日本車の絶頂期だった’80年代の名車たちに“高騰”の波が押し寄せている。超プレミアマシンと化した’70年代車のような状況ではまだないものの、現実的な価格で入手できる時間的猶予はそう長くないだろう。本記事では映画『トップガン』で人気を博した、カワサキ GPz900Rの状況を中心にレポートする。
※本記事に掲載されている車両価格等は、取り扱い店舗における’20年6月時点の情報です(関連写真提供:グーバイク)。
GPz900R:今後も永きに渡って人気銘柄になる初代忍者
各社のフラッグシップスポーツが1100ccクラス中心だった時代に、908ccと排気量では劣るものの、完全新設計された水冷4バルブでコンパクトな4気筒エンジンを搭載し、”最速”の座に就いたのがGPz900Rだ。
二輪車用エンジンとしては当時まだ非常に珍しかったサイドカムチェーン方式を採用。これによりエンジンを軽量かつナローに仕上げ、吸排気効率の向上も達成した。大排気量車でダイヤモンドフレームを採用するのもカワサキ初。メイン部は高張力鋼管製で、エンジンを強度メンバーとして活用する。
初代は’84年型で、北米仕様には「ニンジャ」のペットネームが与えられ、これがニンジャの起源となった。’86年に公開され、その年の全米興行成績1位および翌年度の日本洋画配給収入1位を記録したアメリカ映画『トップガン』で、主演のトム・クルーズ演じるマーヴェリックの愛車として登場すると、ニンジャ人気はさらに高まった。そして’90年代には、”漢・カワサキ”を象徴する硬派なモデルの代表格になる一方で、カスタムベース車としても非常に高い支持を集めた。
’03年型まで生産されたが、それでも生産終了から20年近い。人気度も考えると、今後の値上がりは必至か……。
GPz900R 各年式のポイント
1. ’80sモデル:初期はフロント16インチ
一般ユーザー間でもA1~16の型式で年式が表されることが多い。’93~’97まではA10が継続され、それ以外は1年ごとにひとつ番号が上がる。初代開発時はタイヤサイズの定番が決まる過渡期にあり、A1~6まではフロント16インチ/リヤ18インチだった。
トップガンはA2
映画「トップガン」に登場したのは’85年型(=A2)。ただしアンダーカウルや各部ロゴが廃され、GPz750R専用色に塗られていた。
2. ’90sモデル:前後17インチ化
16年間でもっとも大きな変更を受けたのはA7。前輪が17インチ化され、前後ともタイヤがワイド化された。前ブレーキキャリパーは片押し1ポットから対向4ポットとなり、フロントフォークも刷新。その他、変更は多岐にわたる。A8で国内仕様登場。
3. 最終仕様:6ポット&ラジアルタイヤ
A12では、フロントブレーキキャリパーが対向6ポットに。リヤショックがガス封入式となり、リンク比が変更され、タイヤはラジアル化された。国内仕様は、このまま’02年まで生産された。海外向けはマレーシア仕様のみで、A16が最終型となった。
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