600スーパースポーツより安い!

日本仕様は140万円台前半も?! 上陸間近のヤマハ「YZF-R9」台湾仕様が「MT-09 Y-AMT」とほぼ同価格帯

ヤマハモーター台湾は、日本でも正式発表が待望されているスーパースポーツモデル「YZF-R9」の価格を発表した。昨秋の欧州&北米発表の時点では日本仕様の導入が2025年春以降とされていたこともあり、近いうちの正式発表に期待がかかる!


●文:ヤングマシン編集部(ヨ)

150万円切りはほぼ確実と思われるが……

ヤマハは台湾で、欧州および北米などで発表済みのスーパースポーツモデル「YZF-R9」の導入価格を発表。日本国内にも2025年春以降の導入が案内されており、正式発表に機体がかかる。

そんなYZF-R9、台湾仕様の注目は何と言っても価格だろう。これまでの北米仕様や欧州仕様は、兄弟モデルのMT-09 SPやY-AMTと近い価格帯ながらやや高めの設定だったが、台湾仕様では58万8000台湾ドル(日本円換算約285万6000円・5/13現在)で、2024年モデルのMT-09 Y-AMTの57万8000台湾ドル(約280万9000円)とほとんど同じなのだ。

日本円に換算すると高く見えてしまうが、これはあくまでも関税や運搬費用など全てを含めたものなので、数字自体よりも近似するモデルとの価格比に注目したほうがよさそうだ。

この価格比を日本仕様のMT-09 Y-AMTに掛け合わせると、想定される日本仕様YZF-R9の価格はなんと約138万8000円になる。もちろん、仕向け地によって想定される販売台数や現地法人の価格戦略などもあるので一概には言えない。なにしろ、北米や欧州での価格比を参考にするなら、YZF-R9はもっと高くなる可能性もある。

下記はそれぞれ仕向け地を参考にした場合の想定価格だ。

台湾参考→日本仕様=約138万8000円
2024 MT-09 Y-AMT(57万8000元)
2025 YZF-R9(58万8000元)
価格比1.0173

北米参考→日本仕様=144万1000円
2025 MT-09 SP(1万2499ドル)
2025 YZF-R9(1万2499ドル)
価格比1.000

英国参考→日本仕様=約156万8000円
2025 MT-09 Y-AMT(1万660ポンド)
2025 YZF-R9(1万2254ポンド)
価格比1.1495

イタリア参考→日本仕様=約158万7000円
2024 MT-09 Y-AMT(1万1599ユーロ)
2025 YZF-R9(1万3499ユーロ)
価格比1.1638

以上のようにバラつきがあるのも事実なので、過剰な期待は禁物。とはいえ、これまでの情報では150万円を切る可能性が高いと思われる。昨秋の段階ではあるが、ヤマハのトークショーで「アフォーダブル(お手頃)は、R9の意識したところ。海外では価格も発表済みだが、国内もそれを裏切らない値段で出す」との言及もあった。

ワールドスーパースポーツでランキング首位!

YZF-R9は、スーパースポーツ世界選手権=WSSP(スーパーバイク世界選手権=WSBKの下位カテゴリー)においては開幕戦の初出走でステファノ・マンツィ選手が優勝を遂げ、その後も同選手は着実にポイントを稼いで、4ラウンド終了時点ではランキング首位をキープ中。2位にMVアグスタ、3位にトライアンフと3気筒勢を従えながら快走を見せている。

YZF-R9の市販車での最高出力は120psは、これまでの600cc4気筒「YZF-R6」と同等。WSSPの燃料流量規制レギュレーションによって、モディファイしても最高出力でのアドバンテージは得にくいと思われるが、強力な低中回転トルクや最新エアロダイナミクスを反映したウイングレットの装備などによって高い戦闘力を得ているのだろう。

Stefano Manzi(WorldSSP)

とはいえ、最高峰の話を持ち出さなくとも、速くなりすぎた1000ccスーパースポーツよりも軽量でちょうどいいパワーのYZF-R9は多くのスポーツ走行好きの心に刺さるはず。サーキットで腕を磨く、あるいは公道で程よいスポーツ気分を楽しむのに最適な1台になりそうだ。

国内サーキットでライバルになりそうなのは、ホンダCBR600RR(157万3000円)、カワサキ・ニンジャZX-6R(158万4000円)、ドゥカティ・パニガーレV2(211万9000円)、MVアグスタF3(269万円~)、そしてYZF-R6(レースベース車のみ・137万5000円)あたり。YZF-R9登場後にどんな勢力図になるのか注目したい。

正式発表、お待ちしてまーす!

YZF-R9とは?

欧州および北米では2024年10月に発表された。

デザインは最新世代のR-DNAで設計されており、先行登場した2025年型YZF-R1よりも攻めた意匠のウイングレットはフロントスポイラーと融合した新スタイルを採用。水平基調のR-DNAデザインを新世代へと昇華している。

ツインアイのポジションライトと「M」字型エアダクトはそれぞれデザインが強調され、中央のモノアイLEDヘッドライトはR125~R7との共通性を持たされたものだ。

フロントウインカーはミラーに内蔵。灯火類はフルLEDで、中央のモノアイがメインのヘッドライト。左右のポジションライトが鋭く睨みをきかす。

YZR-M1イメージのトップブリッジを採用するのはRシリーズ共通。新作KYB製サスペンションのアジャスターは左右が別々の機能をするタイプだ。

エンジンは最新MT-09と同じく890ccの並列3気筒で、出力スペックは発生回転数を含めて踏襲。これを搭載する専用フレームは軽量なアルミ製デルタボックススタイルを採用しており、製造はR9専用に開発された重力鋳造としながら、低負荷と高負荷の両方でスポーツパフォーマンスを発揮できるよう剛性が最適化された。

MT-09とほぼ同スペックと思われる並列3気筒エンジン。制御マップ等は専用設定だ。

単体重量9.7kgのアルミ製デルタボックススタイルフレーム。シートレールまわりのスリムさにも注目したい。

他のCP3搭載モデル(MT-09やXSR900 GPなど)と比べてフレーム剛性はねじれ、横、縦の全てで高められているという。フレーム単体の重量は9.7kgで、ヤマハのスーパースポーツモデルに使用されたフレームの中で最軽量。これにより、ネイキッドモデルのMT-09からわずか2kg増の車重195kgを実現している(欧州仕様)。

エアロダイナミクスは徹底的な風洞試験を通じて開発され、前面投影面積が大きいR9のほうがR6よりも空気抵抗が少ないほどだという。これはフロントフェアリングの設計とウイングレットの組み合わせで空気抵抗を低減しながらダウンフォースを発生するという相反する要素を両立させたもので、ライダーにはフロントエンドの安心感を提供する。

ウイングレットは直線で前輪の揚力を6~7%低減し、フロントエンドスポイラーとの組み合わせによりその効果は約10%に達するという。

スーパースポーツのハンドリング

サスペンションは、2025年モデルのR1 GYTR(欧州)やYZF-R1(北米)と同時開発の新設計KYB製コンポーネントを採用。新しいφ43mm倒立フロントフォークは左右にリバウンドダンピングアジャスターとコンプレッションダンピングアジャスターを振り分けたセパレートファンクションタイプで、コンプレッション側は高速/低速を個別に調整できる。

ベースバルブを追加した新レイアウトにより、ダンピングレスポンスを向上、接地感を高めるとともに安定性を向上した。また、カシマコーティングによってダーク調のゴールド/ブロンズカラーとしているのも特徴だ。

リヤショックはフルアジャスタブルタイプで、こちらも内部の設計は新レイアウトとされている。

フロントブレーキにはブレンボ製Stylema(スタイルマ)モノブロックキャリパーを採用しステンレスメッシュホースとφ320mmダブルディススクを装備。マスターシリンダーもブレンボ製のラジアルタイプだ。

アウターチューブにカシマコートを施した倒立フロントフォーク。インナーチューブは通常のメッキタイプだ。

ブレンボ製Stylemaモノブロックキャリパーを奢るフロントブレーキ。

クリップオンハンドルを採用するライディングポジションは、シート高830mmながらライダーに過度な前傾を強いることはない。スリムに造られた燃料タンク容量は14Lとやや控えめだが、これはMT-09と同容量。R9では未発表だがMT-09のWMTCモード燃費は20km/L(欧州)であり、航続距離280kmを確保している。

このほか車体まわりでは、前後タイヤにブリヂストン製バトラックスハイパースポーツRS11を装着し、高レベルのグリップ性能を確保した。

新しいユーザーインターフェースとクルコンなどの電制装備

R9のスイッチギアはボタン数を最小限に抑えた新設計のもの、グローブを装着した状態でも最適な操作性を確保しているという。これにより3速以上・40km/h以上で作動するクルーズコントロールや各種電子制御の走行中の設定もしやすいはずだ。

面白いのは任意に設定できるスピードリミッターの装備だが、これは速度無制限と一般的な高速道路、そして速度の取り締まりが厳しい市街地の一般道などが混在する欧州の道路環境でも混乱なく(リスクなく)走行するためのものだろう。

6軸IMUを軸とした電子制御は、「スポーツ」「ストリート」「レイン」の3つの統合ライディングモードを備え、2つのカスタムモードと4つのトラックモードを任意に設定できる。これにより統合制御するのは、パワーデリバリー (PWR)、トラクションコントロール (TCS)、スライドコントロールシステム (SCS)、ブレーキコントロール (BC)、バックスリップレギュレーター (BSR)、エンジンブレーキマネジメント (EBM)、前輪リフトコントロール (LIF) など。このほかローンチコントロールシステムも備え、サーキットで後輪ABSをオフにすることもできるという。

クイックシフターは加速時と減速時のいずれでもシフトアップ/ダウンが可能な第3世代だ。

メーターはフルカラー5インチTFTで、表示テーマは4種類。トラックモードではラップライマーも表示可能だ。またスマートフォン接続機能を備えており、ヤマハライドコントロール(YRC)はアプリを使用することで最大40種類のモード設定を保存できるというから驚きだ。

スリムな燃料タンクとレーシーなコックピット。タンク上面のフラットさは伏せた際のフィット感を重視か。

5インチTFTディスプレイを備える。画面はコネクティビティのセッティングを表示している。

ガーミンのストリートクロスアプリを用いれば、統合されたフルナビゲーションシステムも利用可能。このほかにも電話やテキストメッセージ、天気予報など様々な情報をディスプレイに表示可能だという。

さらに、Y-TRACアプリを使えばGPSデータと連動してライディングデータを記録および解析することが可能。ラップとセクターのタイプだけでなく、バンク角やエンジン回転数、ギヤ位置、速度、スロットル位置、電子制御の介入レベルなどを記録できる。

参考:欧州仕様R9(日本名YZF-R9)の主要諸元とスタイリング

車名R9
全長×全幅×全高2070×705×1180mm
軸距1420mm
最低地上高140mm
シート高830mm
キャスター/トレール22°35′/94mm
装備重量195kg
エンジン型式水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ
総排気量890cc
内径×行程78.0×62.1mm
圧縮比11.5:1
最高出力119ps/10000rpm
最大トルク9.5kg-m/7000rpm
変速機常時噛合式6段リターン
燃料タンク容量14L
タイヤサイズ前120/70ZR17
タイヤサイズ後180/55ZR17
ブレーキ前φ320mmダブルディスク+4ポットキャリパー
ブレーキ後φ220mmディスク+1ポットキャリパー
※諸元は欧州仕様

YAMAHA R9[2025 EU model]Icon Blue

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YAMAHA R9[2025 EU model]Tech Black

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YAMAHA YZF-R9[2025 U.S. model]

北米仕様のみ白×赤をラインナップする。この車体色は2024年の全日本ロードレース最終戦でもお披露目されており、日本仕様にも導入されるのはほぼ確定と見ていいだろう。

YAMAHA YZF-R9[2025 U.S. model]White/Redline

R9 写真ギャラリー(写真は欧州仕様)

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