「カブ」の名称は小熊を意味する英語から
カブF型は自転車の後輪に取り付ける6kgの補助エンジンで、ホンダのオートバイ躍進の基盤を築いた機種。「白いタンク、赤いエンジン」の愛称で親しまれ、デザインでも人気を博したという。販売方法もユニークで、書類や取り付け金具などを含めたエンジン一式を33×33×60cmの段ボールに箱に収めて自転車店に直販するという方法で、全国にホンダ販売網を築き上げるきっかけとなった。なお、愛称「カブ」の由来は、自由奔放に走りまわる小熊を意味する英語から来ているらしい。
ドリームE型よりフレンドリー
ホンダで初めて「CUB」を名乗ったのが‘52年のカブF型。とはいえそれはバイクではなく、自転車に装着する50ccの補助エンジンの名称だった。ホンダの代理店が全国に20店程度しかなかった時代、約5万軒の自転車店にダイレクトメールを送り、販売を募るなどの戦略で大ヒット。全国にホンダ販売網を築く契機にもなっている。
自転車同様にペダルを漕いでスタート。この時点ではクラッチを切っておき、速度が乗ったらクラッチを繋いで押し掛け的にエンジン始動。あとはレバー式のスロットルで回転数を調整しながら走る。変速機はない。最高速度は35km/hで、これが後に原付一種の制限速度を決める基準になったとされる。正味5分以下という、短くも貴重な試乗時間で得た印象は、見た目は完全に自転車なのに、エンジンをコントロールしながら走るその世界はバイクそのもの……ということ。大きめにレバーを開ければグッと押されるように加速するなど、意外なほどの力強さも見せる(後に60ccも追加された)。左カーブでは左側ペダルを持ち上げ、バンク角を確保するなどの操作は必要だが、カブF型は65年も前の乗り物とは思えないほど普通に走るのだ。
僕はやはり‘50年代初頭の製造で、ノンストップで箱根を登りきった逸話を持つホンダドリームE型に乗ったことがあるのだが、違和感のあるライポジに、各部から発する豪快なメカノイズ、シフトやブレーキ操作に対するギクシャク感など、その走りはいつ何時も気が抜けないスリリングなものだった。当時、かなりの高級車だったハズのドリーム号だが、同世代の乗り物として比較した場合、カブF型の方が格段にフレンドリーだったと感じる。 ※テスター:マツ(ヤングマシン)
●撮影:長谷川徹 ●取材協力:本田技研工業/ホンダモーターサイクルジャパン ※2018年7月16日、ツインリンクもてぎの南コースでホンダコレクションホール開館20周年記念イベントが開催された。いつもの動態確認テストはレーサーなどが多かったが、今回は20周年記念ということで市販製品特別走行が実施され、ホンダの黎明期から現在までのエポックメイキングなバイクが走行を披露した。 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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