アメリカ最大のパワースポーツ・インダストリーのポラリス社が手がける「Indian motorcycle(インディアンモーターサイクル)」。昨秋には日本法人「ポラリスジャパン」も設立され、世界的に急伸してきた販売台数をここ日本でも増幅しようと販売網を整えつつある。ラインナップも充実する一方で、エンジン・フレーム完全新作のニューモデル「CHALLENGER(チャレンジャー)」が上陸。ハーレー専門誌「ウィズハーレー」編集長で、クルーザーに造詣の深い青木タカオが乗ってみた。
●文:青木タカオ ●写真:真弓悟史 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
新作の水冷エンジンは、パワーも味もある!!
オフロードヴィークルやスノーモービル、スノーバイクなどパワースポーツで実績のあるポラリスだが、インディアンモーターサイクルでも2017年に全米フラットトラック選手権に復帰参戦すると、’19年シーズンまで3連覇を成し遂げ、高性能と技術力の高さを見せつけた。1950年代に一度倒産するまで、レーシングシーンや市場のシェアで、ハーレーダビッドソンと熾烈な争いを繰り広げてきた名門が、見事に復活したという印象だ。
上陸したばかりのニューモデル「チャレンジャー」でも、その勢いを感じる。まずエンジンだが、これまで大排気量ツアラーのセグメントは、その心臓部をOHV空冷49度Vツインの「サンダーストローク」が担ってきたが、完全新作の水冷60度Vツイン「パワープラス」を採用。ボア・ストロークを108×96.5mmとし、排気量は1768cc。φ52mmデュアルスロットルボディを組み合わせ、クラス最高の122psと最大トルク178Nmを発揮する。
実際、低回転域から図太いトルクを発揮し、巨体を悠然と加速させてしまう。スロットルレスポンスは3つのライドモード(スポーツ、スタンダード、レイン)によって自在に変更でき、スポーツでは右手のグリップ操作に鋭い反応を見せ、キビキビと車体が動く。
新作アルミフレームを骨格としたシャシーもビシッと剛性感があり、倒立フォークにラジアルマウントキャリパーをセットした足まわりもコントロール性に優れ、限界が高い。街乗りでは物足りないと、すぐに高速道路のランプを駆け上がりワインディングを目指すこととなったのは必然だろう。
トップ6速がオーバードライブとなっていて、幅広い速度域で使える。6速
ホールドのまま80km/h=2000rpm、100km/h=2500rpm、110km/h=2750rpmでクルージングでき、追い越しもシフトダウンせずとも右手をひねるだけ。
鼓動感もしっかりあって、高速巡航しているだけで心地よい。セット後も速度を2㎞/h刻みで制御できるクルーズコントロールで気分よく流していると、果てしなく真っ直ぐ続くアメリカのハイウェイが頭に思い浮かび、ロングトレーラーが煙を吐いて、懸命に上り坂をのぼっていく姿まで想像できてしまうのはなぜだろうか。あの長い長い道のりをチャレンジャーで走り続けたら、どれほどに気持ちのいいことか、ロングライドへ誘われるフィーリングを持ち合わせている。
不快な微振動もなく、現実的な巡航速度域となる55~70mphで走り続けられるよう綿密に設計され、身体もカウルでしっかりとガードされ快適。ヘルメットにシールドがなくとも、頭部や顔面への不快な風は感じられない。
ワインディングでは、ビッグトルクで大きな車体を操る豪快なコーナリングに胸が空く。F19/R16インチの足まわりはオーソドックスなクルーザー然とした安定志向のハンドリングで、落ち着きがあってクセがない。ニューモデルながら何十年もかけて導き出してきた答えと言われても納得できるような熟成感。大柄なフェリングがハンドルとは干渉せず、フレームマウントとしたことでステアリングフィールもナチュラルで初期旋回から素直。初期荷重ではしなやかに動くものの、高い入力があっても踏ん張りの効く前後サスペンションとメッツラー・クルーズテックがコーナーを駆け抜ける楽しさを倍増させている。
心臓部や足まわりが強化され、クルージングを速度アップし、スポーティさを重視したキャラクターは、まさに現代的なパフォーマンスクルーザー。Vツインならではのテイスティさも持ち合わせ、この乗り味とハイスペックを待っていたというユーザーはここ日本でも少なくないだろう。
INDIAN CHALLENGER[2020]ディテール
ライディングポジション
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