信じられないほどにデカイ、ロケット3。目の前にそびえるその立ち姿を見ると圧倒されるが、実際に跨ったり、サイドスタンドを払ったり、走り出したりすると『意外と乗れる』感覚が強まっていく。そんなロケット3に新色が追加。改めて世界最大排気量の量産車の魅力をお届けしよう!
バイクカテゴリーに新風を吹き込む
こんなバイクをつくれるトライアンフは凄いメーカーだと思う。僕は何度かロケット3に乗っているが、その度に「なんてバイクだろう……」とただただ呆れるのだ。とにかく只者ではないインパクトがあり、何度見ても、何度乗っても慣れない。2457ccの縦置き3気筒エンジンは、1気筒あたり約820cc、1気筒が軽自動車よりも大きいのだからそれもそのはずだろう。
さらに、極太のリヤタイヤ、極太のエキパイ、排気量の割に重さを感じさせない車体……数々の普通のバイクにないディテールを見ると「本当に乗れるんだろうか」と不安になるが、走り出すと意外にもクルーザーというよりはロードスポーツの延長線上にあることがわかる。
いわゆるクルーザーと呼ばれるアメリカ製のバイクよりははるかにスポーティだし、乗り心地もラグジュアリーだ。それは、既存のバイク趣味ではなかなか味わえない世界で、バイクに新たなカテゴリーを導入した1台ともいえる存在なのである。
どの回転域、どの速度域でも好きなだけ加速できる
3気筒特有の爆発間隔の広い等間隔爆発エンジンは、余裕の塊だ。いつでも好きなだけ加速できるが、もちろん加速しなくてもいい。加速できる余裕があるだけで十分なのだ。
実はロケット3に乗るたびに1度はスロットルを全開にしてみたいと思うのだが、このエンジンは全開を許さないヤバさを秘めており、自然と自制心が働き、それはスーパースポーツの比ではない。これが22.54kg-mのトルクを4000rpmで発揮するエンジンの存在感なのだ。
ハンドリングも思いのほかスポーティで、エンジン同様その気になれば、かなりの運動性を発揮する。大トルクに任せてスロットルワークだけで好きなラインを選べ、狙ったところへ一瞬で加速する。また、リヤタイヤは240サイズ、フロントタイヤは150サイズと極太だが、ハンドリングに重さや変な癖もない。
バイクを降りた時の押し引きは重量318kg(Rの場合)なのでそれなりに重いが、アメリカ製クルーザーほどではなく、どちらかというと1000ccオーバーのビッグネイキッドの感覚に近い。
ロケット3はGTとRの2機種をラインナップ
ロケット3は、クルーザーテイストのGTとネイキッドテイストのRから選ぶことができ、GTとRの大きな違いはポジションだ。GTはフォワードコントロールのクルーザーで、Rはミッドコントロールのネイキッドポジションとなっている。
Rは走り出してもクルーザーというよりはビッグネイキッドに近く、GTは足を前に投げ出すクルーザースタイルだ。
ロケット3は、とてつもなく巨大だが、そのスペックが威嚇してくるほど難しいバイクじゃない。どちらかというと実に正当で真面目につくられたバイクだ。
走っていてタコメーターが2500rpmを超えることはほとんどなかったことを思い出す。その領域のわずかなスロットル開度で巨体はきちんとレスポンスする。スロットルワークだけでこの巨体がキビキビと走る感覚は特別。これが22.54kg-m/4000rpmの大トルクを発揮するエンジンなのだ。ちなみにホンダのゴールドウイングのトルクは17.3kg-m/5500rpm、スズキのハヤブサは15.2kg-m/7000rpmだから、いかにこのスペックが桁外れかわかっていただけると思う。
ちなみにパワーは167ps/6000rpmを発揮。これは例えば1万2000rpmで167psを発揮するエンジンと比較すると、同じスロットル開度で倍加速するというイメージで、実際にロケット3は本当に倍加速するようなフィーリングを持っている。
パワフルでラグジュアリー、そしてしっかりと英国流を感じさせてくれる。イギリスのプロダクツには派手さはないが、しっかりとした主張がある。
他のバイクでは絶対に味わうことのできない、究極のオリジナリティ。その加速やハンドリング、とてもラグジュアリーな乗り心地は、新境地と呼ぶにふさわしい。バイク趣味に新しい刺激を求める個性派に挑戦していただきたい。
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