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70~80年代の中型バイクだって、100km/hくらい簡単に出た……けれど、スピードメーターには「出したらダメ」と言わんばかりのレッドゾーンが描かれ、80km/hを超えると警告灯がピカッ! これらの機構が消滅したのは、ライダーのモラルが向上したから? そういえばクルマも105km/hを超えると「キンコンキンコン」鳴ってたなぁ〜。若い人にはまったくピンとこない話だけど……。
●文:伊藤康司 ●写真:富樫秀明、カワサキ、ホンダ、ヤマハ
80km/h以上出さないように警告するランプを装着
最近は高速道路に最高速度120km/hの区間も登場し、快適にクルージングできるようになってきた。しかし2000年10月の法改正まで、高速道路におけるバイクの最高速度は80km/hに制限されていた。そのため、当時は上限が100km/hの四輪車の流れに沿って走ると、スピード違反に……。
少々理不尽な感もあったが、バイクは速度に関する制限が多く、その対策といえる装備も存在した。近年撤廃となった180km/hのスピードリミッターが最たる例かもしれないが、かつては「速度警告灯」も装備していたのだ。当時の高速道路の最高速度に合わせ、80km/hを超えるとメーター付近に備わる赤い警告灯が点灯するというモノだ。
またスピードメーター自体も、文字盤の80km/hを超えた部分の目盛りが赤く表示されていた。言うなればタコメーターのレッドゾーンのような表記になっており、速度警告灯と合わせて80km/h以上スピードを出さないように周知していたワケだ。
とはいえ走行中は常に目に視界に入るコクピットに、メーター文字盤の赤表示はともかく、漢字で「速度警告灯」と書かれているのは、正直なところカッコ悪く感じたものだった……。
1979年 カワサキ Z400FX
速度警告灯はトップブリッジのハンドルクランプに共締めされ「後付け感」が強かった。輸出モデル(兄弟車のZ500など)との兼ね合いと思われる。スピードメーターの目盛りは80km/h以上に赤帯が入る。
1979年 ホンダ CB750F
スピードメーター内に日本語で「速度警告灯」と書かれている。航空機の文字盤をイメージしたカッコ良いメーターなのに、チョット興覚め……。80km/h以上は目盛りが赤表記になっている。
昔のクルマはキンコン音!
昔の四輪車には速度警告灯ではなく、警告音が鳴るチャイムやブザーが装備され、約105km/h(軽自動車は約85km/h)を超えると「キンコン、キンコン」とリズミカルに鳴るモノが多かった。1986年に保安基準で廃止となったが、それまでは輸入車も含めすべてのクルマが装備していて、鳴らないと車検に通らなかった(写真は1983年登場の日産スカイライン2000RSターボ。当時最強と謳われたが、100km/h+αでキンコンが鳴り響いた)。
装備していたのはいつ頃?
調べてみると速度警告灯が登場したのは1970年頃。ホンダのCB750Fourの最初期モデル、1969年のK0型には装備されず、翌70年のK1方から装備が始まっている。
しかしメーター文字盤の「80km/h以上赤表示」の方は、69年のCB750Four K0から採用している。ちなみに1968年のCB450は赤表示がなかった。他のメーカーも、速度警告灯やメーターの赤表示は1960年代には存在せず、70年以降に始まったようだ。
ところが速度警告灯やメーターの赤表示がなくなった時期は、けっこう曖昧だ。まずメーター赤表示の方は、1982年頃から徐々になくなり、おおむね86年頃に消滅した感じだが、同じメーカーでも車種によって時期が異なる。生産の都合かもしれないが、85年の新型車が、メーターも新型なのに赤表示している場合もあった、
速度警告灯の方は1990年代の半ば頃には消滅したようだが、こちらもなくなるまでにかなり幅があるようだ。というか、メーターの赤表示が廃止された時期と大きくズレているのが不思議だ。
速度警告灯付きのスーパーバイク!?
OW01の呼び名で有名なヤマハのFZR750Rは、レース参戦用のホモロゲーションマシンであり、当時のスーパースポーツの最高峰。国内販売は500台限定で、ヤマハ販売店備え付けの購入応募ハガキによる抽選販売だった。
そして、購入応募ハガキには「速度警告灯仕様車」を選択するチェック欄があったのだ。ちなみにOW01の価格は200万円だが、速度警告灯仕様車は1万円高だった。
さすがにこのバイクに速度警告灯は不要だろう……と思いきや、応募は速度警告灯仕様車が相応に多かったようだ。じつは倍率の高い抽選販売だったため、現在で言う「転売ヤー」の応募も多く、レースベースではなく公道用として売るなら速度警告灯付きの方が売れるだろう、というのが理由らしい。
1989年 ヤマハ FZR750R(OW01)
ワークスマシンYZF750の技術をフルに投入。スーパーバイク選手権のホモロゲーションマシン。新設計の5バルブエンジンはチタンコンロッドを採用。オーリンズのリヤショックを装備し、カウル類はすべてFRP製。
50ccは現行車も速度警告灯を装備
50ccまでの原付一種の法定速度は30km/h。そのため、現在も原付一種のバイクには30km/hを超えると点灯する速度警告灯が装備されている。
2021年 ホンダ タクト
アイドルストップ機構などを備え、高い実用性を誇る原付スクーターの名跡。スピードメーターの文字盤に速度警告灯を装備する。OEM生産でヤマハに供給し、ジョグとしても販売される。
最高速度を設定できるバイクも登場
近年は一定の速度を維持して巡行できるオートクルーズ機構を装備するバイクも多いが、それとは別に通常の走行状態で最高速度を制限する機構も登場した。
ヤマハMT-10の最新モデルが装備するYVSL(ヤマハ・バリアブル・スピード・リミッター:自己車速制限制御)は、設定した速度(50~192km/hで設定可能)に達すると、エンジン出力を制御して、速度超過を防ぐ。
現行スポーツバイクはどのモデルも猛烈にパワフルなため、常に意識していないとスピードが出過ぎてしまいがち。なので自身や周囲の安全はもちろん「免許証の安全」のためにも、これからのバイクにはYVSLのような機構は有効かもしれない。
2022年 ヤマハ MT-10 SP ABS
スーパースポーツのYZF-R1がベースのスーパーネイキッド。クロスプレーン水冷4気筒は166psを発揮し、走行モード切り替えのD-MODEをはじめIMUによる緻密な制御のトラクションコントロールやスライドコントロールなど多彩な電子デバイスを装備。SPはオーリンズ製の電子制御サスペンションが備わる。
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