基本性能をMotoGP技術で磨き上げた!

さらばトップパフォーマー!【スズキGSX-Rを振り返る パート2】世界耐久レース&スーパーバイクで大活躍!

大排気量スーパースポーツは1000cc時代に突入!

90年代末はヤマハのYZF-R1やホンダCBR929RR、カワサキZX-9Rなどの大排気量スーパースポーツが、スーパーバイクレースとは別の部分で盛り上がっていた。大排気量レーサーレプリカの元祖といえるGSX-Rが、その戦いに参入したのが2001年のGSX-R1000だ。

ベースエンジンがGSX-R750のためシリンダーピッチに余裕が無く、ボアを大きく広げられないため、スーパースポーツのエンジンとしては異例の長いストロークになったが、最高出力はライバルを凌ぐ160psを発揮し、結果として扱いやすい出力特性を得ることができた。そして03年にはスーパーバイクレースのレギュレーション改定に合わせて開発した新型を投入した。

2005年には排気量が999ccのフルスケールになった[K5型]が登場。この年のワールドスーパーバイクでGSX-R1000を駆るトロイ・コーサーがチャンピオンに輝き、マニュファクチャラータイトルも獲得し、K5型は名機と呼ばれるようになった。また現行のGSX-S1000シリーズやKATANAがK5型を由来とするエンジンを搭載するのもスズキファンにはお馴染みだ。

そして07年、09年と従来通り2年毎のモデルチェンジを続けたが、以降は基本的にカラーチェンジのみ。12年にマイナーチェンジするも、その後は再びカラーチェンジのみ。これは08年のアメリカで端を発した世界的な金融・経済危機のリーマンショックが影響したようで、スズキ以外のメーカーもこの時期は少なからず開発が停滞していた。

2001年 GSX-R1000
2000年型のGSX-R750をベースに排気量を988ccに拡大し、160psを発揮。シャシーのレイアウトやサイズもGSX-R750とほぼ共通で、増大したパワーに対処するため各所を強化するが、乾燥重量は170kgと軽量。02年はカラーチェンジのみ。

2003年 GSX-R1000
モデルチェンジ。FIのスロットルボディやインジェクターの改良やECUの高性能化、ラムエア機構の効率向上などで164psにパワーアップ。メインフレームのサイドチューブが補強リブ入りの押出し材になり、可変式のスイングアームピボットを採用。スーパーバイクのレギュレーション変更に伴い、GSX-R750に代わって、このモデルからレースのベース車両になった。04年はカラーチェンジのみ。

2005年 GSX-R1000
モデルチェンジ。ボアを0.4mm広げ、排気量が999ccのフルスケールになった。圧縮比を高め、スロットルボディ径をφ42→44mmに拡大してツインインジェクターを採用し、最高出力が178psに大幅アップ。最大トルクも向上し、ストリートでの扱いやすさも増した。バックトルクリミッターも装備。サイレンサーは軽量なチタン製ボディを採用。ハンドルとシート間を40mm近くし、ステップ幅を17mm狭めるなどポジションのコンパクト化も図る。06年はカラーチェンジのみ。

2007年 GSX-R1000
モデルチェンジ。ECU(エンジンコントロールユニット)のマップをハンドルスイッチで切り替えられ、走行モードを選択できる機構(S-DMS)を市販量産車で初めて装備。吸排気ポートの面積を拡大し、インジェクターの改良やイリジウムプラグの採用などで、最高出力は185psにアップ。また欧州の排出ガス規制に対応するため、マフラーを左右2本出しとした。フレームもすべてのパーツを鋳造化した新設計。3ポジション式のステップや電子制御式ステアリングダンパーも装備。08年はカラーチェンジのみ。

2009年 GSX-R1000
モデルチェンジ。新設計のエンジンは従来モデルと異なり、初めてストロークを縮め(ボア×ストローク73.4×59mm→74.5×57.3mm)、ピストンスピードを下げてレース用のチューンナップの対応幅を広げた。新設計フレームはホイールベースを10mm縮小しながらスイングアームを35mm長くすることでコーナリング性能を向上。10、11年はカラーチェンジのみ。12年はマイナーチェンジで軽量ピストンや圧縮比アップなどエンジン各部をリファインし、マフラーが右1本出しに。ブレンボ製ブレーキキャリパーも採用。13年からはカラーチェンジを繰り返し、16年はGSX-Rの30周年カラーで販売された。

ミドルスーパースポーツは600が主役に

1997年から開催されたワールドスーパースポーツ(4気筒は600cc以下。1999年からFIM世界選手権に格上げ)に合わせて、軽量コンパクトなスーパースポーツモデルとして開発・販売を始めたGSX-R600。国内でも2001年にST600が創設され、鈴鹿4時間耐久レースもこのクラスに。従来はGSX-R750をベースに600を開発していたが、2006年からはGSX-R600が開発ベースとなり、750がバリエーションモデルの位置づけに変わった。

2001年 GSX-R600
2000年のGSX-R750をベースにモデルチェンジ。FI(電子制御式燃料噴射装置)を装備する新型エンジンは115psを発揮。エンジンのサイズも小型化して単体重量で4kg軽量化。車両乾燥重量は163kg。02、03年モデルはカラーチェンジのみ。

2004年 GSX-R600
モデルチェンジ。チタン製のバルブや32ビットのECUなどにより120psにアップ。ラジアルマウントキャリパーやラジアルポンプのマスタシリンダーなどブレーキを強化し、車重は161kgに軽量化。05年はGSX-Rシリーズ20周年カラーが販売された。

2006年 GSX-R600
フルモデルチェンジ。これまでは750がベースモデルだったが、この型から600がメインモデルで750がバリエーションモデルとなる。新設計のエンジンはボア×ストロークは変わらないが、シリンダーピッチを詰めていっそうコンパクト化。チタン製の吸排気バルブは大径化され、ツインインジェクターの採用などにより121psにアップ。シャシーもコンパクトになり、スイングアームを35mmも延長。07年はカラーチェンジのみ。

2008年 GSX-R600
モデルチェンジ。シリンダー間のベンチレーションホールの拡大や圧縮比の変更、インジェクター孔数の変更などにより低中速のトルクを向上。GSX-R1000で開発した走行モード切り替えのS-DMSも装備。フロントディスクローターのピン数増加や電子制御式ステアリングダンパー、可変式のステップなども装備する。09、10年はカラーチェンジのみ。

2011年 GSX-R600
モデルチェンジ。エンジンは多くの可動パーツを新設計して単体重量で2kg軽量化、メカニカルロスを低減して125psにパワーアップしながら、燃費もWMTCモードで10%改善。トランスミッションをクロス化。ショーワ製のBPFやブレンボ製のモノブロックキャリパーなど足まわりも強化し、前モデルから装備重量で9kg軽量化した。12年はカラーも含め継続。13、14、15年はカラーチェンジで16年はGSX-Rシリーズ30周年記念カラー。欧州では17年が最終仕様(排出ガス規制の異なる北米は販売継続)。

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