BMW伝統の水平対向2気筒=ボクサーツインを搭載、’13年に空水冷化されたR1200GSが排気量拡大とともに可変バルブタイミング機構とシフトカムシステムを導入。車名を「R1250」に改め、さらなる高みへと上りつめた。今回はローダウン仕様のR1250GSプレミアムスタンダード[2019]試乗インプレッションをお届けする。
熟成を極めた1台、街から冒険まで許容
(◯)より忠実に、滑らかに。ローダウンに不満なし
次の排ガス規制ユーロ5を見据えて排気量を85cc拡大し、可変バルブタイミング機構”BMWシフトカム”を採用した1254cc空水冷水平対向2気筒は、従来の125psから136psへとパワーアップした。そんな歴代最強のエンジンを始動し、まずはメカノイズが静かになったことに気が付く。カムチェーンがローラーからサイレントタイプに変更されたことの効果は大きいようだ。また排気音も体感的に抑えられており、先代よりもジェントルになった印象だ。
雨上がりだったため、まずはレインモードでスタートする。最大トルクは14%アップしているが、さすがに最もレスポンスが穏やかなこのモードでは体感しにくい。だが、回転上昇のスムーズさや微振動の少なさはさらに磨きがかかり、この振る舞いだけでも新型の進化ぶりがうかがえる。ロード、そしてダイナミックモードに切り替えると、アイドリング付近からトルクの厚みがしっかりと増していることが分かる。一般道なら峠道でも吸気カムが切り替わる5000rpmまで回す必要がないほどで、特に気に入ったのは、常時ダイナミックモードでも気疲れしない程度にレスポンスが鋭すぎないことだ。また、パワーカーブは高回転域までシームレスであり、カムの切り替わりを強調するような演出は一切なし。DTCやASCなどの駆動系の電子制御も引き続き採用されており、従順さと安全性において間違いなくトップクラスのエンジンだ。
続いてハンドリングについて。試乗車はローダウン仕様のプレミアムスタンダードだったが、それによる違和感はほぼ皆無。短くなったサスペンションストロークと全域でトルクが増したエンジンとの相乗効果で、車体が軽くなったような印象すら受ける。ダイナミックESAは走行モードと連動して減衰力とプリロードが自動調整され、特に感心したのは路面追従性の優秀さだ。ブレーキはフロントのテレレバーサスペンションと相まって強力なだけでなく、コーナリングABSのDBCやヒルスタートコントロールプロにより、安全性や利便性がさらにアップしたことも見逃せない。
(△)シフトアシストが硬い&操作は覚えること多し
クラッチ操作が不要なシフトアシストプロは、1→2速間のショックが大きいのと、シフトダウン操作が重いのが気になった。メーターは多機能だが、全てを使いこなそうとするにはトリセツの熟読が必須。今回の試乗では途中で断念したほど。
【結論】絶えず進化してライバルを一蹴。これぞ王者の姿
トルク”感”の演出なら電子スロットルの設定でいかようにもできそうだが、燃費も向上させつつとなると話は別。直近で乗った’17年型もかなり熟成されていたが、1250はエンジンだけでなくサスも進化しており、そのバランスは絶品だ。
【アドベンチャーもシフトカム化】30Lもの燃料タンクで航続距離を延ばし、さらに前後とも20mm長いサスストロークで悪路での走破性を高めた派生モデル。同じくエンジンが新型となった。〈BMW R1250GSアドベンチャー ●価格:267万5000円〉
【トリコ車はスポークが標準】トリコロールカラーの456スタイルHPはクロススポークホイールが標準で、これのみスポーツサスペンション(3万9000円)が装着可。〈BMW R1250GS[456 Style HP] ●価格:263万円〉
●写真:真弓 悟史
※取材協力:BMW Motorrad
※ヤングマシン2019年5月号掲載記事をベースに再構成
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