは、’17年6月に起きた東名高速道路でのあおり運転事故がきっかけだ。あおった末に被害者を停止させ、後続のトラックが追突して4名の死傷者が出た。また、’19年には常磐自動車道で被害者をあおり、運転手を殴打する事件も発生。この映像はSNSに発信され、テレビでも大きく扱われたことから耳目を集めた。そして’20年6月2日、国会で改正道路交通法が可決成立し、同月30日から施行されたのだ。
それまでは、重大事故にならなくても道路交通法違反や刑法の暴行罪(相手に直接手を出さなくても可能性だけで該当)、さらには相手が負傷又は亡くなった場合には危険運転致死傷罪や殺人罪といった刑罰が科せられてきた。他車に接近して幅寄せなどすれば暴行罪となり、罰金刑であっても前科がついたのだ。つまり、以前も決して甘かったわけではなかったのだが、後にドライブレコーダーやアクションカムが普及し映像を手軽にSNSにアップできるようになった結果、「実はここまでひどい状況だった」ことが世間に広く知られるようになったのが大きい。
バイクについて言えば、’97年より大型二輪免許が教習所で取れるようになって以降、休日の高速道路には常に大型バイクがあふれている。中には、追越し車線を前走車にぴたりと追走したり、渋滞の間をすり抜けたり、左側追い越しを繰り返すような行為も見受けられる。一般道でもしかりだ。
今どきはそうした姿を録画され、「このバイクにあおられました」といつ何どき投稿/通報されてもおかしくない。自分の運転がどこまでセーフでどこからがアウトなのか、意図せず加害者にならないためには「妨害運転罪」についてよく知っておく必要がある。
妨害運転罪とは?
「妨害運転罪」とは、ひと言で表わせば「他車を妨害する目的で、対象となる道交法違反を行い、道路交通に危険を生じさせる運転」のこと。
令和2年6月30日の道路交通法改正により創設された、いわゆる”あおり運転”に対する罰則。他車を妨害する目的で、車間距離不保持/急ブレーキ禁止違反など一定の違反(10類型の違反)行為をし、”道路交通に危険を生じさせるおそれ”があった場合に取り締りの対象となり、下記の罰則が課せられる。
- 妨害運転(交通の危険の恐れ)
3年以下の懲役または50万円以下の罰金
違反点数25点
運転免許の取消し(欠格期間2年、前歴や累積点数がある場合には最大5年)
さらに、違反行為により妨害運転罪に該当し、それにより高速道路等で他車を停止させるなど周囲の”道路交通に著しい危険を生じさせた”場合には、さらなる厳罰が課せられる。この場合、酒酔い運転と同じく反則点数は35点となり、免許取り消しのうえ3年間は免許を再取得できなくなる。具体的な罰則は以下の通りだ。
- 妨害運転(著しい交通の危険)
5年以下の懲役または100万円以下の罰金
違反点数35点
運転免許の取消し(欠格期間3年、前歴や累積点数がある場合には最大10年)
次ページでは、あおり運転の対象となる10種類の違反について解説する。
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