’19年に発売されたトライアンフのスクランブラー1200XCに試乗。ボンネビルT120の脚長版という枠を越えた、本格デュアルパーパスモデルに仕上がっている。
●文:大屋雄一 ●写真:真弓悟史 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
[◯]スムーズなサスペンションに感動。旅バイクとしても優秀
トライアンフにストリートスクランブラーという車種がある。900ccのボンネビルT100をベースにフロントホイールを19インチ化し、さらに右出しのアップマフラーで往年のデュアルパーパス風に仕立てたモデルだ。ホイールトラベル量はボンネビルと同じ前後120mmのままなので、走りはオンロード車の粋を出ないが、ネオクラシックブームの昨今においてそれに不満を言う人はない。
このスクランブラー1200も同じノリで誕生した……。その認識が誤りであることは、またがった瞬間に気付かされる。乗車1Gで沈む際の前後サスペンションの動きが滑らかで、走り出してからも作動性の良さに感心することしきり。何より驚いたのはレスポンスのいいハンドリングだ。フロント21インチ/リヤ17インチという本格的なアドベンチャーモデルと共通のホイールサイズだが、キャスター角が25.8度と立ち気味だからか、倒し込んでから旋回力が発生するまでのタイムラグが短く、まるでフロント19インチ車のようにスイスイと向きを変える。しかも、試乗した標準モデルのXCですら前後ともホイールトラベル量が200mmと長く、発生するピッチングの中心と重心との距離が近いような動きを見せる。時間の都合で未舗装路こそ走れなかったが、荒れた路面の峠道で振り回すように楽しめたのは、車体設計が優れている証拠と言えよう。
エンジンもいい。ボンネビルT120の1200ccの水冷並列2気筒をベースに、専用チューンで最高出力を80→90psとし、その発生回転数を6550→7400rpmに引き上げている。ビッグツインらしい鼓動感を味わわせつつも、しびれが残るような振動はなし。5種類から選べる走行モードは、ABSやトラクションコントロール、スロットルレスポンスの組み合わせを変えるもので、基本的に常用するのはロードモードでOK。2000〜3000rpmにおけるスロットルでの加減速が非常に心地良く、それを味わうためだけに下道オンリーのロングツーリングに出かけたいと思ったほどだ。
ブレーキも強力かつタッチが上質で、この機種にマッチしている。
[△]足の熱さがつらいかも。特に夏は覚悟が必要だ
往年のスクランブラーのアイコンであるアップマフラーの宿命で、どうしても熱気が足を襲う。足着き性は決して良くはないが、タンデムシート部分が極端に高い最新のアドベンチャーモデルよりも乗り降りがしやすく、その点はいいと思った。
[こんな人におすすめ]ネオクラシックの皮をかぶった本格派。あなどるなかれ
スチールチューブにアルミクレードルを組み合わせた専用フレームや、オーリンズと共同開発のリヤショックなど、聞けば聞くほどこの車両価格はむしろ安いのでは!? と思うように。アドベンチャーバイクとしても評価できるモデルだ。
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