佐藤寿宏のレース通信[EWC第2戦 セパン]#03

事実上の3時間耐久?! 初開催のセパン8耐は荒れに荒れた展開に!

2019年12月14日に決勝が行われたセパン8耐。世界耐久選手権の第2戦であり、セパンインターナショナルサーキットにおける初の同選手権開催となった。しかし、レースはスタート前後から雨模様で、セーフティーカースタートするも、すぐに中断……。

記録上は6時間耐久、実質的なレースは3時間の中にドラマを凝縮

初開催となったセパン8耐が終了しました。決勝日は、天気予報通り雨模様となり、12時にグリッドに着いたころは、まだ雨が弱かったのですが、オープニングセレモニーが行われ、スタート時間が近づくにつれ雨足が強くなって行きました。ル・マン式スタートで始めるには、危険な状況となったため、まずはセーフティーカーの先導によるスタートが切られることになりました。しかし雨足は強くなる一方のため、レースは中断。その後、再びセーフティーカースタートを試みますがコンディションは回復せず、そのまま車検場に全車が保管されます。

3度のセーフティーカースタートという珍しいレースに。オーガナイザーもチームもライダーも、天候に翻弄された1日でした。

この時点で開催は難しいのでは? という雰囲気でしたが、オーガナイザーの動きは早かったですね。18時にセーフティーカースタートでレースが再開されると雨は止み、路面はウエットから乾いて行く難しいコンディションとなっていました。この中で大本命である#21 Yamaha Sepang Racingのマイケル・ファン・デル・マークと#5 F.C.C. TSR Honda Franceのマイク・ディ・メリオがケタ違いの速さを見せ、お互いをけん制しながらトップ争いを繰り広げて行きますが、最終コーナーで接触転倒! マイケルはピットインしますが、マイクはそのまま走行を続けトップをキープして行きます。

#5 F.C.C. TSR Honda Franceのマイク・ディ・メリオと#21 Yamaha Sepang Racingのマイケル・ファン・デル・マークによるトップ争いは両者転倒という形で幕。

後方では、#71 SUZUKI JEG – KAGAYAMAの浦本修充、 #73 TEAM PLUS ONEの酒井大作がポジションを上げてくる。浦本は、2スティントを連続走行し、トップを走っていた#5 F.C.C. TSR Honda Franceが転倒したタイミングで2番手に浮上していました。しかしモニターには無情にも電気系トラブルでマシンを止めている浦本の姿が映し出されてしまいます。

この時点でトップを走っていた#7 YARTは、ニッコロ・カネパが再々開されたレースを1人で走り切りトップでチェッカー。2位は、トップと同一周回で#88 Honda Asia-Dream Racing with SHOWAが、3位には、#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMと続きました。#21 Yamaha Sepang Racingは、フランコ・モルビデリがファステストラップを出す速さを見せ7位まで追い上げました。

優勝をもぎ取ったのは#7 YARTだった。ライダーはニッコロ・カネパ。
トップは#7 YART – YAMNAHA、2位は#88 Honda Asia-Dream Racing with SHOWA、3位に#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCEが入った。

日本勢では、関口太郎、酒井大作、名越公助で臨んだ#73 TEAM PLUS ONEの11位が最高位。関口は、前日から熱を出してしまい、決勝日も回復していない状態でしたが、スタートライダーを変えることができないため、最初のセーフティーカースタートを担当。ずぶ濡れになってしまい、さらに体調を悪化させてしまいました。その後は、酒井が踏ん張り、難しいコンディションの中、すばらしい追い上げを見せ、一時は6番手につけていました。名越も初めての1000cc、初めてのセパンと初めて尽くしの中、着実に周回を重ね、酒井にバトンを渡していました。

SSTクラスで優勝を狙っていた#80 TONE RT SYNCEDGE 4413 BMWは“レインマイスター”の星野知也が、まさかの転倒。初日にも“ウエットでのフィーリングがよくない”と言っていましたが、本人も無念そうでした。星野から変わった渥美心がハイペースで追い上げて行き、これを見たチームは、予選で最速タイムを出した石塚健も控えていましたが、渥美をそのまま走らせます。その期待に渥美も応え、ポジションを上げて行きます。ラストラップにも1台かわし、総合15位でゴール。SSTクラスで3位となり表彰台に上がる活躍を見せてくれました。

SSTクラスのポディウムには1位#96 MOTO AIN、2位に#56 GERT56 by GS YUASA、3位には#80 TONE RT SYNCEDGE 4413 BMWが登壇。

鈴鹿8耐のトライアウトという側面では、#28 Team Kodamaが22位、#10 KRP SANYOKOUGYOU & will raise RS-ITOHが23位、#98 TEAM HANSHIN RIDING SCHOOLが25位、#51 T.MOTOKIDS icu Takada I.W NAC SANYOが29位、#27 TransMapRacing with ACE CAFE が30位、#69 Yamashina Kawasaki KEN Racing & Auto Race UBE が32位、#17 TEAM SUGAI RACING JAPANが40位となり2位となった#88 Honda Asia-Dream Racing with SHOWAを含めたチーム全てが、鈴鹿8耐に向けた1stステージをクリアしました。参戦したチームは、いろいろなスタンスで臨んでいましたが、アクシデントなどを乗り越え参戦権をつかみました。来年は、セパン8耐に参戦する日本のチームも増えそうな流れですね。

それにしてもスタートからドタバタのセパン8耐でした。2度のセーフティーカースタートでずぶ濡れになり、雨が止んでからのレースはアッと言う間に過ぎ去った感じでした。最後、トップのチェッカーシーンを狙っていたんですが、しっかり井筒が写っているのが分かると思います。コレ、狙っていたんですって。最終ラップに青旗が振られる機会が増えたので“トップが来ているな”と思った井筒は、前に出してチェッカーを受けようと……。その狙い通りに直後でチェッカーを受け、1コーナー先で握手をして、しっかり国際映像に映ったと言うわけでした。さすがです!

チェッカーフラッグが振られたシーン。一番右に見えるのが井筒で、トップの直後に着けているのがわかりますね。

Sepang 8 Hours Result
1 YART – YAMAHA Yamaha[EWC]80周
2 Honda Asia-Dream Racing with SHOWA Honda[EWC]80周
3 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM BMW[EWC]79周
4 MOTO AIN Yamaha[SST]79周
5 Suzuki Endurance Racing Team Suzuki[EWC]79周
6 WEBIKE SRC KAWASAKI FRANCE Kawasaki[EWC]78周
7 Yamaha Sepang Racing Yamaha[EWC]78周
8 BMW Sepang Racing BMW[EWC]78周
9 3ART- MOTO TEAM 95 Yamaha[EWC]78周
10 Team ERC Endurance Ducati[EWC]78周
11 TEAM PLUSONE BMW[EWC]78周
12 Team R2CL Suzuki[EWC]78周
13 F.C.C. TSR Honda France Honda[EWC]78周
14 GERT56 by GS YUASA BMW[SST]78周
15 TONE RT SYNCEDGE 4413 BMW BMW[SST]78周

トップ10に6メーカーがひしめくのも世界耐久選手権の特徴かもしれません。今後はドゥカティも力をつけてくるでしょうから、ますます面白くなりそうです!

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