セローのファイナルエディションが発売される。ロングセラーが生産終了となるのだ。これを機に、初めて登場したときのセローはどのように受け止められたのか、振り返ってみたい。ヤングマシン1985年9月号より「NEW MODEL IMPRESSION」の復刻記事をお届けする。
NEW MODEL IMPRESSION[1985年9月号]トレールコース&一般道でテスト
これがそう、これが本物のトレール・バイクなのだ。ヤマハから発売されたセロー225は、トレール・バイクの原点にもどって造られた、トレール・ランをエンジョイするバイク。トライアル走行でもなんでもOKだ。
操縦性能「TY250よりも登坂力があるぞ、これがトレールだ」
なんだこれは、トライアル車ではないし、トレール車としても変だ、と本当のトレール車を知らないライダー達は、きっとそう思うに違いない。ところがこれこそ、本来トレール車としてあるべきスタイルなのだ。今のトレール車は、あまりにもモトクロッサー・レプリカになりすぎてしまったため、トレールとしての機能がなくなって、林道カッ飛びバイクと化してしまっていた。
そこに登場したのが、新しい(ちっとも新しくないが)考え方をして造られたセロー225というわけで、どこでも走ってしまう、万能バイクである。
トライアル車とトレール車のいい所を合わせ持つセローは、1速ギヤを使えば、トライアル的な走行も、ほとんどストレスなしに行なえるし、少し後退したフットレストに立ち上がることにより、リヤタイヤのトラクションをバッチリ上げることも可能だ。もちろん、エンジンの出力特性も、低速から高速までトルクフルで、かつ強力に回ってくれるから、ある意味ではトライアル車のエンジンより扱いやすい。
ギヤ比は、1速から3速までが低目で、4、5、6速は一般道用という感じ。スタートは2速から行ない、オフロードのタイトターンでも2速ならテールスライド。スムーズにやるなら3速という具合。
サスペンション・トラベルはトレール車に比べたら少な目だが、MXコースを全開で走らせるわけではないから、これで十分な数値といえよう。林道走行や、舗装路では、ソフトな感じを受けた。
ビックリしたのは、その扱いやすさ、楽しさ、ばかりでなくマウンテン・トレールとしての能力の高さである。TY250では、フットレストに立ったままならともかく、両足を地面に着けたら、車重のバランス上から、リヤタイヤが空転するかフロントアップして、とても登れない、と思われる急坂を、セロー225は、1速ギヤに両足を使い、アクセルを一定にして、低い回転を保てるようロードをクラッチで調整すれば、フロントアップも押えられ、バイクはズンズン登りだす。
リヤタイヤのトラクションとバイクの車重、前後バランスが良く、ライダーがシートに半分座るようなライディングでクラッチをダマスような走り方がやりやすいのだ。
ハンドル切れ角は51℃だからハードなトライアル走行はむりだけれど、シート幅やタンク幅を狭くし、ステップバランス時のライダーの動きが、出来るだけスムーズになるよう設計されている。
総評「それなりに走っても十分楽しい」
楽しく汗をかくには最高のバイク。一日中乗っていたくなったのは、オレだけではないと思う。もちろんツーリング・バイクとしても最高で、なかなかマイルドな一面も見せてくれる。それでいてシングル・モデルのバタバタ音が、なんと70km/h(加速時だが)楽しめた。
●レポート 青池 武(本誌)
スペック(当時)■全長2055 全幅825 全高1160 シート高810(各mm) 車重102kg(乾)■エンジン 空冷4ストローク SOHC2バルブ 単気筒 総排気量223cc 内径×行程70×58mm 圧縮比9.5 最高出力20ps/8000rpm 最大トルク1.9kg-m/7000rpm キャブレターY26P 点火方式CDI エンジンオイル容量1.3L ガソリンタンク容量7.6L 予備約1.3L 始動方式キック(デコンプ付き)■変速機6段リターン 変速比1速より3.090 2.000 1.428 1.125 0.925 0.793 1次減速比3.318 2次減速比3.000 キャスター角26°30′ トレール102mm タイヤ前2.75-21 後120/80-18 フレーム・オープンクレードル ■価格32万9千円
………当時のインプレッションも、現代で語られるセローのイメージがほぼそのままだということがわかる。スペックを見るとタイヤサイズは初代から一貫して最新型まで同じというあたりも面白い。当時は消費税もなく、車両価格はセロー250ファイナルエディションの約半分だった。
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