第47回マシン・オブ・ザ・イヤー2019

東京モーターショー開発者インタビュー

ホンダ アフリカツイン開発者に聞く「排気量が増しても、車体が重くなってしまえば意味がありません」

  • 2019/10/28

ホンダが、東京モーターショー2019に合わせて国内仕様も正式発表したのが、大型アドベンチャーモデルのCRF1100Lアフリカツイン。この開発責任者を務めた森田健二さんに、このタイミングで新型を導入する狙いや、従来型1000との違いなどを解説してもらおう。

TEXT:Toru TAMIYA

電子制御サスペンション搭載+新設計フレームのフルモデルチェンジ

2016年モデルとしてデビューしたCRF1000Lアフリカツインが、2020年型でフルモデルチェンジを敢行。排気量拡大を受けて、車名はCRF1100Lアフリカツインになった。9月には欧州と北米で正式発表されていたが、東京モーターショー2019の開幕に合わせて日本国内仕様も発表。ラインアップは、スポーティなスタンダードとツーリング機能を高めたアドベンチャースポーツの2タイプ。いずれも、トランスミッションはマニュアルクラッチとデュアル・クラッチ(自動または手動のクラッチ操作なし変速)が選べ、アドベンチャースポーツには電子制御サスペンション仕様も用意されている。

従来型に対する変更点は、電サス新採用以外にも盛りだくさん。まずエンジンは、排気量が998→1082ccに拡大され、車体は外装デザインだけでなくスチール製のメインフレームから刷新され、リヤサブフレームはアルミ化とボルトオン化が施された。車重は、MT仕様のスタンダード同士を比較すると4kg軽くなっている。なお、ローダウン仕様というアナウンスはないが、国内版はサスペンションストロークが欧州や北米向けと比べて短縮化されていて、シート高が40mm低い。従来型の国内仕様スタンダードで比較すると、フロントサスペンションのストロークは45mm短い185mm、リヤアクスルトラベルは40mm短い180mm。シート高は、従来型アドベンチャースポーツに設定されていたタイプLDと同数値で、830/810mmとなっている。しかし今回は、国内仕様限定ではなくCRF1100L全体の話として、開発責任者の森田健二さんにインタビューを実施した。

ラインナップはCRF1100L Africa Twin/同DCT/Adventure Sports/Adventure Sports DCT/Adventure Sports ES/Adventure Sports ES DCTの6バリエーションとなる。

排気量アップと軽量化を同時に果たさなければ意味はない

編集部:CRF1000Lがデビューしたのが2016年。比較的短いサイクルで、大がかりなモデルチェンジを実施されました。このタイミングでの刷新というのは、どのような考えや狙いがあってのことでしょうか?

森田さん:2016年にアフリカツインという機種が復活してからこれまでの期間に、欧州市場を中心としてご好評をいただいてきました。しかし再登場で終わりではなく、ホンダは今後もアフリカツインというブランドを大切に育てていきますというメッセージを込めたのがひとつ。それから、今後施行される欧州でのEURO5(エミッション規制)やOBD2(故障診断機)装着義務化を考慮したとき、どちらにせよエンジンなどに手を入れなければならない状況だったことから、2020年型でのフルモデルチェンジを実施しました。

編集部:排気量拡大は、環境規制強化の影響で性能がダウンするのを補うための選択だったのか、それとも開発チームが求めるポテンシャルを達成するためのチョイスだったのでしょうか?

森田さん:どちらかというと後者です。オフロードでの走行性能という点では、従来型の998ccでも十分だと感じています。ただし、欧州などでの舗装路における旅性能ということで考えると、若干ながら不足している部分もあると判断しました。具体的な例を挙げるなら、低中速域でのダッシュ力。欧州だと、70~80km/hで巡航している状態から追い越しのためにフル加速というような状況もあります。最高出力では7馬力アップしていますが、高回転域でのパワーだけでなく、そこに到達するまでの力強さも重視しています。とはいえ、一般的には排気量をアップすることで車重が増す傾向にありますが、それでは意味がないという考えから、排気量増と軽量化を同時に達成することを絶対条件としました。

編集部:新型の走行性能を作り上げていく中で、ライバルとして掲げた機種はありますか?

森田さん:(750cc超のアドベンチャーカテゴリーは)大きく分けると800cc程度の排気量を持つ比較的軽量でオフロードでも積極的に遊べるような機種と、アフリカツインと同様に1000~1100cc程度の排気量を持つモデル、そして1200ccを超えるモデル群というような感じになるかと思います。しかし排気量が異なるマシンは、ダッシュ力などの点で参考にならないことも多いという判断から、とくに他メーカーのライバル機種は意識せず、これまでのCRF1000Lに対してユーザーなどからいただいた声に基づいて、出力などを設定していきました。

ユーロ5に対応しながらポテンシャルも高めるための排気量拡大だった。デュアルクラッチトランスミッションの変速およびクラッチ制御のアルゴリズムもアップデートされているはずだ。

編集部:ニューエンジンの性能も気になるところですが、車体にもかなり手が加わっていて、メインフレームから変更されています。これはどのような目的を主題とした刷新なのでしょうか?

森田さん:一番の目的は軽量化。フレームに関しては、各部材の素材、形状や構成、肉厚に至るまで見直すことで、いかに重量を削減するかということをテーマとしました。我々は、アドベンチャーモデルの走行性能を向上させる重要なポイントとして、車重の軽さということを重視しています。それに加えて、オンロードでもオフロードでも、より楽しく乗れる剛性を求めたチューニングを施しました。

ライダーのヒザまわりがスリムになっているフレーム。楽しめる剛性バランスと軽量化を促進。

スタンダードのほうがむしろオフロード寄り

編集部:今回のモデルにも、スタンダードとアドベンチャースポーツという2仕様が用意されています。どのような立ち位置の差があるのでしょうか?

森田さん:フレームに関しては完全に共通ですが、装備などを変更することで、スタンダードはどちらかというとよりアグレッシブにライディングを楽しむモデル、アドベンチャースポーツは旅を楽しむということにもよりマッチさせた仕様としています。スタンダードはチューブタイヤ、アドベンチャースポーツはチューブレスタイヤを履かせていますが、これはスタンダードのほうはオフロード走行を、より視野に入れているためです。電子制御サスペンションは、アドベンチャースポーツのみに採用しました。アドベンチャースポーツ仕様は、より長距離を走ることもあるという想定から、高速巡航からワインディングからダートまで幅広い走行条件での快適性やスポーツ性が求められると思っています。従来型は、スタンダードよりもストロークが長いサスペンションを使用することで、これに対応していました。しかし新型では、電子制御サスペンションという新たな装備を用いることで、さまざまな路面状況や走り方にフィットさせています。

ジャンプやギャップなどにもきめ細かに対応するショーワ製の電子制御サスペンションEERA(Electronically Equipped Ride Adjustment)を採用。

編集部:スタンダードに電子制御サスペンションを採用しなかったのは、オフロードでアグレッシブに使用する、例えば冒険に近いような遊びのときに、電気系のトラブルなどが発生するリスクを避けた結果なのでしょうか?

森田さん:いいえ、それは違います。スタンダードは、アクティブに楽しむという使用方法とのマッチングにより、メカニカルなサスペンションを選択しましたが、アドベンチャースポーツに使用している電子制御サスペンションは、旅先でのトラブルにも強い仕様としています。これまでの電子制御サスペンションは、転倒による断線あるいは故障などの際に、減衰力がマックス側あるいはミニマム側に張り付いてしまう仕様が多いんです。しかし新型アフリカツインは、例えば配線が切れたときに、減衰力がセンターになるように設計してあります。そのため、トラブル発生時にも普通のバイクとして乗ることができます。サスペンションはショーワ製で、制御を含めて共同開発したものです。オフロード走行を想定した電子制御サスペンションとしては、今回がホンダとしての初採用。土とか泥の路面を走ったり、ともすれば湖や川の中に突入したりと、ハードに乗られる方々もいらっしゃるカテゴリーなので、開発時にはそういう過酷なコンディションでもタフネス性を持たせることに苦労しました。

編集部:では最後に、開発責任者として、どのような方々に乗ってもらいたいと思っていますか?

森田さん:基本としては当然ながら、オンロードとオフロードを問わずツーリングを楽しみたいライダーに乗ってほしいと願っています。しかしそれに加えてもうひとつ、威風堂々としたスタイリングは、市街地でも映えると思っています。乗りやすさも盛り込んでいるので、本格ツーリング派ばかりでなく多くの方々にぜひ楽しんでいただきたいです!

【HONDA CRF1100L AFRICA TWIN[2020]】主要諸元■全長2310 全幅960 全高1355 軸距1560 シート高810/830(各mm) 車重226kg[DCT=236kg]■水冷4ストローク並列2気筒 SOHC4バルブ 1082cc 102ps/7500rpm 10.7kg-m/6250rpm 変速機6段 燃料タンク容量18L■タイヤサイズF=90/90/21 R=150/70R17 ●価格:161万7000円~205万7000円 ●発売時期:2020年2月14日/ESモデルのみ2019年12月13日

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帰ってきたネイティブ足立区民。ヤングマシン、姉妹誌ビッグマシンで17年を過ごしたのち旅に出ていた編集部員だ。見かけほど悪い子じゃあないんだぜ。
■1974年生まれ
■愛車:MOTOGUZZI V7 SPECIAL(2012)