排ガス規制に対応して復活

ヤマハSR400試乗インプレッション【名車は実用性能を維持し令和も生き抜く】

YAMAHA SR400 [2019]

’17年9月に生産終了となったヤマハSR400が、平成28年度排ガス規制に対応してラインナップに復活。昭和53年に誕生した名車が新元号・令和になっても継続して販売される。同じく排ガス規制対応のため1年の休止期間を経て復活したセロー250が諸元上で2ps増えたのに対し、同じプロセスを経たSR400は2psダウンの24ps。そのわずかな差を体感するべく新旧比較を実施した。

YAMAHA SR400 [2019]

YAMAHA SR400 [2019]
【YAMAHA SR400[2019] ●価格:57万2400円.69万1200円 ●色:黒、青、茶[40th]】主要諸元:全長2085 全幅750 全高1100 軸距1410 シート高790(各mm) 車重175kg 空冷4スト単気筒SOHC2バルブ 399㏄ 24ps/6500rpm 2.9kg-m/3000rpm 変速機5段リターン 燃料タンク容量12L ブレーキF=ディスク R=ドラム タイヤF= 90/100-18 R=110/90-18
YAMAHA SR400 [2019]
’78年にデビューしたSR400。セローと同様に排ガス規制に対応して再びラインナップに復活した。レギュラーカラーは青と黒の2色で、規制前から2万1600円アップ。車重は1kg増えている。
YAMAHA SR400 [2019]
車体寸法や車重は250ccのMT-25とほぼ同等であり、スリムなのでよりコンパクトに感じる。フラットなシートによりポジションの自由度が高い(身長175cm 体重62kg)。

新旧のSRを見比べると…?

YAMAHA SR400
(左)旧型SR400(右)新型SR400 [2019]
YAMAHA SR400
【キャニスターと排気系変更で26→24psへ】(左:旧型/右:新型)蒸発ガソリンの大気放出を制限するキャニスターを追加。サイレンサーはわずかに長くなり、出口径が拡大された。触媒の仕様変更やFIの精度向上なども実施され、最高出力は26psから24psへとわずかだが減少している。
YAMAHA SR400
【Rスプリングとハブを黒としてイメチェン図る】 (左:旧型/右:新型) 5段階のプリロード調整機構を持つリヤショックのスプリングと前後のハブをシルバーからブラックへ。ややモダンなイメージに。
YAMAHA SR400
【ECUの大型化に伴い電装系のレイアウト変更】(左:旧型/右:新型) 排ガス規制対応のためECUは設定変更のみならず大型化を余儀なくされ、バッテリーの下部からすぐ後方へとレイアウトを変更。
YAMAHA SR400
【シンプルなアナログメーターは文字盤の色を黒から白へ】 (左:旧型/右:新型) ケーブルで可動する機械式のアナログメーターを新型でも継続採用。文字盤が黒から白へと変更された。なお、ブラックの車体色ではハンドルや同クランプ、トップブリッジも黒で統一。
YAMAHA SR400
【新作のガラスレンズを採用して法規対応】(左:旧型/右:新型) 部品メーカーの協力により、近年一般的となっている素材(プラスチック)に変更せずガラスレンズのまま法規に対応、旧来の雰囲気を残す。ウインカーも変更。

(○)振動がややマイルドに。2ps減はほぼ分からず

キックによる始動性は新旧で完全に互角だが、アイドリング時の排気音は新型のほうがやや歯切れ良くなっている。サイレンサーの外観はほとんど変わっていないが、内部構造は全く別物とのことで、聞き比べて初めて差が分かるレベルまで従来型の音に近づけたことに感心させられる。

走ってみての印象も新型の方がいい。全域で体に伝わる振動が少なくなっており、躊躇なくスロットルを開けられる。結果、2psダウンどころか、むしろ街中ならスムーズで速いと感じるほどだ。その理由については単にスロットルを開けやすいからだと思っていたが、諸元表でそれらしき要因を発見した。最大トルク値は新旧で同じだが、発生回転数が5000rpmから3000rpmへと大幅に下がっているのだ。これが出足の良さにつながり、速いと感じさせている可能性は大だろう。

ただし、高速道路での追い越し加速などの高回転域では、従来型の方に分があると感じるシーンが多かった。とはいえ、その差は直接比較して分かるレベルであり、総じて動力性能は同等と言っていいだろう。

なお、SRのエンジンはパリダカで勝ったこともあるXT500というオフロード車がベースになっており、鼓動感や味わいといったものは希薄で、パワーカーブやレスポンスはあくまでも実用的。だからこそ扱いきれる楽しさがあり、SRが長く愛される理由ではないかと思う。

車重の軽さやタイヤの細さから生まれる軽快なハンドリングは従来型から変わらず、バンク角の少なさをうらめしく思うほどスポーティに走れる。ブレーキの絶対制動力が少なく、またシャーシも柔軟なために限界性能は決して高くないが、エンジンと同様に扱いきれる楽しさがそこにある。SRは4スト単気筒のロードスポーツとして誕生した機種であり、その本質は今も不変なのだ。

YAMAHA SR400 40TH ANNIVERSARY EDITION [2019]

【限定車はサンバースト塗装:40th アニバーサリーエディション】11万8800円高で用意される500台限定モデル。真鍮音叉エンブレムや本革調のシートサイド表皮、ゴールドアルマイトのリム、40 周年のロゴ入りタコメーターなどを採用する(価格:69万1200円)

(△)”あるべき姿”が足かせに。そこにジレンマがある

制動力を強化したい、高速での直進安定性を高めたいなど、いくつか要望はあるが、1か所だけ改良すると全体のバランスを崩すのは目に見えている。モデルチェンジのたびに”SRらしさ”が議論されるが、それが足かせになっているような気がする。

結論:排ガス規制対応の影響は少なく。買うなら新型だ

賛否両論あるキャニスターの追加だが、乗車位置からは全く見えないので、途中から存在を忘れてしまった。CVキャブ&前後ドラムブレーキ時代の四半世紀前からたびたび試乗しているが、いつ乗ってもSRらしさの継承に感心させられる。

●写真:真弓 悟史
※取材協力:ヤマハ発動機

※ヤングマシン2019年3月号掲載記事をベースに再構成

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