’19でユーロ4対応とともにスタイルを一新するモデルチェンジを受けたカワサキNinja ZX-6R。600スーパースポーツの中にあってレースレギュレーションに縛られないプラス37ccの636ccを設定し、独自のポジションを築いてきたネオ600SSとも言えるこのバイクは、一体どんな実力があるのか。今回の比較対象は、あくまで600SSレース最強を目指すヤマハYZF-R6。#1の公道走行インプレッションに続き、本編ではサーキットでのガチンコタイムアタック対決の模様をお届けする。
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'19でユーロ4対応とともにスタイルを一新するモデルチェンジを受けたカワサキNinja ZX-6R。600スーパースポーツの中にあってレースレギュレーションに縛られないプラス37ccの636ccを設定[…]
対決の前にポジション&足付きをチェック
KAWASAKI Ninja ZX-6R
YAMAHA YZF-R6
ガチンコ勝負の模様は先に映像をご覧いただこう
【TESTER:丸山 浩】ご存じWITH MEプロフェッショナルレーシング会長にして本誌メインテスターの丸山浩。カワサキ2019モデルへの試乗としては、兄弟車のZX-10RRに続いて今回が2台目だ。
テストは千葉県にある袖ヶ浦フォレストレースウェイで実施。全長は2436m、ホームストレートの長さは400mで、4輪の走行も楽しめるミドルクラスのサーキットだ。コース幅が広く初心者が楽しく練習するにももってこいだ。
Ninja ZX-6Rが1秒もの差をつけた!
それではカワサキZX-6RとヤマハYZF-R6のタイムアタックによる勝負結果を見てみよう。場所は千葉県にある袖ヶ浦フォレストレースウェイ。写真撮影時はあいにくのウエットだったが、データは後日ドライコンディションで全開走行したときのものだ。グラフ内の赤線がZX-6R、青線がYZF-R6。ベストタイムではZX-6Rの1分13秒690に対し、YZF-R6は1分14秒688で、なんと約1秒もの差が出てしまった。総じて述べると、ZX-6Rは全体でタイムを出しやすく作っているのに対して、YZF-R6はコーナリングで速度を稼ぐ正統派レーサーの印象だった。
まず、中間域の扱いやすさが印象的なカワサキZX-6Rだが、高回転でのパワーも排気量的に有利なため、結局のところ計測地点開始のメインストレートにおける最高速でもヤマハYZF-R6より上だった。一発の最高速度ではZX-6Rは197.09km/hに対し、YZF-R6は191.44km/hと7.6psの差がしっかりと出たかたちだ。だが、ここ袖ヶ浦FRWでは高回転域で引っ張れるのはメインストレートと2コーナーエンドまでの第2ストレートくらい。タイム差に大きくつながった要素はここからになる。
公道でもちょっと感じていたが、YZF-R6は1万4500rpmでピークを迎える高回転域を重視しているために10000〜11000rpmあたりにちょっとトルクの谷が出てしまい、そこが立ち上がりでZX-6Rと比べて、今一歩スピードを乗せにくくしてしまう原因となっていた。グラフ上では1・2コーナー立ち上がりでも、ちょっとその傾向が見え隠れしている。
残るセクションは中間域を多用した走りが必要となり、こうなるともうそこが得意なカワサキZX-6Rが有利なのはグラフ上でも明確だ。3コーナーから後は、コーナリング速度こそヤマハYZF-R6の方が速くても、下から上までスムーズに伸びきるZX-6Rが立ち上がりで逆転。したがってコーナー間のトップスピードでも上回っていくようになる。これは+37ccのおかげというだけではない。ZX-6Rはエンジンとハンドリングのバランスがすごくナチュラルで走りやすい車体作りとなっていたのもその理由だ。サスペンションはSSとしては柔らかく良く動いてフレンドリー。フレンドリーと言うと限界が低そうに聞こえるが全体的な走りやすさを優先に考えたという感じで、しっかり踏ん張るし前後ピッチングを積極的に使ったライディングにも応えてくれる。つまりスロットルを開けていきやすい車体となっているのだ。これはまさにZX-10RRで感じたときと同じような方向性。これに対してYZF-R6のサスもよく動く方ではあるものの、行ききったところでピシっと決まるような、どこかソリッド感がある仕上げとなっていた。やはり”レーサー”らしさが印象強い。
こうして見るとZX-6Rは、レースに出ないのだったらトルクの谷を解消してもっと気持ちよくタイムを出せるようにしたのがあってもいいじゃないという狙いどおりのバイクとなっていた。ユーザーがポンと2台に乗って、どちらがすぐにタイムを出せるかと言うと、やはりカワサキZX-6Rになるだろう。もっとも楽しみ方は人それぞれ。あくまでレース前提の枠組みの中でライディングを鋭く研ぎ澄ましていきたいのであれば、デザイン的にもシャープにまとめたヤマハYZF-R6の魅力も捨てがたい。
まとめ:600スーパースポーツの良さを再確認
サーキットを含めて気軽にスポーツしたいと思ったときに、まず候補に挙がるオートバイは今ではフルカウル250になるのだろう。しかし、パワーや車体の上質感、それに伸びきり感のある直4の良さといったものを追求していくと、最終的に1000ccSSには勝てない。だが、いかんせん1000ccSSは200万円超えと高くなりすぎた。まだ手が届く600SSは今再び評価される時代が来たと思う。
たまに乗ると本格レーサー気分でパキンとした非日常感に酔いしれられるヤマハYZF-R6に加えて、今回は+37ccで普段乗りまでカバーしつつサーキットでも速いカワサキ新ZX-6Rが出た。ホンダ、スズキもこのまま黙ってはいないはず。どんなマシンで楽しませてくれるか。これからの新しい600SSが楽しみになってくるテストだった。
●まとめ:宮田健一 ●撮影:山内潤也
※ヤングマシン2019年2月号掲載記事をベースに再構成
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