ホンダCB1300ファイナルを前に振り返る! ビッグネイキッドブームを牽引したプロジェクトBIG-1の軌跡
●文:[クリエイターチャンネル] 88サイクルズ@てんちょー
BIGなCBとBIGな企画
ビッグマック! ビッグサンダー! ビッグカツ!! てんちょーもBIGになってバイクをもっと布教したい! そう、目標はホンダのBIG-1ぐらい大きくなきゃね。え、BIG-1って何って? ホンダを代表するビッグネイキッドである、CB1300スーパーフォアとそれを生み出した、偉大なプロジェクトの事だよ。
CBシリーズの顔と言っても過言ではない、このバイクの誕生には、開発者たちの熱い思いがありました。この記事ではプロジェクトBIG-1を追いながら、ご先祖のCB1000スーパーフォアシリーズからCB1300スーパーフォアシリーズまで、どういった経緯で進化していったのかを紹介していきます!
プロジェクトBIG-1の時代と変遷
ネイキッドブームの到来
1980年代後半、バイク業界ではレーサーレプリカの性能競争がピークを迎えていました。しかしその反動で、よりバランスの取れたロードスポーツバイクを模索する動きが生まれ、今日では「ネイキッド」として知られる、スタンダードなフォルムのカウルレスバイクが登場します。
ホンダは1989年に、CBR400RR由来で57psを発揮する、最新の4バルブ水冷直列4気筒エンジンを高剛性のダイヤモンドフレームに搭載するという、先進性を打ち出したスポーツネイキッド、CB-1を発売しました。しかし同時期に商業的に成功したのは、46psの昔ながらの2バルブ空冷直列4気筒エンジンをダブルクレードルフレームに搭載し、原点回帰路線を目指した、カワサキのゼファーでした。
今見てもメカメカしくてカッコいいし、運動性能も優れていたのにね…CB-1。ホンダとしても目論見が外れたことを受け、巻き返しを図ることになります。
プロジェクトBIG-1始動
CB-1の後継機種として、新たなネイキッドバイクの開発を始めたホンダ。そのスタイリング担当になった岸俊秋さんは「こういうバイクを世に出したい」と、CB-1の骨格に、伝説のロードゴーイングレーサーCB1100Rの燃料タンクを載せたスケッチを描きます。これが当時、デザイン現場の責任者だった中野耕二さんの目に留まり、非公式な形でデザインを進めることになりました。
ちょうど同じころ、中野さんはバイクユーザーから「ビッグバイクといえばカワサキのイメージ。ホンダにはバイクの選択肢は多いけど250と400の会社に感じる」という意見を耳にしていました。ミドルクラスでのレーサーレプリカの優位性が、逆にビッグバイクのイメージを希薄にしてしまう状況にあったんだね。うう、CB750はZ1より先に出てるって言うのに…。
折しも1990年は「国内で販売可能なのは750ccまで」という、排気量の自主規制が撤廃されて、免許制度の改正に向けた機運が高まっていた時期。ホンダ社内からも、商業的にビッグバイクが必要だという声が上がっていました。そんな中、中野さんはスポーツツアラー、CBR1000Fのエンジンを見かけた際に、無骨な美しさに惹かれ、このエンジンを使ったビッグバイクを作れないかと考え始めたのです。
そうして中野さんを中心に、デザインの方向性を同じくする、400ccと1000ccの新型ネイキッドバイクを作るという非公式な企画が本格化します。これが、後にBIG-1と呼ばれるプロジェクトの始まりでした。
スタイリングづくり
そして、多くの開発者の目に触れられるよう、あえてデザイン室の一番目立つ場所で、クレイモデルづくりに取りかかった中野さん。自分たちの考えているバイクの良さに賛同してくれる人を、ひとりでも増やしたかったんだろうね。
シリンダーが立ち上がった、堂々とした水冷エンジンをダブルクレードルフレームに搭載することを想定し、CB1100Rに着想を得た巨大なガソリンタンクに丸目ライトと、クラシカルなイメージにまとめました。
また、「ライバルは750ccのバイクではなく、中古で手に入る過去のバイクと逆輸入車」という想定から、ホイールには前後18インチを、そしてリヤサスペンションは、過去のCBを思わせる二本セットをチョイス。粛々と、威風堂々としたBIG-1のスタイリングを中村さんは形にしていきました。
デビューまでは苦戦
しかし、満を持して開発会議にかけるも、営業的な観点から「これでは売れない」と、ボツの連続。正式採用の道のりは険しかったのです。流れが変わったのは、1991年のこと。先んじて正式な開発が進んでいた、CB400SFのイメージ訴求という位置づけで、東京モーターショーに1000ccモデルも参考出品されることになりました。
その反響たるや、開発陣が「自分たちとお客様は共感できている」と感じられたほど。“大きい、迫力がある”というインパクトが、来場者の心を掴んだのです。この高評価が追い風となり、CB1000スーパーフォアはようやく正式に開発をスタートすることができました。
CB1000スーパーフォア登場
こうして1992年11月に、市販車として登場したのがCB1000スーパーフォアでした。
このバイクが目指したのは、ライダーの感性に訴えかける感動性能。先進性だけではない、バイクを操るという、普遍的な楽しさを追い求めたんだね。1994年には、初のバリエーションモデルとしてCB1000スーパーフォアT2という、ビキニカウル装備の、車体各部がブラックアウトされたモデルも登場しました。
ネイキッドブームが盛り上がる中、この威風堂々としたスタイリングと重厚感のある乗り味がユーザーに受け入れられ、大ヒット。 1996年にはついに免許制度が改正され、大型二輪免許が教習所で取得可能となったことも追い風となり、本格的なビッグネイキッドブームを牽引する、代表的な一台となりました。
CB1300スーパーフォアへ進化
1998年には、CB1000スーパーフォアはさらなる躍進を求め、CB1300スーパーフォアにフルモデルチェンジします!
前モデルでは998ccだった排気量が、当時のビッグネイキッドでは最大の1284ccにアップ! この排気量アップの背景にはヤマハのXJR1200や、スズキのGSF1200などのライバルたちが、軒並み1000ccを超える排気量のエンジンを採用していたことに対抗してだったんだ。
大排気量ながら、若いユーザーの意見を参考に乗りやすさを意識したこのモデル。ホイールが前後17インチとなったこともあり、CB1000スーパーフォアよりも足つき性が格段に向上しています。
また、このモデルで特徴的なのは、ダブルプロリンク式というリヤのサスペンション。リンク式サスペンションの、沈み込み初期は柔らかく奥で踏ん張るという柔軟な特性を、二本サスペンションでも、左右二組のリンク機構で実現したという、じつにホンダらしい凝ったシステムを搭載しています。
BIG-1のフルモデルチェンジは、バイクのほぼすべてに見直しが入るという、気合が入ったものでした。
ロングセラーの現行型へ
2003年、CB1300スーパーフォアは軽量化を主眼に置いた、フルモデルチェンジで現行型になります。
2005年には高速道路2人乗り解禁に合わせ、ハーフカウルを装備したCB1300スーパーボルドールも登場。時代に合わせて熟成を重ねていったCB1300シリーズは、2022年には発売30周年を迎えるほどのロングセラーモデルとなりました! ホンダのビッグバイクイメージを復活させた、でっかいCBが気になる人は要チェックなバイクだぜ!
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