日本国内の’18年400cc市場において上半期トップセールスとなったNinja400は海外でも大好評。その実力は最強と謳われた往年の400レプリカと比べるとどうなのか。そんな疑問に答えるためドイツのモトラッド誌が直接対決でインプレを敢行。その模様をお伝えしよう。まずは両車のメカニズム/スペック比較から。
【MOTORRAD誌】ドイツのナンバー1バイク雑誌で月2回発行。新車のガチンコテストからツーリング、用品、それに今回のような往年モデルの紹介まで総合的な内容を扱っている。
レプリカ時代の最終兵器:KAWASAKI ZXR400
400レプリカ最後発としてライバルを凌ぐ装備を誇り、初代は’89にデビュー。さらに’91のモデルチェンジで戦闘力が大きく高められた。日本では’93の馬力規制変更で59→53psになったが、海外では65psで販売された。
直列4気筒とアルミ製のツインスパーフレームを核とするZXRは、登場から四半世紀以上過ぎた現代においても通用する戦闘力を見せる贅沢さが印象的だ。エンジンにはバックトルクリミッターを持つなど本気でレースで勝つことを狙っていたことがうかがえる。蛇腹ダクトのK‐CAS(カワサキ・クール・エア・システム)はエンジンヘッドに冷却風を吹き付けるものだが、レース用にラムエア化しようとするライダーも多かった。
現代の400cc No.1:KAWASAKI Ninja400
’18モデルでフルモデルチェンジ。従来の650譲りから250との共通設計という大胆な方針変更で、扱いやすさとパワフルさを兼ね備えたライトウェイトスポーツとして国内400cc市場の王者CB400SF/SBを凌ぐセールスを記録している。
ニンジャは最新の技術をふんだんにフィードバック。当時であれば材質的に物足りなく思えた鋼管フレームも、今では剛性と軽量化を両立させる絶好のものになった。そしてFIが全域での扱いやすさを実現する時代に。乗りやすさではZXRはかなわない。
スタイリング
エンジン:ZXRは本気のレース指向
両車の違いを決定づけるエンジン形式。ニンジャは現代のエントリークラスにおけるオールラウンダーな性格を求めて誕生。最新のFI制御で下から上までスムーズな特性を実現し、環境性能も考慮されている。片やZXRの直4はZX-4のZX400GEユニットをベースにさらに高回転型へと尖った方向へ進化。24年以上も前にスリッパークラッチの走りであるバックトルクリミッターまで装備しているのは400では贅沢としか言いようがない。上級版のRでは、負圧キャブの代わりに強制開閉のフラットバルブキャブが奢られており、さらにライダーにテクニックを要求するようになっていた。
フレーム:バランス型vs高荷重型
ニンジャは鋼管トレリスのダイヤモンドフレーム。Ninja H2と同じくエンジン背面にスイングアームマウントプレートを結合しピボットシャフトをここに貫通。効果的にエンジンをストレスメンバーとして利用することで剛性確保と軽量化を両立している。一方のZXRは現代のSSに通じるエンジンを囲むツインスパーフレームをアルミプレス材で構成し、剛性を重視。φ41mm倒立フォークやスイングアームもKIS-ARMと名付けられた応力のかかる部分を太くしたものとするなど、とにかく高荷重に応える車体作りを旨としている。
装備:豪華なZXR。今ではコスト的に無理?
レース優先かオールマイティか、ダンパー調整機構付きの倒立サスや対向4ポットキャリパーなど、2台の装備の違いは大きい。ちなみにZXRが使っている3連メーターは速度計は取り外せるようにしているのが当時のレーサーレプリカのセオリーだった。また中央にタコメーターを配置するのはレースで見やすいからというのが当時の理由。ニンジャのタコメーターレイアウトにもその頃に根付いた文化が受け継がれている。
欧州仕様と日本仕様、今では馬力が逆転
ともに日本仕様と輸出仕様が存在するニンジャとZXR。ZXRの日本仕様は当時の馬力規制のために’92までは59ps、’93から最終型の’99まで53psとなっていた。一方、馬力規制も撤廃され世界統一基準時代の最新ニンジャは欧州仕様の45ps/10000rpmに対し、日本仕様の方が48ps/10000rpmと逆転することに。ちなみに最大トルクは3.9kg-m/8000rpmで同じだ。
主要諸元比較
車名 | Ninja400 | ZXR400 |
全長×全幅×全高(mm) | 1990×710×1120 | 1995×700×1080 |
軸距(mm) | 1370 | 1385 |
シート高(mm) | 785 | 760 |
車両重量(kg) | 170 | 186 |
エンジン型式 | 水冷並列2気筒DOHC4バルブ | 水冷並列4気筒DOHC4バルブ |
総排気量 (cc) | 399 | 398 |
内径×行程(mm) | 70×51.8 | 57×39 |
圧縮比 | 11.5 | 12.1 |
最高出力(ps/rpm) | 45/10000 | 65/13000 |
最大トルク(kgf・m/rpm) | 3.9/8000 | 3.7/12000 |
燃料タンク容量(L) | 14 | 15 |
キャスター角(度)/トレール量(mm) | 65.3°/92 | 66.5°/82 |
ブレーキ前 | 2ポット+φ310mm ディスク | 4ポット+φ310mm ディスク×2 |
ブレーキ後 | 1ポット+φ220mm ディスク | 2ポット+φ240mm ディスク |
タイヤサイズ前 | 110/70R17 | 120/60VR17 |
タイヤサイズ後 | 150/60R17 | 160/60VR17 |
車両本体価格 | 6195ユーロ | 1万2120マルク(6197ユーロ) |
※諸元はどちらも欧州仕様。ZXRの価格は当時価格となる。なお、車重は MOTORRAD誌測定によるものでカタログ値ではNinjaが168kg(装備重量)、ZXRが159kg(乾燥重量)となっている。またZXRの燃料タンク容量は公称値だと16Lで細かい仕向け地の違いか。
●取材・文:Ralf Schneider(MOTORRAD) ●まとめ:宮田 健一
※ヤングマシン2019年2月号掲載記事をベースに再構成
↓【中編〈インプレッション〉に続く】↓
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