エンジンや骨格はそのままに、フェイスリフトといくつかのテクニカルな改訂を受けたYZF-R3(国内仕様では車体を共有するYZF-R25も同時発売の見込み)。ヤマハのスポーツバイクの中ではちょうど中間の位置づけとなるが、日常を走る資質も見失ってはいない。そんなR3と、日本への導入は未定だが全てが新しいYZF-R125に、ドイツのバイク雑誌『PS』が試乗し、レポートを届けてくれた。
たくさんのバイクを持ちたくても……/YZF-R3
多くのライダーはバイクでいっぱいになったガレージを所有することを夢見ているだろう。少なくとも5台は欲しい! いや、せめて公道用のバイクと、サーキット用にもう1台を持てれば文句は言うまい! ……しかし、特に若いライダーの場合、この種の欲望は、ほとんど空想で終わってしまう。これから乗り始めたいビギナーで、いった誰がそのような艦隊を編成することができるだろうか。
しかし、解決策はある。その名は『YZF-R3』だ。5895ユーロ(約71万円/日本仕様の予想価格は70万円以下)という買いやすさで、中身を考えれば実際の価値はさらに増しているといっていい。
(中略)
コックピットを覗くと、さらなる変化が明らかになる。まず読み取りやすいLCDスピードメーターのほかに、ギヤポジションインジケーター、調整可能なシフトタイミングインジケーター、燃料残量計、そして表示バリエーションの豊かな距離計が備えられている。もう一方では、モトGPスタイルで肉抜きされたアルミ製トップブリッジが目を惹く。ハンドルバーの位置は22mm下げられ、絞り角は2度開いた。こうしてよりスポーティなライディングポジションとなったわけだが、それでもYZF-R3は快適な部類に入る。これは780mmという低めのシートのおかげもあるだろう。リアルレーサーにしたいのならば、ここからシートを数インチほど上げればいい。
さて、YZF-R3はどのくらいスポーティなのか。サーキットを縦横に走り回った周回を振り返ってみると、コースはメインストレートを除けば長い直線がなく、ギヤチェンジは本当に忙しい。3速から4速、そして5速、6速へ。瞬く間に3速へと戻り、また最初から繰り返す。しかし、ギヤレシオを3つ下げるという作業は、タイトフックコーナーでは時として絶対に必要というわけでもない。この321ccエンジンはいつも十分なトルクを発生してくれるからだ。
※詳細はヤングマシン4月号に掲載します
【YZF-R125】これまででもっとも人気のある125cc
この新しいR125は第3世代となり、ほぼ全てが刷新されている。2008年にヤマハが最初のYZF-R125を発表したとき、この8分の1リッターのマシンがこれほどの成功を収めると想像したものはいなかっただろう。全ての16歳がこのマシンを欲しいと思っているように見えるほどだ。若者のためのスーパースポーツは、しばしばヤマハ史上最高のベストセラーとなってきた。特にドイツ、そしてイギリス、イタリア、スペイン、フランス、そしてノルウェーでも、非常に人気があるのだ。
最初のモデルが登場してから10年が経った今、125ccの第3世代はスターティングブロックに入っている。欧州ヤマハの広報マンは「この製品はプレミアムなものですよ」と語り、ヤマハがどれほどこのマシンのモデルチェンジに真剣に取り組んでいたか、そしてプロジェクトにどれだけ徹底的にアプローチしたかを強調した。
マシンについてざっと説明すると、法定最大出力の15psを発生するエンジンに、MotoGP風の外観とより現代的なデザイン、より軽量でより正確なハンドリングを備えている。さらに、高いトップスピードを実現しながら、その領域での快適性やユーザーフレンドリーさも実現しているという。これらの野心的な目標を達成するために、エンジンからフレーム、そしてシャーシまで、全てが新しくなった。
これらの急進的かつ根本的な治療法が、いかに効果的なものなのかを明らかにしよう。なぜなら、このニューモデルは現代の125ccスポーツのなかでもベストといっていいからだ。跨ってみて、YZF-R3と比べると、R125のほうが高い位置に座っている。目前の眺めはフロントホイールのフィーリングが格別であることを期待させる。倒立フォークはφ41mmで、R3のφ37mmと比べて4mmも太く、間違いなく剛性も高い。この小さなヤマハは大きな飛躍を果たしているにもかかわらず、さらに背の高いライダーにも十分なスペースを提供している。
125ccの可変バルブ機構つきエンジン
しかし、もっとも重要なのはエンジンで、とりわけ7400rpmで2つの異なるカムプロファイルを切り替える可変バルブ機構(VVA)は、今回のモデルチェンジ最大のトピックといっていいだろう。また、シリンダーヘッドも新しくなっており、大径で短い吸排気バルブを備えている。圧縮比は従来型と変わっていないものの、燃焼室は小さくなっていて、より良い燃焼効率が追求されている。新しい燃料噴射システムと大幅に拡大されたエアボックスを組み合わせることで、シングルエンジンのトルクは最適化され、スロットルを大きく開けた際のレスポンスも柔らかい。
ただ、エンジンが従来型よりも明らかにスムーズになっているかどうかにかかわらず、基本的にフルスロットルで15馬力を絞り出すように操縦していると、これをきちんと説明するのは難しい。だが、新しいR125は(ライダーの脳内の)モードを切り替える必要はない。従来型は7000rpmから上をキープする必要があったが、新型はこれ以下からきちんと加速する。残念ながらVVAの切り替わりを感じ取ることはできない(非常に目立たないのだ)が、その代わりにコックピットにはVVAディスプレイがあり、視覚的にバルブ制御の切り替わりを知ることができる。
燃料タンクの上に伏せ、風の抵抗を受け流しながら125ccに鞭を入れてみると、最高速度はメーター読みで134km/hだった。これでコーナーに入るときには非常に活力のあるヤマハを感じられる。若きバレンティーノ・ロッシになりたいなら、コイツしかない!
※日本への導入は今のところ未定のまま
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