まさかここまで乗り味と雰囲気が変わるとは……。ヨシムラの手で生まれ変わったKATANAを体感すれば、誰もがそう思うに違いない。ハンドルやステップ、スクリーンなどを変更した同社のデモ車は、かつてのカタナに通じる資質を獲得していたのだ。
切れ角を犠牲にしても”カタナらしさ”を優先
発売開始から数ヶ月が経過した現在、新時代のKATANAに対する評価は、賛否両論という雰囲気である。そんな中で筆者自身は、かつてのカタナの乗り味を再現しているとは言い難いけれど、これはこれで大いにアリだろう、と感じていたのだが……。ヨシムラのデモ車を試乗している最中、ふと思ったのだ。これぞカタナだと。やっぱりカタナは、こうあるべきじゃないかと。そう感じた要因は、何と言ってもプロトタイプのハンドルKITにある。もちろん、全高を延長したスクリーンや小ぶりなエーテック製カーボンミラー、抜群の踏み応えを実現するX-TREADステップ、まろやかで軽快な排気音を奏でるスリップオンマフラーなどの効果もあるのだが、このヨシムラ製ハンドルはかなりのアップタイプであるSTDに対し、単純に低く、遠く、狭くなっただけではなく、タレ角と絞り角が絶妙なのである。 その絶妙さを生み出したキーパーソンは、伝説のヨシムラ製コンプリートマシン・刀1135Rにも携わった設計部の川口裕介さんだ。タンクカバーが干渉し一般的なセパハンが装着できないKATANAのため、川口さんは独特な構造を考案し、カタナらしいハンドルバー位置を入念に追求。その結果、ハンドルの切れ角は大幅に減少したが、この問題には現在開発中の専用タンクカバーで対処する予定という。
実際に乗っての印象を述べると、走り出した瞬間から、ヨシムラのデモ車は”かつてのカタナ”だった。眼前に広がるコクピットの風景がカタナらしくなっているし、車体とライダーの位置関係もカタナ的。そして長距離を走ってみると、高速道路でアクセルをワイドオープンした際の加速感や、峠道でスポーツライディングしたときの手応えも”カタナ感”が濃厚なのだ。いや、何だかカタナを連呼してしまったが、ヨシムラのデモ車にはいい意味での緊張感があって、乗り手はあらゆる場面で積極的な加減速を楽しみたくなるのだ。なお、独創的なハンドルに対し、試乗前には剛性不足によるたわみを心配していたものの、その気配は皆無で、むしろ前輪の接地感はSTDより明確になっていた。
今回の試乗で僕が実感したのは、ヨシムラの”カタナ愛”である。それがあるからこそ、同社のデモ車は、かつてのカタナを彷彿とさせる雰囲気と乗り味が構築できたのだろう。ヨシムラはこの車両を”第一段階”と位置付け、今後も開発に注力するという。そのカタナ愛は、今後もさまざまな形でKATANA用パーツに注入されるはずだ。
ハンドル換装で全てが激変
独創的な形状のハンドルは、純正のハンドルクランプボルトを利用して装着。年内発売を目指して開発中で、量産版では素材や細部形状は見直されるが、絶妙なハンドルバー位置は踏襲される予定。なお開発の初期段階ではアジャスト機能の導入も検討されたが、誰もがカタナらしさを体感できることを重視した結果、今回は非調整式を選択。いずれにしても、絶妙のポジション設定に対して、異論を述べる人はいないだろう。
KATANAパーツ 開発が進行中!
●文:中村友彦 ●写真:真弓悟史 ●取材協力:ヨシムラジャパン
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