ホンダコレクションホール20周年特集③

ホンダ初のカブ、1952年製造のカブF型が走行

2018年7月16日、ツインリンクもてぎの南コースでホンダコレクションホール開館20周年記念イベントが開催された。いつのも動態確認テストはレーサーなどが多かったが、今回は20周年記念ということで市販製品特別走行が実施され、ホンダの黎明期から現在までのエポックメイキングなモデルが走行を披露した。

「カブ」の名称は小熊を意味する英語から

カブF型は自転車の後輪に取り付ける6kgの補助エンジンで、ホンダ躍進の基盤を築いた機種。「白いタンク、赤いエンジン」の愛称で親しまれ、デザインでも人気を博したという。販売方法もユニークで、書類や取り付け金具などを含めたエンジン一式を33×33×60cmの段ボールに箱に収めて自転車店に直販するという方法で、全国にホンダ販売網を築き上げるきっかけとなった。尚、愛称「カブ」の由来は、自由奔放に走りまわる小熊を意味する英語からきている。

【HONDA CUB F 1952年5月】カブF型のエンジンは、ピストンバルブ・横断掃気式の2ストローク単気筒で、シリンダーはアルミダイキャスト製のバレルに鋳鉄製のスリーブを圧入した進歩的な設計だった。■空冷2ストローク単気筒 50cc 1.0ps/3600rpm 車重6kg(自転車を除く)

【インプレッション】ドリームE型よりフレンドリー

ホンダで初めて「CUB」を名乗ったのが‘52年のカブF型。とはいえそれはバイクではなく、自転車に装着する50ccの補助エンジンの名称だった。ホンダの代理店が全国に20店程度しかなかった時代、約5万軒の自転車店にダイレクトメールを送り、販売を募るなどの戦略で大ヒット。全国にホンダ販売網を築く契機にもなっている。

自転車同様にペダルを漕いでスタート。この時点ではクラッチを切っておき、速度が乗ったらクラッチを繋いで押し掛け的にエンジン始動。あとはレバー式のスロットルで回転数を調整しながら走る。変速機はない。最高速度は35km/hで、これが後に原付一種の制限速度を決める基準になったとされる。正味5分以下という、短くも貴重な試乗時間で得た印象は、見た目は完全に自転車なのに、エンジンをコントロールしながら走るその世界はバイクそのもの……ということ。大きめにレバーを開ければグッと押されるように加速するなど、意外なほどの力強さも見せる(後に60ccも追加された)。左カーブでは左側ペダルを持ち上げ、バンク角を確保するなどの操作は必要だが、カブF型は65年も前の乗り物とは思えないほど普通に走るのだ。

僕はやはり‘50年代初頭の製造で、ノンストップで箱根を登りきった逸話を持つホンダドリームE型に乗ったことがあるのだが、違和感のあるライポジに、各部から発する豪快なメカノイズ、シフトやブレーキ操作に対するギクシャク感など、その走りはいつ何時も気が抜けないスリリングなものだった。当時、かなりの高級車だったハズのドリーム号だが、同世代の乗り物として比較した場合、カブF型の方が格段にフレンドリーだったと感じる。 ※テスター:マツ(ヤングマシン)

ハンドル右側のスロットルレバーを操作してパワーをコントロール。タンク容量は2Lだ。この個体の自転車部は山口自転車工場製。後に「オートペット」などのバイクも手がけ、一時は4大メーカー同等の規模を誇った。

エンジンはケースとヘッドについている2ヵ所のブラケットで搭載する。ドリブンスプロケットは、後輪を外すことなく取り付けられるように分割されており、同じように分割されたリング状の金具でスポークを挟んで取り付けるようになっている。

取材協力:本田技研工業/ホンダモーターサイクルジャパン
撮影:長谷川徹

いち

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本誌編集長。雑誌は生き残りタイアップ全盛期だというのに、ひとり次期型ネタを嗅ぎまわって反感を買う現代のスクープ魔王。
■1972年生まれ
■愛車:BMW R100GS(1988)

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