マシン・オブ・ザ・イヤー2018
特集:兄弟車試乗インプレ対決

ヤマハMT-09 vs MT-07試乗インプレ対決#3【ワインディング&採点結果】

ヤマハMT-09 vs MT-07

兄弟車のパフォーマンスの違いを徹底的に検証する本特集、845ccの3気筒エンジンが独特かつ強烈なダッシュを生むMT-09と、2気筒688ccエンジンが爽快かつ刺激的な走りを生むMT-07について、走りの違いはどこにあるのか? 東京上野のヤングマシン編集部〜西伊豆間の往復約400kmをテスター4名が走り、個人的採点を施した。本稿では試乗ツーリングのラストステージ・ワインディング走行の後に採点結果を発表する。


【特集:兄弟車試乗インプレ対決】
〈Z900 vs Z650編〉
#1:主要スペック&ライポジ比較
#2:街乗り&高速走行
#3:ワインディング&採点結果
〈MT-09 vs MT-07編〉
#1:主要スペック&ライポジ比較
#2:街乗り&高速走行
#3:ワインディング&採点結果


ヤマハMT-09

【YAMAHA MT-09 100万4400円 3気筒 116㎰ 845cc】

ヤマハMT-07

【YAMAHA MT-07 77万7600円 2気筒 73㎰ 688cc】

テスター4名(左から)サーキット走行を知り尽くした男・伊丹孝裕、ガジェット&雑学王・八百山ゆーすけ、ユーザー代表Youtubeクリエイター・二宮祥平、YM編集部のインプレデータバンク・松田大樹

STAGE3:ワインディング

かなりパンチの効いたエンジン、わりと特殊なライディングポジション、遠慮なくピッチングするサスペンションなど、ハッキリとアグレッシブさを打ち出すMT‐09とは対称的に、のんびりと牧歌的なエンジンを持つMT‐07には、それに見合うごくオーソドックスなライディングポジションとサスペンションが与えられ、すべてが平和の極み。コーナーもリラックスして走れるその普通さを八百山、二宮、松田の3人は高く評価した。

そのフレンドリーな特性はどんなライダーのスキルもフォロー。バイクを操るよろこびを教えてくれるという意味で、その存在価値は計り知れない。

言い方を変えれば、MT‐09はキャラが立っているため、ハマる人はハマること間違いなし。それぞれのモデルにテリトリーがあり、しっかりと棲み分けがされている。


【MT-07】”普通”の走りが高評価に直結

ヤマハMT-07

【伊丹:MT-07=3/5PT】トラクションの意味を教えてくれるエンジン
「バイクって楽しい!」と思わせてくれる名車の1台だと思う。なによりエンジンの鼓動感が心地よく、右手ひとつで自在に引き出せるトラクションはスポーツバイクのお手本。タイヤが路面をつかむフィーリングがクリアに伝わってくるため、まったく転ぶ気がしない…のに評価が3点に留まったのにはワケがある。ひとつはサスペンションがもう少し粘ってほしいこと。そしてもうひとつはギヤチェンジに節度感がほしいことだ。ヤマハのミドルクラスは不思議と「カチッ」としたシフトフィーリングが希薄で、盛り上がってきたスポーツマインドが削がれることが多い。ちょっとしたことだけに実に惜しい。

【八百山:MT-07=5/5PT】最適化されたバランス操作が心地よく感じる
“小気味いい”という言葉がこの4台の中では一番ぴったりくるMT-07。コーナー の大小を問わず積極的にスロットルを開けていけるのは270度クランク特有のトラクションフィーリングならではだ。また、ボクのような小柄な体格の場合、車体の大きさもワインディングの走りやすさに影響することが多いが、それを感じさせない小気味よさは、シートとステムの距離、そして高めのシートとハンドルの位置関係によるところが大きい。また、スーパースポーツ的な硬めで幅広のシートは、腰を落としたフォームに最適で、リヤタイヤを感じながら走ることができる。

【二宮:MT-07=5/5PT】ワインディングは最高の舞台
高速道路での安定性をほとんど犠牲にして、それ以外の走行においてライダーを楽しませるためだけに性能をつぎこんだ1台と言える。その中でワインディングは最高の舞台だった。どんなアクセルワークをしても、失敗しても、強引に車体を前に押し進めてくれる。フロントブレーキも強烈に効いてくる。ロックしたら? もちろんABSが作動する。力まずに、軽やかに、最小限の力でワインディングの連続を耐えることができる。車体も軽量で、ある程度の悪路もいなしてくれる。低速からの加速は、どちらかというとモタードを大排気量にしたような雰囲気に感じる。だが弾け飛ぶような感じはせず、扱いにくさはない。

【松田:MT-07=5/5PT】絶品のフロントタイヤがオレを導く!
いわゆる“セルフステア”の付き方が超絶キモチイイ。Uターンなどの低速時を除けば、コーナリング中に「ハンドルが切れたぞ」って明確に感じるバイクは少ないけど、MT-07はコーナーに向けて倒し込んでいくと、スッと明確に、絶妙なスピードとタイミングでフロントタイヤがインを向く。まるで前輪がライダーを先導してくれるかのようで、フロントがズルッと行きそうな不安も皆無。こうした安心感は19インチなどの大径な前輪を持つ旧車系にも近い。ヘッドパイプもやや高めで、倒し込む際の適度な手応えもいい意味で旧車っぽく、やや高い速域で超特濃の「操ってるぜ!」感が味わえる。う〜ん、名車だ!

 


【MT-09】立ったキャラがハマる人にはハマる

ヤマハMT-09

【伊丹:MT-09=3/5PT】パワフルなエンジンに見合うサスを求む!
トルクのかたまりのようなエンジンはワインディングのためにあるも同然。それがモードの切り換えによってさらに豹変し、もっともアグレッシブな”A”を選択した時のダイレクトなレスポンスはかなり刺激的だ。一定のレベルを超えるとトラクションコントロールが介入してセーフティ機能の役割を果たしてくれるものの、本当はサスペンションがフォローしてくれるのが理想。せめてリヤのグレードがワンランク上がれば…と思っていたらヤマハは用意周到にもオーリンズを標準装備した”SP”をラインナップしていた。それなら評価が”4″か”5″になる可能は高く、伸びシロに期待したい。

【八百山:MT-09=3/5PT】高めの着座位置はライダーの体格を選ぶ
街乗りや高速道路では意外にジェントルだったMT-09も、やはりワインディングに来ればジャジャ馬ぶりを発揮。3気筒特有のどこでもパワーが出せる分、”A”や”STD”のパワーモードでは慎重なスロットル操作が求められる。このヤンチャ感こそMT-09の面目躍如と言いたいところだが、小柄なボクにはモタードルックの高さがあってハンドル幅も広い車体を思うように動かせない。また、ブレーキング時のピッチングが大きいのもモタード的な味付けか。特に細身で高く着座位置の自由度が高いシートは、イン側の脚を突き出して、両肘を広げて走れる体格があるといいのに、と悔しい限りだ。

【二宮:MT-09=4/5PT】電子制御は安心”感”が大事
個人的にこのシートがどうしてもしっくりこない。尾てい骨を押されている感じ。だが難点はそのくらいで、特に電子制御には助けられた。私はカーブの立ち上がりでのアクセルワークがとても苦手で、外にはらむことが多い。MT-09の電子制御はそれを極力和らげてくれる。最悪の場合、リヤが流れそうになってもTCSが作動してくれるという安心感もある。ただ、必死の練習によって身につけた技術が、電子制御の安心感に任せて雑になってしまうのは少し悔しい…。ちなみに私の技術不足と借りたバイクへの遠慮もあって、とうとうTCSを作動させることは最後まで出来なかったので、それについては同行の諸兄の記事を参考にされたし。

【松田:MT-09=4/5PT】かなりマニアックなツンデレマシン
他3車と比べて違和感あるライポジや、ストロークが長くフワッフワな前後サスなど、最初は乗り方が分からず途方にくれる。で、何とかすべく乗り方を探る。僕の場合はサスをしっかり動かすように意識したら、タイヤの接地感がものすごく濃密になり(あくまでも僕の感覚ですよ)、ガンガン開けられて超楽しかったのだが、それが正しいかはさておき、そんなマニアックさを面白がれるか否かで評価が分かれるバイクだと思う。すぐにフロントが浮くし、エンジンのギュルギュルした回転感も楽しいから、つい飛ばしたくなるのが問題っちゃ問題ですね。

※TOTAL〈ワインディング〉:MT-09=14/20PT|MT-07=18/20PT


 採点結果:83PT vs 69PT、大差で弟分・MT-07に軍配!

ヤマハMT-09

【伊丹:MT-09=15/25PT】あとからジワジワくる記憶に残る1台
上記の5項目ではオール「3」と配点。そのため、合計では15点に留まり、低い点数になってしまった。どんな場面でも使える万能性やスキルを選ばないフレキシビリティの面で、他のモデルに一歩及ばなかったことがその要因である。ただし、特にエンジンのキャラは抜群の個性を発揮。試乗からしばらく経っても鮮烈な印象とともに思い出せるのは他のどのモデルでもなく、MT-09だ。時に格闘しながらもじっくり乗り込み、手なずけられるようになった頃にはライダーのスキルが1UPしているに違いない。

【八百山:MT-09=18/25PT】こだわりたいライダーにはピッタリ!
マイナーチェンジ前に比べて穏やかな印象を持ったMT-09。街乗りや高速では丁寧に右手を操作すれば、ゼロスタートから巡航まで極めてリニアに、スムーズに走ってくれる3気筒エンジン。隙間なく厚みがあるトルクフィールは、普段使いにとても扱いやすい。一方で、モードをBからSTD、Aと切り替えるにつれパンチの増していく特性は初代から健在で、このフィーリングはMT-07では間違いなく得られないものだ。“異種交配造形”と謳われるモタードチックなスタイルと合わせて、これがイイ! とこだわりのあるライダー向けのマシンだといえる。

【二宮:MT-09=18/25PT】最新技術は確かにスゴイが…
選択式のトラコンと、電スロの繊細なタッチは伊達じゃない! これらはパイロット(私)の未熟さを大いに補ってくれた。具体的にはコーナー立ち上がり時などの加速ショックが和らぎ、アウトに誤ってはみ出すことも減る。だが、私の最終印象はお尻の痛いバイク。シートが斜めになっていることから、ツーリングの帰りにはどこに座ったらいいのか分からなくなった。シートは改良の余地があるが、オプションパーツの豊富さからも、自分に合わせたカスタムにいくらでも出費できる、独身貴族の理系オタクにはピッタリの1台だ。

【松田:MT-09=18/25PT】優等生じゃないから面白い!
‘14年の登場時は「なんだコリャ!?」って思ったけど、最近ムクムクと魅力を感じるようになった1台。乗り味はマニアックだし、長所の裏側にハッキリと短所があるけど、それをヤマハが「ま、いいじゃん」って思ってるフシがあることに共感します(笑)。今回の採点項目だと下位に沈むけど、「個性」や「痛快さ」なら間違いなく1位だし、イジりたくてムラムラさせる「カスタム欲求度」も最強。それは短所が目立つことの裏返しでもあるけれど、それでも乗りたいと思わせるのが“面白いバイク”なんじゃないかと感じます。

ヤマハMT-07

【伊丹:MT-07=19/25PT】癒しを求めるライダーはこれ一択
MT-09とはまったく対照的なのに、このモデルの魅力もまたエンジンだ。ギュルギュルドカンがMT-09だとすれば、こちらはドコドコフワッ。包み込まれるようなバイブレーションが心地よく、ただ高速道路を巡航していても表情が豊かで飽きない。ビッグバイクビギナーの最初の1台としておすすめしたいのはもちろん、スーパースポーツに疲れ果てた大人にも最適。その心と体をやさしくほぐしてくれるはずだ。

【八百山:MT-07=24/25PT】人車一体を思わせる感覚が嬉しい!
MT-07はスリムでコンパクト、そして軽いのだけど、ただ小さいというのではなく、スロットルを開ければ逞しく前に進んで、走りを楽しませてくれる。以前、SRXに乗っていた身としては、シングルがパラツインになったという違いは大きいとはいえ、その面白さは変わらない。気負わずに乗れる感覚も同じ。兄貴分であるMT-09のスパルタンさとは対照的に、MT-07はコンパクトでライダーに優しいキャラクターを持っている。すべてが自分の手の内にあるという、ボクのベストスポーツネイキッドだといえる。

【二宮:MT-07=18/25PT】”相棒力”はピカイチ!
高速道路では横風などのふらつきが一番目立った。しかしそれは中低速での扱いやすさと強引なトルクを確保すべく払った犠牲だった。急な上り坂も、無理やりなアクセルワークにもゴリゴリと応えてくれる。車重も183kgと軽い。短いホイールベースで鬼の小回りを発揮するMT-07は、普段使い、おひとり様ツーリングなど、一人でもどんどんバイクに乗る、いやバイクしか友達がいないタイプのライダー(おそらく理系)には素晴らしい相棒になってくれる。トランスフォーマーを想わせるMTシリーズは、理系心をくすぐるデザインだ。

【松田:MT-07=22/25PT】新車もウマいぜ! 旧車好きに捧ぐ1台
よくいるでしょ?『オレの◯×△(←旧車)マジ最高。最近のバイクは……』って人。そんな人にこそ試乗を強く勧めたい1台。少なくとも乗り味の物足りなさで現行車を敬遠しているなら、最新の軽量車体に旧車的な優しさを秘め、アクセルひとつでフロントが浮く瞬発力も備えたMT-07には、間違いなく心動く部分があるはず。何を隠そう僕もそのクチ(=旧車マジ最高系)でしたから、嘘も誇張もマジありません。自分の老愛機、その維持にふと嫌気が差した時、もわもわ.っと浮かんでくる次期愛車候補。常にその中の1台です。


【特集:兄弟車試乗インプレ対決】
〈Z900 vs Z650編〉
#1:主要スペック&ライポジ比較
#2:街乗り&高速走行
#3:ワインディング&採点結果
〈MT-09 vs MT-07編〉
#1:主要スペック&ライポジ比較
#2:街乗り&高速走行
#3:ワインディング&採点結果


●文:伊丹孝裕/八百山ゆーすけ/二宮祥平/松田大樹 ●写真:真弓悟史/松井 慎
※『ヤングマシン2018年10月号』掲載記事をベースに再構成

kas

kas いわゆるWeb担的な黒子

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研二くんのゼッツーに憧れるも手が届かずZ400GPで卒輪(そつりん)した"自二車は中型二輪に限る"世代。あれから30余年を経てまさか再び二輪の世界に触れることになろうとは人生何が起こるかわからんもんだ(笑)
愛車:シトロエン2馬力号(自分的には"屋根付き四輪バイク"の位置付け)

マシン・オブ・ザ・イヤー2018
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