新型コロナ禍の影響でレースも練習もままならない中、3密を避けてバイク通勤しているレーサー・岡崎静夏さん。今回の相棒は、’17年のデビュー当時から大好きだというホンダX-ADVだ。その試乗インプレッションレポート前編をお届けする。
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岡崎静夏(おかざき・しずか):チャーミングな笑顔でも中身はスパルタンな「バイクフリーク」。’09〜’10年、MFJレディースロードレースで2年連続王者に。全日本はGP-MONOを経て’12年からJ-GP3に参戦中。
【ホンダ X-ADV】EICMA2015でコンセプトモデルが公開され世界の注目を集めると、翌年のEICMAで市販バージョンが登場。DCTを搭載してコミューターの利便性とアドベンチャーモデルの運動性を掛け合わせたX-ADVは’17年に日本デビューを果たし、新しいジャンルを切り開いた。
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【’20 HONDA X-ADV】主要諸元 ■全長2230 全幅910 全高1345 軸距1580 シート高790(各mm) 車重238kg ■水冷4スト直列2気筒OHC4バルブ745cc 最高出力54ps/6250rpm 最大トルク6.9kg-m/4750rpm 電子制御6段(DCT) 燃料タンク容量13L ■タイヤサイズF=120/70-17 R=160/60-15 ●価格:126万3900円(マットビュレットシルバー)/129万6900円(グランプリレッド、マットアーマードグリーンメタリック) ※試乗車両はリアキャリア&トップボックスのベースを装着。
このバイク、本当の意味で幅広く楽しめる!
物心ついてから、ずっとレースをしてきました。だからいつも忙しくて、のんびりしたことがありません……。
でも、さすがにこの新型コロナ禍の影響でレースも開催されず、練習も満足にできない日々。時間があることに慣れていなくて、先日はついにお腹を壊してしまいました(笑)。我ながら意味が分かりませんが、それぐらいいつもとは違う日々を過ごしています。
でも幸いなことに、自分はいつも職場までバイク通勤。しかもNTRのタイヤウォーマーを作っているので、仕事でバイクの雰囲気に触れていられる分だけ、まだいいかな……。
最近は、このX-ADVで通勤してみましたが、これがまた自分の好きな「単車感」が満載なんです! 車格はちょっと大きめですが、ビッグスクーターにありがちなもっさり感がまったくなくて、機敏そのもの。街中もスポーティに走れます。
車体がしっかりしていることと、DCTの恩恵も大きいですね。クラッチレバーのないATでラクラクなんですが、走行フィーリングはMTのようにダイレクト。これがX-ADVの単車感を増している理由だと思います。
前後方向をギュッと絞った塊感のあるボディとロングストロークなサスペンションが、アドベンチャーテイストをアピール。エッジを利かせたデザインは、上質さをスポーティさを表現している。
「アドベンチャーモデルと銘打っているだけあって、シート高は790mmとなかなかの高さ。158cmの私には足着きがややキツめですが、両足で支えられるので不安はありません。走り出してしまえば快適そのもの。特に男性はゆったり乗れるはずです」(岡崎さん)
あ、ちなみに「単車感」って、バイクらしいって意味。自分はバイクらしいバイクが好きで、それが単車感なんです。X-ADVは完全に単車ですね。何しろ駆動がドライブチェーンですからね〜。単車感への相当なこだわりが感じられるのは、私だけ?
エンジンはかなり速くて、スタートダッシュも強力! か弱い女子(笑)の自分だと、街中のストップ&ゴーはちょっと持て余し気味になるほどです。
でも、怖いと思うことはありません。これはマイルドなエンジン特性と、ポジションのおかげじゃないかな。スーパースポーツのようにガッツリとフロントに体重を預けるわけじゃなく、スクーターライクでアップライトなポジションだから、基本的に快適だし、操作しやすいんです。
前のめりじゃないから、加減速で前後ピッチングが起きても不安感がありません。最初に”機敏”と言いましたが、安心して楽しめる範疇っていうのが絶妙です。
あ〜、バイクの話は楽しいな!!
カラーバリエーションは左からマットビュレットシルバー、グランプリレッド、マットアーマードグリーンメタリックの3色。
独自制御のDCTで快適かつスポーティ
直列2気筒745ccエンジンにDCTを搭載するというパッケージは、NC750Xと同様。クラッチ操作不要で快適かつダイレクトなライディングが可能だ。X-ADVでは、リヤタイヤサイズやファイナルドリブンスプロケットのサイズ変更によりローレシオ化。DCT制御のチューニングにより、アップダウンのあるワインディングも楽しめる。
また、都会的でスタイリッシュなデザインのスイングアームを採用。クロス部は中空、アーム部はコの字断面として剛性等にも十分配慮されており、路面の悪い舗装路やフラットダートを軽快に走り抜ける。街にも似合うスタイリングと、郊外にマッチするパフォーマンス。X-ADVらしいキャラクターは、スイングアームにも貫かれている。
コミューターらしい扱いやすさがベース
見通しの効くアップライトなポジションは、街乗りでの快適性を追求したもの。ハンドル切れ角は39°と大きく、取り市街地での小回りに配慮。最低地上高は135mmの高さで、段差などを乗り越えやすい設定だ。高速道路での安定性とスポーティな軽快さを両立させたジオメトリーで、幅広いシーンで楽しいX-ADVのキャラクターを醸成している。
(左)初期作動がスムーズで乗り心地は非常に快適。オフロード車っぽい味付けになっている。倒立フロントフォークは伸減衰が調整可能。フロントブレーキはラジアルマウントだ。(右)リアサスペンションはプロリンクで、こちらもソフトな設定で乗り心地は良好。プリロードのセッティングが変更できるのもイイ。ちなみにブレーキはABSを標準装備。
「ハンドル幅が広くて右手側が遠くなることさえ気を付ければ、ビッグバイクとしては一般的です」(岡崎さん)
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次ページでは、岡崎静夏さんがX-ADVに試乗。そのインプレッションをお届けする。
●まとめ:高橋 剛 ●写真:楠堂亜希 ●取材協力:ホンダモーターサイクルジャパン ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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